本文へ移動

ページ移転のお知らせ:技術検証採択者インタビュー:ドローン、3D点群データ等の技術がもたらす効果と未来

このページについて

本ページは移転しました。お手数をおかけして申し訳ありませんが、最新の情報は以下のリンクをクリックしてください。


デジタル庁では、現在、規制所管府省庁、民間事業者などと連携し、建物・構造物の管理状況や損傷状況などの調査・点検・検査を求める規制について、ドローンやAIによる画像解析などの技術を活用した遠隔での状況確認や評価により代替が可能であるかについて検証に取り組んでいます。
法令で義務付けられた調査・点検・検査業務の中には、高所業務や危険物への接近などが必要な場合もあり、ドローンなどのデジタル技術の活用で、危険な作業を回避でき、また目視などに比べて効率化なども進められることが期待されます。
今回は、技術検証事業に取り組んでいる事業者に、検証しようとしている技術の内容、技術の持つメリット、将来の絵姿などのお話を伺いました。

インタビュー事業者の集合写真。左から、綜合警備保障株式会社土谷氏、株式会社ミラテクドローン茂木氏、イームズロボティクス株式会社曽谷氏、株式会社NTTデータ岡田氏
インタビュー事業者(集合写真左から記載)

インタビュー内容

  1. 技術検証の概要について
  2. 検証している技術のメリットと課題について
  3. 技術を活用したアナログ規制見直しによる効果について
  4. 技術導入後の日本社会の姿の展望について
  5. (参考)「ドローン、3D点群データ等を活用した構造物等の検査の実証」の検証対象となっている法令及び法令に基づく業務

1. 技術検証の概要について

従来は人が調査・点検・検査するには手狭な場所や危険を伴う場所でも、近年の遠隔モニタリング技術の発展に伴い、効率的に調査・点検・検査ができるようになってきています。デジタル技術を活用するには、技術検証などで安全性や実効性の観点から確認が必要な規制も存在します。現在、規制所管府省庁と連携して進めている技術検証の概要、ポイントについて解説していただきました。

曽谷氏: 火薬類取締法施行規則第44条及び第44条の5 では、目視や測定機器での測定を行うことになっていますが、火薬庫の防火壁、火薬庫を囲む土堤や防爆壁における割れや崩れ、形状を、高精度可視光カメラやセンサーを搭載したドローンで確認することで、目視点検を代替できるのではと考え、取り組んでいます。
間違っても火薬庫内にドローンが飛んでいくことのないよう、ドローンを地上と強度が高い紐などでつなぐドローンスパイダーを活用するという工夫をしています。
また、レーザー光の反射時間を利用して対象物までの距離や対象物の形状を測定できるLiDARセンサーを用いて建物の点群データを取得し、建物の3Dデータを生成、図面と比較することで形状変化がないかを確認できます。
火薬庫に対し機体が過剰に近接するリスクを排除し、安全に検査できることを示したいと思います。

岡田氏: 災害対策基本法第90条の2 では、水害による住宅被害は、自治体職員がメジャーなどを用いて測定・調査し、住宅が被害を受けた証明である「罹災証明書」が発行されてきました。
我々は、被害を受けた住宅を、ドローンによりさまざまな位置・角度から撮影し、複数の画像から3次元形状を復元できる「SfMソフト」を用いて建物の3Dモデルを作成します。そして、AI解析によりどこまで浸水したのかを示す浸水痕を基に、浸水深を計測する仕組みを考えています。同様に、スマートフォンアプリを用いた浸水深の計測も行う予定です。
浸水深の計測をドローンなどで行うことができれば、市町村が行う調査の負担を軽減することが可能です。被災者の生活再建には、罹災証明書が必要な場面が多く、我々の取組は、より迅速な罹災証明書の発行につながると考えています。
損傷程度の判定は、調査員が現地で行うことが基本となっていますが、AIの活用により、「現場での目視確認によらない判定」を実現できると考えています。

土谷氏: 建築基準法第12条第1項・第2項 等では、有資格者(一級建築士、二級建築士、または建築物調査員)が現地に赴き、建物などの調査・点検・検査を行うことになっています。我々の取組では、資格を持たない建物の管理人や現地にいる者がドローン、スマートフォン、スマートグラスなどを操作し、可視光カメラで撮影した点検項目箇所の映像や音声をリアルタイムで取得して、有資格者に送信することで、有資格者が現地で調査・点検・検査を行わなければいけない規制をクリアできるのではと考えています。
必要に応じて有資格者が遠隔から操作指示を行うことで、モニターを通して現地の映像を確認し、従来の目視点検と同等の精度を維持しながら効率的に点検することを目指しています。
また状況に応じて、高所ではドローン、室内はスマートフォン、両手を空けたいときはスマートグラスと、使用するデバイスを使い分ける想定です。

茂木氏: 建築基準法第12条第1項・第2項等では、建物などは目視や測定機器などでの調査・点検・検査を行うことになっています。我々の取組では、外壁調査・点検の際に、ドローンにより撮影した静止画、動画データから建物の損傷や劣化状況について、画像解析・AI分析を用いて判定できるのではないかと考え、取り組んでいます。
また、撮影中のドローンの墜落や意図せぬ場所への飛行、不測の衝突などを防ぐため、建物の屋上と地上を糸や紐(ライン)で結び、ドローンはそのラインを通して移動するというラインドローンシステムを用いるのも今回の取組の特徴です。
仮に機体がコントロールを失っても墜落場所の特定が容易であり、歩行者やビル所有者への被害を抑えられるよう安全性に配慮して調査・点検・検査ができることを示したいと思います。

2. 検証している技術のメリットと課題について

新たな技術には強みや運用におけるメリットがあると同時に、課題も発生する可能性があります。技術検証に取り組む中で、どのような課題が見えてきているのかを説明していただきました。

曽谷氏: 火薬庫という特殊な建物の検査にドローンを導入することで、火薬庫、人及び物に対する安全性を担保します。
火薬庫の土堤の検査は、通常の検査にない特徴があります。まず、構造物の形状変化です。屋外に土を使って構成される土堤の場合は、台風などの天候条件の影響を受けるため、表面の劣化だけでなく、形状も変化する可能性があり、その点も点検・確認しなければなりません。この判定には、当社が電力や交通インフラの調査・点検・検査で培った3D点群データの取得・処理やAIによる判定といった技術を活かせることがメリットだと考えています。
制約の多さも特徴です。まず、強い電波を使うと、電流により作動する機構をもつ火工品が爆発または発火してしまう危険があることから、データ送信における出力が制限されます。そうすると遠隔地からのリアルタイムモニタリングは現状困難になります。また、危険物管理の観点から場所を公開していない場合などは、秘匿性の高い方法でのデータ授受を行うことが必要になるのです。今回の技術検証では、これらの課題を踏まえて使用する電波に留意するとともに、秘匿性のある方法でのデータ送信が可能な距離からの調査を行うことにしています。
当社が開発したドローンは、高い安全性、信頼性が期待でき、今回の取組に資するものだと考えています。

岡田氏: 近年、頻発化・激甚化が進む水害の被害調査は、その効率化が求められており、デジタル技術の活用が期待されます。従来、住宅被害を認定する調査は、自治体職員2名から3名が1軒ずつまわり目視で行うため、迅速な調査が難しい部分がありました。そこで、ドローンやスマートフォンアプリを導入することで、調査時の省人化に資すると考えています。また、紙の調査票による調査と比べ、撮影画像や3Dモデリング、AI判定を活用することにより、調査における教育コストも低減できるというメリットもあると考えています。
今後焦点となるのが、建物などの被害の程度を把握するため、ドローンにより目視と同等のセンチ単位の精度の画像を取得できる撮影方法の確立と、撮影対象外の周辺状況が映り込むといったプライバシーの侵害などに配慮しながらドローンを運航できる体制の構築です。
スマートフォンアプリの導入により、いずれは、自治体職員ではなく、住民自らが操作して撮影し、水害による住宅被害の状況を申請できるようになる可能性もあると考えています。

土谷氏: 現在の建物の調査・点検・検査は、有資格者が現地に足を運び、目視で行っています。その数は限られるため、資格を有しない者が点検対象に赴き、有資格者が判断するために必要な情報を収集し、有資格者が遠隔から一括してそれを判定する体制にできれば、限られた有資格者で多くの点検が可能となるというメリットがあります。
技術導入での課題は、有資格者が必要とする点検箇所を、いかに的確に撮影し判定に必要な精度でデータを取得できるかという点です。また、目視点検が難しい建物の高所や、ドローンの取り回しが難しい屋内天井や室内などの調査・検査箇所などでは、それぞれに適した撮影機材を使い分けるといった運用方法を確立する必要があると考えています。
技術の運用とその先の社会実装を考える上で、当社の全国的なネットワークが活用できると思っています。

茂木氏: ドローンによる調査・点検・検査で今後活躍が期待されるフィールドの1つは、人口・建物が密集した都市部です。そのようなフィールドでは、天候のほか、都市特有のビル風、近隣の人の存在などを考慮する必要があります。そこで、操縦者の熟練度などに左右されずドローンを制御できるラインドローンシステムに大きなメリットがあると考えています。
反面、建物の外壁近くを飛行することから、ドローンの操作用と同一周波数帯である2.4GHz帯の電波(Wi-Fi利用される)による、ドローンや建物内部インフラへの影響が懸念されるため電波環境調査が重要となってきます。空中及びドローン機体周辺の電波環境を見える化することによって、ドローン操縦者の負担軽減や、ドローンの墜落事故低減への一助になればと考えております。
また、従来は有資格者が1か所ごとに目視点検と写真撮影をしていましたが、AIによる撮影画像の自動判定を取り入れることで、判定の効率化につながります。しかし、判定に必要な高画質画像は1枚1枚のデータサイズが大きく、たくさんの画像を必要とする大規模建物の場合は膨大なデータ量になってしまいます。そのため、AIを使うデータ処理の専門家と連携し、データの処理手順を最適化することで、必要とするデータ量を低減する必要があると考えています。
このように、ラインドローンシステムを活用し外壁近くから撮影することで、劣化及び損傷の状況を、安全性を確保しながら詳細に撮影することができます。

3. 技術を活用したアナログ規制見直しによる効果について

アナログ規制の見直しによる経済効果(中間報告)(デジタル庁2023年8月公開)」によると、例えば今回紹介した技術検証のスコープであるアナログ規制の調査・測量に関するものだけでもドローン、カメラ、センサーの技術を導入することで行政部門、民間部門それぞれ200億円、合計400億円のコスト削減が期待されています。アナログ規制を見直すことで、どのような効果が期待されるのかを解説していただきました。

土谷氏: 有資格者が遠隔で建物を点検できるようになると、これまで有資格者が現地に行っていた移動コストを大幅に削減できるわけですが、これがどんどん進むと、オフィスにいながらにして、全国の点検を担当できるようになるかもしれません。
有資格者による点検が必要とされる建物が約29万件という膨大な量である一方、有資格者の数は不足しています。専門性をもつ有資格者の時間という貴重な人的リソースを最大限活用できるのが、最も大きいメリットだと思います。

茂木氏: 土谷様の指摘にもありましたが、これまで当たり前だった「有資格者が現地に足を運ぶ」というプロセスを、ドローンと操縦者が代行することができます。その省人化のメリットは、非常に大きいと思います。
もう1つ、当社が販売している、西武建設株式会社が開発したラインドローンシステムとドローンを併用することで、ビル点検にあたり「足場を組む」作業が不要になる可能性があります。従来、特に高層ビルの点検では、機材のレンタル費や工期の長さが大きな負担となり、大規模な点検では千万円単位のコストが発生していました。足場を必要としない点検が可能になれば、コスト削減はもちろんのこと、ビル管理者や入居する企業、店舗などの営業への支障も軽減できると考えています。

インタビュー事業者の対談の様子。左側から茂木氏、土谷氏

曽谷氏: 「現地に有資格者が足を運ばずに済む」のは、ドローンの社会実装を進める上で私も重要だと思います。ただ、建物の点検にしろ、物流にしろ、現状ではドローンを使うのは費用が高すぎます。
1台のドローンを飛ばすために現地に2人から3人が同行する限り、同じ状況が続くでしょう。ドローンの運用費用を抑えるための手段として期待されているものに、「1対多運航」があります。
その意味で、私はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進めている「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」にも注目しています。これは、1人のオペレーターが10から20台のドローンを安全に飛ばす「1対多運航」の実現を目指すものです。これならドローンにかかるコストを一気に10分の1、20分の1にまで低減できそうです。

土谷氏: 皆さん周知の通り、建設業界は何年も前から人手不足が続いています。人のやっていたことを機械にやってもらう「機械化」は1つのソリューションですが、それとは別に「誰でも使えるようにする」「1人が多くを扱えるようにする」ことも大切です。

岡田氏: 当社の技術は、水害による住宅の被害認定調査を行う自治体を支援するものであり、産業化や金銭的なメリットというキーワードでは語りにくいところがあります。もともと、自治体の職員による業務であり、そこに当社のような事業者がドローン操縦を代行すると、金銭面だけの観点では自治体にとって追加コストと捉えられてしまいます。
一方、各種災害の中でも近年、とりわけ水害の頻発化・激甚化が著しく、日本各地いつどこでも被害が起きてもおかしくない状況となっています。大規模な水害の場合、被害は広域です。数万軒に及ぶかもしれない住宅の被害認定調査を効率化することで自治体職員が他の災害対応業務に時間を割き、結果として、住民の生活再建が迅速化されるようになります。被災者支援がスムーズになるような効果を「社会的なメリット」として捉えていただきたいと思います。

4. 技術導入後の日本社会の姿の展望について

調査・検査・検査技術のデジタル化が進むと、事業者間で横の連携も生まれ、業種の垣根を越え同じ課題に取り組むことで、相互補完による新たなソリューションが芽吹くことにもつながります。調査・点検・検査に関するデジタル技術が導入された未来についての見解を説明していただきました。

岡田氏: 例えば、災害時に限っては、ドローン撮影によって取得したデータを一緒に災害対応にあたっている他の事業者とも「共有」する仕組みが構築できないか、というのは常々考えるところです。それこそ、街中にある監視カメラには道路が冠水する様子も映るはずで、災害調査や救助に活用できるのではないでしょうか。

曽谷氏: 物流用のドローンもカメラを搭載しており、常時撮影しています。こうした情報も災害時に限って共有できると、「物流をしながら警備もする」ことが可能になるかもしれませんね。

インタビュー事業者の対談の様子。左から岡田氏、曽谷氏

茂木氏: ドローンを使って建物を撮影した画像を用いると、建物の3Dモデル化が容易にできます。熊本城の復旧では、過去のレーザー測量から生成した3Dデータを復旧工事に役立てることができた、という話が知られています。将来的には、3Dモデルと3Dプリンタを連携させることで迅速に補修用建材を提供することも可能になるかもしれません。

岡田氏: 他業種との連携もあり得ると思います。例えば、自治体が行う住宅の被害認定調査と類似したものに、損害保険会社の調査があります。これらの調査は基準が異なっており、現在は別々に行われていますが、両者を連携することにより、被害認定調査の結果から迅速な保険の適用までワンストップでできるのではないかと、損害保険会社との協業が始まっています。
また現状では、各地で水害が起き、迅速にドローンを飛ばしたいというときに、遠隔地から駆けつけないといけません。そこで綜合警備保障株式会社様のように全国に拠点を持ち、すぐに現場に駆けつけることができる事業者と組むことで、全国各地での迅速なサービスを提供するという選択肢もありそうです。

土谷氏: 実際、我々はドローンパイロットの育成も進めています。全国津々浦々、ドローンを必要とする、誰かの代わりにドローンを飛ばしてデータを取得することができれば、ドローンの産業化に向けて必要なインフラの1つの機能を担えるのではないかと考えています。

曽谷氏: 車の世界に例えると、ドローンは今、車検制度ができて、免許証も交付できる状態です。しかし、高速道路がない、駐車場もないなど、まだ課題も多いのです。これらが解決することで、数十年後にはドローンに加え、空飛ぶ車までもが行き交う世界がやってくるかもしれません。

5. (参考)「ドローン、3D点群データ等を活用した構造物等の検査の実証」の検証対象となっている法令及び法令に基づく業務

今回紹介した技術検証事業が対象としている法令と法令に基づく業務の概要を掲載します。

  • 法令:火薬類取締法施行規則第44条及び第44条の5

    • 法令に基づく業務:火薬類製造施設・火薬庫の土堤や防爆壁等の完成検査・保安検査(経済産業省)
    • 概要:火薬類の製造施設及び火薬庫(以下「火薬類関連施設」)に対して、建物を囲む土堤や防爆壁等の配置や構造等を完成検査や保安検査により国、自治体又は第三者が検査し、技術基準適合性やその維持状況の判定を行う。
  • 法令:災害対策基本法第90条の2

    • 法令に基づく業務:被災住家の被害認定調査(内閣府)
    • 概要:被災者から申請があったときは、市町村長は被害認定調査を実施し、罹災証明書を交付しなければならないこととされている。
  • 法令:建築基準法第12条第1項・第2項、第88条第1項、建築基準法施行規則第5条第2項、第5条の2第1項、第6条の2の2第2項、第6条の2の3第1項

    • 法令に基づく業務:特定建築物等の定期調査・点検(国土交通省)
    • 概要:特定建築物(劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、学校、百貨店等で一定規模以上のもの)や遊戯施設等(昇降機、ウォーターシュート、飛行塔その他これらに類する工作物)の損傷・腐食などの劣化状況等を、定期的に目視や打診、作動確認・機器測定等により調査・点検を行う。

関連情報

参考資料