商業登記電子証明書のリモート署名の導入についてお知らせします
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法務省とデジタル庁は、2026年7月から、商業登記電子証明書について、GビズIDと連携したリモート署名方式の導入を予定しています。これにより、スマートフォンのGビズIDアプリを用いてオンラインで電子署名を付与することが可能となります。また、電子証明書の発行準備や管理がブラウザベースのウェブサイトでできるようになります。電子署名に必要な署名鍵(※)と商業登記電子証明書は、ファイル形式で保管される形式からクラウド上で安全に保管される形式に変わります。導入の背景には、現行のローカル署名方式(ファイル形式)における、利用環境やセキュリティに関する課題の解消があります。導入に伴う変更点やQ&Aを紹介します。
※署名鍵とは、電子署名を作成するために本人だけが保持する暗号鍵(秘密鍵)のこと。これを用いて署名を行い、対応する公開鍵で検証することにより、文書が改ざんされていないことと本人による署名であることが確認できる。
目次
1. リモート署名方式の導入の背景
商業登記電子証明書は、行政手続のオンライン申請や会社・法人間の電子契約等で、利用者が会社・法人の代表者等であることを証明するための電子証明書です。紙での会社・法人等の印鑑証明書と同様の役割を担います。商業登記電子証明書を用いた電子署名は、現在はローカル署名と呼ばれる方式で行われ、大きく分けて以下の2つの形態があります。
- ファイル形式:署名鍵と商業登記電子証明書をPCにファイル形式で保管する形態
- ICカード形式:署名鍵と商業登記電子証明書をICカードなどのセキュリティチップに保管し、外部に取り出せないようにする形態
このうち、1.ファイル形式に関しては、以下の課題があります。ファイル形式におけるこれらの課題を解決するために、リモート署名方式を導入します。
- 利用環境の制限による課題
署名鍵は電子証明書ファイルとして利用者のPCにファイル形式で保管されるため、手続きができる環境が限られます。例えば、電子証明書ファイルをオフィスのPCに保管している場合、出張先で電子署名を行おうとしても、そのPCを持参していなければ署名を行うことができません。 - セキュリティ上の課題
電子証明書ファイルの複製が可能であるため、適切な管理が難しくなるおそれがあります。適切に管理されない場合、署名鍵の入った電子証明書ファイルやそのパスワードが漏えいし、第三者による不正利用につながる危険性も考えられます。
2. リモート署名方式の導入で変わること
リモート署名方式の導入により変わる点は以下のとおりです。
- 署名鍵および商業登記電子証明書の保管形式の変更
- 署名鍵は、利用者のPCに電子証明書ファイルとしてファイル形式で保管される形から、厳重に管理されたクラウド上のハードウェアに保管されるようになり、セキュリティが向上します。
- 電子証明書の発行準備や管理はブラウザでできるようになり、利用者の管理の負担が軽減します。
- 電子署名の付与がオンラインで可能に
- 利用環境の制限が解消され、スマートフォン等を通してオンラインでどこからでも行えるようになります。
- GビズIDとの連携
- 利用者はGビズIDアカウントの取得が必要です。
- スマートフォンのGビズIDアプリで署名認可(電子署名を付与することについて承認を行うこと)ができるようになります。
3. リモート署名付与のしくみ
商業登記電子証明書を用いた電子署名を付与する際の流れについて、現行と今後を比較して説明します。どちらも、オンラインの行政手続きにおいて、提出する申請書等に対して、商業登記電子証明書の電子署名を付与する場面を想定しています。リモート署名方式導入後は、「リモート署名」と「ローカル署名アプリにも対応した署名」の2つの方法があります。詳細は以下をご確認ください。
- 現行の場合
- 申請ユーザーは別途ローカル署名アプリ(ローカル環境のソフトウェア)を用いて申請書等に電子署名を付与します。このときの具体的な技術的仕組みとしては、ローカル署名アプリは、PC内にファイル形式で保管されている電子証明書ファイルの署名鍵を利用して、申請書等に電子署名を付与します。
- 最後に、申請ユーザーは、電子署名が付与された申請書等を、オンライン手続きシステムにアップロードして提出します。
- 今後(リモート署名方式の導入後の場合)
- リモート署名のみ
申請ユーザーは、オンライン手続きシステムにおいて、電子署名を付与したい申請書等を選択し、電子署名を付与します。このときの具体的な技術的仕組みとして、オンライン手続きシステムはリモート署名システムに対して署名要求(「署名を行ってください」という要求)を行います。その要求を受けたリモート署名システムは、申請ユーザーのGビズIDアプリからの承認を経て、クラウド上にある申請ユーザーの署名鍵を使ってオンライン上で電子署名を付与します。署名鍵がクラウド上に保管されていることで、電子署名の付与はローカル署名アプリを使うことなく、オンラインで完結します。 - リモート署名方式はローカル署名アプリにも対応
- リモート署名システムの導入後も、これまでと同じように、ローカル署名アプリを用いて電子署名を付与することを可能とするため、リモート署名方式に対応する署名ドライバを提供します。
- 署名ドライバを用いる場合、申請ユーザーはローカル署名アプリを開いて申請書等に電子署名を付与します。ただし、このとき、現行とは異なり、ローカル署名アプリの署名要求は、署名ドライバを通してリモート署名システムに行われることとなります。そして、申請ユーザーは電子署名が付与された申請書等を、オンライン手続きシステムにアップロードして提出します。
- リモート署名のみ
以下、上述の内容を表した図です。併せてご覧ください。
4. リモート署名方式の署名方法の手順
リモート署名方式における商業登記電子証明書の署名方法の手順について一例を紹介します。2つの手順で署名が完了します。
手順1:商業登記電子証明書を申請して取得する
- ウェブサイトの商業登記電子認証ポータル(仮称)へGビズIDでログインし、申請の準備を行う
- 商業登記電子証明書の発行申請に必要なファイルを作成
- ファイル作成時に、実際に電子署名を付与する際に利用することとなるGビズIDアプリ(スマートフォン用アプリ)とあらかじめ紐づけを行う
- 登記所(法務局)へ商業登記電子証明書の発行申請を行う
- 発行申請方法は2つあります。いずれも現在と同じ申請方法です。
- 書面を提出する方法
- 「申請用総合ソフト」を用いてオンラインで提出する方法
- 発行申請方法は2つあります。いずれも現在と同じ申請方法です。
- 商業登記電子認証ポータルにおいて、登記所から通知されたシリアル番号を入力し、商業登記電子証明書を取得
以下、商業登記電子認証ポータル(仮称)の画面イメージです。併せてご覧ください。
手順2:商業登記電証明書を用いて電子署名を付与する
- ブラウザ上のオンライン手続きシステムにアクセス
- 申請手続きなどで電子署名を付与するファイルを選択
例えば、「このファイルに商業登記電子証明書の電子署名を付与する」などのボタンを押す。 - 画面上に認可コードと呼ばれる4桁の数字が表示される
- 手順1の1で紐づけたGビズIDアプリ(スマートフォン用アプリ)を開き画面上に認可コードを入力
- 署名完了
以下、リモート署名方式の導入後に電子署名を付与する際の画面イメージです。併せてご覧ください。
4. Q&A
全般、利用者向け、関連ソフトの開発事業者向けに分けて紹介しています。
全般
- Q1-1. いつから新しい方式(リモート署名方式)に変わりますか。
- A1-1. 2026年7月から新方式への移行を開始します。
- Q1-2. 新しい方式(リモート署名方式)において、署名鍵は安全に保管されるのですか。
- A1-2. はい、リモート署名方式では、署名鍵はクラウド上のハードウェアに厳重に保管されます。具体的には、電子証明書の生成・保存・管理は最新のハードウェアベースのセキュリティモジュールで行われ、これは物理的に保護されており、耐タンパ性(改ざんや物理的な不正アクセスに強い構造)やアクセス制御機能を持つことで、不正アクセスや改ざんを防止し、データの機密性と整合性を保証する仕組みを備えています。
- Q1-3. リモート署名方式にはどのような利点がありますか。
- A1-3. 署名鍵がクラウド上で安全に管理されることで、利用者のPC環境に限定されず電子署名を付与することができるようになります。
- Q1-4. 事業者署名型(立会人型署名)の電子署名サービスとは何が違いますか。
- A1-4. 事業者署名型のサービスでは、事業者の署名鍵で電子署名を行いますが、商業登記電子証明書のリモート署名では、利用者の署名鍵で電子署名を行います。
- Q1-5. GビズIDアプリは、商業登記電子証明書以外の電子証明書の署名認可でも利用できますか。
- A1-5. 商業登記電子証明書以外での署名認可には利用できません。
- Q1-6. リモート署名ドライバソフトとはなんですか。
- A1-6. 従来どおりのローカル環境での電子署名を可能とするオプション機能です。リモート署名ドライバソフトをインストールすることで、例えばAdobe Acrobat Reader等を用いてローカル環境で電子署名を付与することが可能となります(Windowsのみ対応予定)。
なお、電子申請を行う行政サービスがリモート署名に対応している場合にはインストールする必要はありません。
- A1-6. 従来どおりのローカル環境での電子署名を可能とするオプション機能です。リモート署名ドライバソフトをインストールすることで、例えばAdobe Acrobat Reader等を用いてローカル環境で電子署名を付与することが可能となります(Windowsのみ対応予定)。
利用者向け
- Q2-1. 現在使用中の電子証明書は無効になりますか。いつまで使えますか。
- A2-1. ご利用中の商業登記電子証明書(既存のファイル形式の電子証明書)は、リモート署名の導入後(2026年7月以降)も、その有効期限までご利用いただけます。ただし、従来のローカル環境での署名時のみの利用となります。
- Q2-2. 一例として、既存のファイル形式の商業登記電子証明書の有効期限は2027年1月となっていて、リモート署名の運用開始(2026年7月)の後も有効です。この電子証明書は、リモート署名方式でも利用することはできますか。
- A2-2. 既存のファイル形式の商業登記電子証明書はリモート署名方式では利用できません。リモート署名方式で電子署名を行う場合は、リモート署名方式の運用開始(2026年7月)以降に、商業登記電子認証ポータルを用いて新規で商業登記電子証明書を取得いただく必要があります。
- Q2-3. 法務省の「商業登記電子認証ソフト」は使えなくなりますか。
- A2-3. 「商業登記電子認証ソフト」は、2026年7月に提供およびサポートを終了します。
- Q2-4. リモート署名の運用開始(2026年7月)以降でも、ファイル形式の電子証明書の発行を受けることは可能ですか。
- A2-4. 可能です。「商業登記電子認証ソフト」に代わり、民間事業者が提供する申請ソフト(有償)を利用することで、ファイル形式の商業登記電子証明書を発行することが可能です。
- Q2-5. 現在はファイル形式の商業登記電子証明書を用いて署名アプリ(Adobe Acrobat Reader等)で署名を行っていますが、リモート署名の導入で利用方法は変わりますか。
- A2-5. 既存のファイル形式の商業登記電子証明書であれば、その有効期限内であれば引き続き現在の方法でご利用いただけます。リモート署名方式でご利用いただく場合は、商業登記電子認証ポータルを用いて新たに商業登記電子証明書を取得いただき、さらに、リモート署名ドライバソフト(無償)をダウンロードいただくことで、利用可能です。
なお、署名アプリ側での対応が必要となる場合があります。
- A2-5. 既存のファイル形式の商業登記電子証明書であれば、その有効期限内であれば引き続き現在の方法でご利用いただけます。リモート署名方式でご利用いただく場合は、商業登記電子認証ポータルを用いて新たに商業登記電子証明書を取得いただき、さらに、リモート署名ドライバソフト(無償)をダウンロードいただくことで、利用可能です。
- Q2-6. ICカードの利用はできますか。
- A2-6. 民間事業者が提供する商業登記電子証明書のICカードへの格納サービス(有償)は引き続きご利用いただけますが、ICカード形式の電子証明書では、リモート署名は利用できません。
- Q2-7. リモート署名方式へ移行するために必要な手続はありますか。
- A2-7. 従来の商業登記電子認証ソフトに代わり、ブラウザ上で提供されるウェブサイト(2026年7月から提供開始)にログインの上、申請準備を行っていただくことになります。ログインにはGビズIDアカウントが必要となりますので、事前の取得をご検討ください。また、GビズIDアプリをインストールしたスマートフォンや、インターネット環境も必要となります。詳細な手続は今後改めてご案内する予定です。
- Q2-8. 移行について分からないことがあればどうすればよいですか。
- A2-8. リモート署名方式への移行に当たり、専用のヘルプデスクを設置し、電話やメール等でのお問合せを可能とする予定です。また、マニュアル等も用意し、利用者の皆様が円滑に移行できるようサポートいたします。詳細は改めてご案内いたします。
- Q2-9. リモート署名方式の導入により、商業登記電子証明書の発行申請の方法は変わりますか。
- A2-9. 発行申請の際に必要となるファイルの作成は、これまでは「商業登記電子認証ソフト」で行う必要がありましたが、 リモート署名方式の導入後は、ウェブサイトである「商業登記電子認証ポータル(仮称)」を用いて行う方法に変更となります。他方で、登記所(法務局)への発行申請については、これまでどおり、(1)書面を提出する方法か、(2)「申請用総合ソフト」を用いてオンラインで提出する方法で行います。
関連ソフトの開発事業者向け
- Q3-1. リモート署名への対応には何が必要ですか。
- A3-1. リモート署名は、リモート署名API方式とリモート署名ドライバ方式で提供する予定です。ウェブサービスの場合はリモート署名API方式、ローカル環境のソフトウェアの場合はリモート署名ドライバ方式への対応をご検討ください。なお、リモート署名API方式は、当面、行政サービスでの利用に限られます。
- Q3-2. ファイル形式の電子証明書で署名する、署名アプリを提供しています。リモート署名の導入に当たり、どのように対応すればよいですか。
- A3-2. リモート署名ドライバソフトを利用いただくことで、Windows環境のCAPI/CNGによる署名が可能となります。署名アプリの更新をご検討ください。
- Q3-3. リモート署名APIの仕様や、署名ドライバの技術仕様はどこから確認できますか。
- A3-3. 準備が整い次第、2025年秋期を目途に改めてご案内いたします。