地方公共団体情報システムにおける文字の標準化
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地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化の取り組みの一環として、文字の標準化を進めています。その中で、外字を標準化し、データ管理やシステム間の情報連携を容易にすることで、行政事務の効率化と住民サービスの向上を目指します。
目次
行政事務標準文字の導入
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)に基づき、全国の地方公共団体が事務の処理の内容の共通性、住民の利便性の向上、地方行政運営の効率化の観点から標準化の対象とされた事務(標準化対象事務20業務)で用いる情報システムの仕様(機能要件、データ要件等)を共通化する「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」に取り組んでいます。
この取り組みの一環として、標準仕様に適合したシステム(標準準拠システム)で用いられる文字について、標準化する準備を地方公共団体やシステムベンダーとともに進めています。行政事務標準文字の策定・導入を行い、データ管理やシステム間の情報連携を容易にすることで、行政事務の効率化と住民サービスの向上を目指しています。
また、令和5年度(2023年度)に「地方公共団体情報システムにおける文字要件の運用に関する検討会」、令和6年度(2024年度)以降は、「地方公共団体情報システムにおける文字の標準化に関する有識者会議」を設置し、有識者とともに文字要件の運用における課題等を検討しています。詳細は会議等からご確認ください。
文字の標準化が求められる背景
外字とは
文字の標準化が求められる背景として「外字」の存在があります。外字とは、文字を形作る線がくっついているか分かれているかの違いや、線の長さや線の向きの違い等の理由で個別に文字データを作成した文字のことを言います。外字の多くは人名に使われる文字であることが特徴です。
これは日本の文字文化の豊かさと奥深さの象徴であると同時に、公的機関では氏名の取り扱いに入力ミスや確認ミスは許されないため、大きな負担となっていました。また細かな文字の差に気が付かない人を狙った詐欺行為等に悪用される事態も発生していました。
外字による様々な課題の解消
外字による主な課題は以下のとおりです。
- 外字作成コスト
- 地方公共団体ごとや、一つの地方公共団体の中でも手続を行う部署ごとに文字データを作成・維持しています。
- 地方公共団体の職員・住民の負担大
- 転入時に住民票の写しを即日発行できません。地方公共団体の職員が外字を作成したのち、住民は後日住民票の写しを受領します。
- 地方公共団体等の公的機関では、手続きの際、氏名の入力誤りが発生しないようにするための確認作業等で大きな負担が発生します。
- 地方公共団体ごとにコンピューターで管理する文字が異なることで、効率的な行政サービスの実施および大規模な災害発生時の迅速な対応等の妨げとなります。
- システム選択時の制約(ベンダーロックイン※1)
- システム更新の際には、外字が支障となって、同じベンダーに依存し続けるベンダーロックインの状態になりやすく、文字の作成や維持・管理にコストがかかる要因にもなります。
- システム間での情報連携を阻害
- 住民サービスに用いられているコンピューターのデータが別々のシステムで管理されているため、外字を使用している場合は、異なる地方公共団体間のデータ連携だけでなく、同じ地方公共団体の中の組織であっても、部署が異なればシステム間のデータ連携の際に文字化け等が発生し、情報の連携を阻害する要因になっています。
※1 ベンダーロックイン:特定ベンダーの独自技術に大きく依存した製品、サービス、システム等を採用した際に、他ベンダーへの乗り換えが困難になる現象のこと。
住民サービスにおけるデータ連携の例
現在、住民サービスに用いられているコンピューターのデータは、別々のシステムで管理されています。別々のシステムの間でデータを連携して、皆さまへの郵送物や各種証明書等を発行しています。 例えば、別々のシステムの間でデータを連携して発行している証明書は以下のようなものがあります。
証明書のなまえ | 連携元のシステム | 証明書を出力するシステム |
---|---|---|
戸籍の附票の写し | 住民記録システム | 戸籍附票システム |
健診・がん等の検診の受診票や予防接種の予診票等 | 住民記録システム | 健康管理システム |
資格確認書 | 住民記録システム | 国民健康保険システム |
行政事務標準文字の策定
行政事務標準文字の成り立ちとこれから
法務省の調査によると、市区町村の戸籍情報システムが管理する文字は約163万字で、重複を除くと約70万字です。そのうち、約55万字は、法務省の戸籍情報連携システムの文字セットのうち、約6万字を網羅する「文字情報基盤(MJ)※2」の文字と同一の文字として整理することができました。そのため、標準準拠システムで用いる文字の検討にあたっては、「文字情報基盤(MJ)」をベースとして活用することにしました。
残りの約15万字は、「文字情報基盤(MJ)」にある文字と同一の文字として整理できませんでしたが、実際に戸籍に使用されている文字の絞り込み等を行ったところ、約1万字になることを特定できました。これらを既存の「文字情報基盤(MJ)」と合わせて、約7万字の「行政事務標準文字」としてデジタル庁で定めました。
文字が情報連携の支障にならず、互換性を確保して広く通用できるよう、デジタル庁では、行政事務標準文字の国際標準化に向けて検討を進めています。
※2「文字情報基盤(MJ)」:戸籍統一文字や住民基本台帳ネットワーク統一文字を網羅し、全ての国民の氏名をコンピューターで扱えるようにするために2011年に策定され、2013年6月には「世界最先端IT国家創造宣言」閣議決定で、その活用方針が原則化されました。人名等を正確に表記する必要のある行政事務で用いられる漢字約6万文字を整備して国際標準化を行う事業のことを「文字情報基盤」と言います。文字情報基盤整備事業は、「使えない文字を少なくする」ための取り組みです。この事業で整備された文字を「MJ文字」と言います。文字情報基盤のフォントを使い国際標準化も実施しています。文字情報技術促進協議会が文字フォントと文字情報一覧表を無償で提供しています。文字総数は5万8862字です。
文字の標準化による影響
地方公共団体が郵送物の宛名等で用いる文字の見た目が変わることがあります
標準準拠システムで用いる文字の統一・標準化により、令和7年度(2025年度)から各種証明書や郵送物で使用する文字が順次標準化されます。氏名等に独自の外字(標準的なパソコンで表現できない文字)を使われている方は、地方公共団体が発行する各種証明書や、地方公共団体から郵送される郵便物の宛名等で用いる文字が「行政事務標準文字」で出力され、今までと違ったデザインになる場合があります。漢字の骨組み(「字体」と言います)は変わりませんが、部首の大きさ、曲げはねの違い、一部の長さの違い等、デザインの差(「字形」の違い)の範囲内で変わることがあります。なお、導入開始時期や、対象となる証明書や郵便物の種類は、各地方公共団体の状況に応じて異なります。
戸籍では従来の文字を保持し続けます
標準化に際し、戸籍では従来の文字を保持し続けます※3。行政事務標準文字は、各地方公共団体が発行する証明書や印刷物、コンピューター処理等で使われるものであって、皆さまが書類等に手書きで記入する氏名はこれまでどおり使用できます。
※3 標準化対象事務20業務のうち、戸籍と戸籍の附票(戸籍情報システムと戸籍附票システム)は、従来の文字セットを、行政事務標準文字と対応させて保持することで、従来の文字セット、文字コードおよび文字フォントを使用することを可能とする経過措置があります。
参考資料
- 文字包摂ガイドライン
基幹業務システムの標準化に向け、地方公共団体で「行政事務標準文字」に特定(同定)作業を行う際の参考として、行政事務標準文字に包摂できるかを判断するためのガイドラインを策定しました。- 文字包摂ガイドライン(PDF/3,006KB)(2024年6月5日掲載)
- 行政事務標準文字の文字図形一覧表
行政事務標準文字にある図形名と図形を一覧にまとめたものです。「図形名」と「図形」の定義については、文字包摂ガイドラインをご参照ください。- 行政事務標準文字の文字図形一覧表(PDF/62,477KB)
※一覧表内のMJ文字図形名と標記のある文字情報基盤文字は、MJ文字情報一覧表 Ver.006.02に基づいています。なお、MJ文字情報一覧表はIPAの著作物であり、コモンズ証 アトリビューション—シェアアライク 2.1(帰属-同一条件許諾)(Creative Commons)によって提供されています。
- 行政事務標準文字の文字図形一覧表(PDF/62,477KB)
- 行政事務標準文字導入に向けた周知用資料
地方公共団体情報システムにおける文字の標準化に関する有識者会議における議論を経て、リーフレットを作成しました。