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モビリティワーキンググループ(第6回)

概要

  • 日時:令和6年(2024年)12月23日(月)13時00分から15時00分まで
  • 場所:オンライン
  • 議事次第
    1. 開会
    2. 議事
      1. 国土交通省における取組(物流、「交通空白」解消本部)
        • 物流の現状と課題
          • 国土交通省物流・自動車局
        • 国土交通省「交通空白」解消本部の取組
          • 国土交通省総合政策局
      2. モビリティサービスを巡る事例紹介
        • みんなで作る交通商社「暮らしの交通」の取り組みについて
          • 暮らしの交通株式会社 代表取締役 田島 颯 氏
        • 「MSP構想」について
          • 一般社団法人日本自動車工業会 次世代モビリティ委員会
          • デジタルタスクフォース 事務局サポート 久保 弥一 氏
        • 海外事例と地域の交通商社的機能検討について
          • 日高構成員
      3. 「モビリティ・ロードマップ2025」の論点、及び、今後の検討スケジュール
    3. 閉会

資料

議事録

麻山参事官: 先に、資料の確認をさせて頂きます。事前にお送りさせて頂いた議事次第に記載の通りとなりますが、資料は、議事次第、資料1から7、出席者一覧となります。不足がございましたら、teamsのチャット機能、もしくは、事務局までお問合わせ頂ければと思います。本日の出席者のご紹介につきましては、時間の制約もありますので、失礼ながら、お手元の出席者一覧の配布にて代えさて頂きます。なお、若菜構成員につきましては、前後の予定が押し、急遽、欠席とのご連絡を頂いております。お待たせしました。ただ今から、「第6回 モビリティワーキンググループ」を開催いたします。本日は、年末のお忙しいところ、ご出席いただきありがとうございます。本日、司会を務めます事務局の麻山でございます。よろしくお願いいたします。直前となりましたが、森主査が出席できない状況となりました。ワーキンググループの開催にあたり、森主査に代わり、村上統括官からご挨拶をいただきます。

村上統括官: お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。森主査からのご指示に基づきまして挨拶を読ませていただきます。

前回は、モビリティ・ロードマップ2025で取り扱うテーマについてご意見いただきましたが、今回は、物流をめぐる課題や交通空白の解消に対する取組等について共通認識を持つことが重要であるということで、国道交通省からは「物流の現状と課題」「『交通空白』解消本部の取組」についてご説明いただくこととしております。

また、交通商社の議論で多くの構成員の皆様からのご意見をいただきましたので、本日は交通商社についてゲストをお招きしました。交通商社というコンセプトをいち早く提唱し取り組んでこられた田島様から「暮らしの交通株式会社」の取組みについて、久保様からは交通商社の共通基盤となる可能性があるMSP構想について、また、日高構成員からは海外事例と地域の交通商社的機能の検討について話題提供をいただきます。

本日もどうぞ皆様の知見を活かした闊達なご議論をお願いできればと思います。

麻山参事官: ありがとうございました。本日の会議はオンライン開催となります。構成員の皆様におかれましては、会議中は常時カメラをオンにしていただきまして、発言時にはマイクミュートを解除していただきますようお願いいたします。他の方がご発言されている際には、マイクをミュートにしていただけますようお願いします。また、傍聴者の方はカメラ、マイクともオフにしていただけますようお願いします。

それでは早速ですが、議事に移らせていただきます。まず、国土交通省から「物流の現状と課題」と、「『交通空白』解消本部の取組」についてご説明いただきたいと思います。はじめに、物流・自動車局からお願いいたします。

林田課長補佐(国土交通省 物流政策課): 国土交通省物流・自動車局物流政策課の林田と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。物流の現状と課題について、資料2に沿ってご説明させていただきます。

1ページをご覧ください。まずは、物流業界の現状についてご説明いたします。物流は国民生活や我が国経済を支える社会インフラでございますが、物流業界の営業収入の合計は約29兆円、全産業の2%程度となっております。また、従業員数は約226万人であり、全就業者数の約3%となっています。こうした状況での国内貨物のモード別輸送量は、左記のトンベースのグラフでは自動車が9割超となっております。右記のトンキロベースグラフでは自動車が約5割です。また、内航海運が約4割、鉄道が5%程度です。

2ページをご覧ください。こうした背景でのトラック運送事業の働き方をめぐる現状は、労働時間は全職業平均よりも約2割、400時間から450時間長い状態になっております。また、右側の年間賃金では全産業平均より5%から15%、金額に直すと、約20万円から60万円程度低い状況となっております。人手不足の状況は、上記のような労働時間、年間賃金の状況に相まって全職業平均よりも約2倍高い状態です。また、年齢構成につきましては、全産業平均よりも若年層と高齢者の割合が低く、中高年の割合が高い状況でございます。

3ページをご覧ください。こうした中で、自動車運送事業において時間外労働規制の見直しの動きが進んでまいりました。具体的には、平成30年6月に改正されました、「働き方改革関連法」に基づきまして、自動車の運転業務の時間外労働について平成31年4月の法施行より5年後の令和6年の4月1日から、年960時間の上限規制が適用されております。また、厚生労働省がトラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」につきましても、拘束時間や運転時間等の強化が図られている状態でございます。

4ページをご覧ください。こうした状況について、労働時間規制等によりどのような物流の影響が生じているか推計を行ってまいりました。具体的には上のキャプションで書いてある通りでございますが、具体的な対応を行わなかった場合、2024年度には輸送能力は約14%、4億トン相当の不足する可能性があります。また、その後も対応を行わなかった場合には、2030年度には輸送能力は約34%、9億トン相当不足する可能性があります。こうした不足する輸送能力の状況についてですが、より詳しく見ていくと左側のグラフの通り、品目別で見ると農産品や水産品等の影響が大きい状況になっております。右側のグラフでは、不足する輸送能力を地域別に見てみますと、中国や九州等の地方部においての影響が強いとされております。

こうした物流危機についての認知度を調べたものが5ページでございます。一般消費者については、現状、宅配貨物の再配達が一定程度発生しております。また、事業者について、物流危機に対する問題意識をどの程度持っているかについては、右側のグラフのとおり、84.5%の事業者が問題意識を持っていると答えている一方で、実際に取組を実施しているのは約5割程度と、その間に隔たりがある状態でございます。隔たりをどのように埋めていくのかが課題であると認識しております。

6ページをご覧ください。そうした中で、物流革新に向けて昨年以来、様々な取組を行ってきました。具体的には2023年の3月に「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を設置しまして、その後、6月にはその関係閣僚会議において「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定しております。その後、10月・11月において総合経済対策・補正予算案等に盛り込む対応としての緊急パッケージの策定等や、今年に入ってからは政府における物流法案の閣議決定を行うとともに、関係閣僚会議において、「2030年度に向けた中長期計画」等も策定してきました。改正物流法については、国会での審議を経まして、今年の5月に公布されました。その後さらに、政策パッケージ等の進捗状況等を関係閣僚会議で報告するとともに、今年の11月にこうした新しい法律の施行に向けた国土交通省・経済産業省・農林水産省の合同審議会の取りまとめも行いまして、来年4月に改正物流法の一部施行を控えている状態でございます。

7ページは、「物流革新に向けた政策パッケージ」として6月に定めた概要を示しております。物流は国民生活や経済を支える社会インフラでございます。物流産業を魅力ある職場とするために、働き方改革に関する法律が今年の4月から適用される一方で、物流の停滞が懸念されるいわゆる「2024年問題」に直面しています。こうした「2024年問題」に起因する輸送力不足への対応として、「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」の三つの柱の下で法制化も含めた取組を進めてきました。

8ページをご覧ください。こうしたパッケージに基づく対応として、今年の通常国会に提出したのが「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」です。背景としては物流産業を魅力ある職場とするための働き方改革に関する法律が適用される一方で、物流の停滞が懸念される「2024年問題」に直面していることがございます。こうした中で何も対策を講じなければ、輸送力不足の可能性がある中で、荷主企業や物流事業者、そして、一般消費者が協力して我が国の物流を支えるための環境を整備するための法律として下の三つの柱に沿って対策を講じていくところでございます。具体的には一つ目、荷主・物流事業者に対する規制的措置について、発荷主・着荷主双方の荷主、そして物流事業者であるトラックや鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫等の事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課して、その措置について国が判断基準を策定する形をとっております。これらの取組状況については国が判断基準に基づき、指導や助言、調査や公表も行ってまいります。さらにこうした事業者のうち一定規模以上の者は特定事業者として指定を行い、より具体的な中長期計画の策定や、定期報告の義務付けを行うとともに、これらの実施状況が不十分な場合には、国が勧告・命令を行うスキームにしております。特定事業者のうち、荷主につきましては、物流統括管理者の選任も義務付けております。二つ目の柱はトラック事業者の取引に関する規制的措置でございますけれども、運送契約等の締結に際しまして、提供する役務の内容へその対価を記した書面交付等を義務付けるとともに、元請けの事業者には、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付けることとしております。最後に三つ目、軽トラック事業者に対する規制的措置ですけれども、軽トラック事業者についても、死亡・重症事故件数等が最近6年で倍増している状況もございまして、必要な法令等の意識を担保するための管理者の選任や講習の受講、また国交大臣への事故報告等の義務付けを行ったところでございます。

9ページをご覧ください。改正物流法の施行に向けたスケジュールについては、今年の4月の法案の成立、また、5月の法律の公布を踏まえ、本年6月に3省の審議会の合同会議を設置しました。その後数度の議論を経まして、合同会議の取りまとめの策定・公表を本年11月27日に実施したところでございます。今後は、2025年度の4月に、また、その再来年度の2026年度の4月に向けて法施行を進めていくこととしております。

新物効法の施行に向けた合同会議として、これまでまとめてきた内容を一部ご紹介させていただきます。10ページについては基本方針といたしまして、1から5の柱に沿って、今後の取組の方向性について示してございます。

11ページについては、先ほど法案で申し上げたような荷主や物流事業者に、どのような取組を行っていただくのかについて、より具体的な判断基準を示したものでございます。全ての荷主やフランチャイズチェーンの本部である連鎖化事業者、また物流事業者等につきまして、物流効率化のために取り組むべき措置として努力義務を課すとともに、これらの取組の例を示した判断基準等を策定してまいります。具体的な取組につきましては、「積載効率の向上」や「荷待ち時間短縮」、また「荷役等時間の短縮」についての具体的な取組をしていくこととしております。また、特定事業者の指定基準については、全体への寄与度がより高いと認められる大手の事業者が指定されるような基準を設定しております。特定荷主・特定連鎖化事業者は上位3,200社程度、特定倉庫業者については70社、トラック事業者等につきましては、上位の790社程度を指定する形としております。

12ページをご覧ください。トラック・物流Gメンを設け、荷主との是正指導等の取組も行っております。こちらについては最初に、去年の6月の「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき、全国162名体制のトラックGメンを設置したところでございます。その後、令和5年11月12月を「集中監視月間」と位置付けまして、初めての勧告を実施するとともに、働きかけや要請等の是正指導等を徹底してまいりました。また、令和6年11月には、物流産業全体の取引適正化を進めるために、「トラック・物流Gメン」という名称に改組するとともに、本省・地方運輸局等の物流担当部署の職員と各都道府県のトラック協会が新たに設ける「Gメン調査員」のメンバーも加えて総勢360名規模で対応を進めているところでございます。

13ページをご覧ください。これらの一連の取組について、今後2030年度に向けて、更なる取組を進めるための中長期計画を策定しております。こちらについては、2024年度に14%程度不足するとされていた輸送力について、今後2030年度には34%の不足が見込まれていることを踏まえまして、輸送力不足を解消するための取組を実施することとしております。この中長期計画については、毎年度フォローアップを行うとともに、次期「総合物流政策大綱」を閣議決定するタイミングと合わせて今後見直しを行うことを想定しております。

14ページをご覧ください。こうした「2030年度に向けた政府の中長期計画」については、先般閣議決定されました総合経済対策と合わせまして種々の取組を進めているところでございます。具体的には左上の多様な輸送モードも活用した新たなモーダルシフトや、水素等の活用も含めた物流GXの推進、また、物流標準化やデータ連携を推進するとともに、物流DX等を行い、高速道路での自動運転トラックの実証等を進めていくことを予定しております。併せて、物流拠点の機能強化等に向けて、今後、どのような拠点のあり方を目指すのかについての検討も進めているところでございます。

15ページは、先般の総合経済対策で記載されました物流関係箇所の抜粋でございまして、こちらはご参考とさせていただきます。私からは以上です。

麻山参事官: 林田様、ありがとうございました。モビリティ・ロードマップ2025で物流を扱うかどうかについては、昨年度ご意見をいただいておりましたが、今、国土交通省からお話しいただいたことも踏まえて、集中的に議論すべきかどうかについて、後ほど意見交換をお願いしたいと思います。続きまして、総合政策局の土田課長、お願いいたします。

土田課長(国土交通省 モビリティサービス推進課): 国土交通省のモビリティサービス推進課、土田です。私からは、今弊省で進めている「『交通空白』解消の取組」についてご説明いたします。

本年の7月に、国土交通省として「交通空白」の解消本部を設置いたしました。この本部においては大臣を本部長として、「交通空白」に対して日本版ライドシェアや公共ライドシェア等の導入により、地域の人が移動手段を使えないエリアや時間帯の解消に向けて、省を挙げて、全国の運輸局の総力を動員しながら取組を進めています。大きく二つを目的として対策を講じておりまして、一つが地域の足の対策、もう一つが観光の足の対策です。それぞれ、全国の運輸局を通じて、首長に対する営業活動や交通事業者に対する働きかけを行い、一定程度、取組が進んできたと思っています。また、11月25日には民間事業者の知見やナレッジを活用して、さらに取組の裾野を広げるために、官民連携プラットフォームも立ち上げました。このプラットフォームを活用しながら、さらなる推進を図ろうとしています。

地域の足の確保に向けた状況としては、7月に本部を立ち上げた時点で、公共ライドシェア・日本版ライドシェアを手がけていない自治体が622ほどあるという結果でした。これらの自治体に対して集中的に、首長の方に働きかけを行い、本年12月時点では24まで減ってきております。公共ライドシェア・日本版ライドシェアを含めた移動手段の確保に関するツールが全国に浸透しつつあると理解しています。観光の足についても進展しています。まず、二次交通サービスの導入改善として、例えば駅からの日本版・公共ライドシェアを導入する、タクシーの利用環境を改善する等の移動手段自体を提供する取組が進んでいます。また、グーグルマップをはじめとする地図アプリに交通手段を掲載し、どの手段が提供されていることを認知してもらう取組や、特急の車内でタクシーの予約ができるシステムを開発して、タクシーの予約がしやすくなるように環境を整えるというような取組を進めてきました。

半年ほどかけて「交通空白」の取組を集中的に行い、環境の醸成も含めてツール自体が着実に浸透してきていると思っています。

しかしながら、まだ「交通空白」が全国的にすべて解消されたわけではありませんので、令和7年度からの3年間を「交通空白解消・集中対策期間」と位置づけ、さらに取組を進めていきたいと思っています。「交通空白」の現状を改めて把握するために、それぞれの自治体に現況把握の依頼をさせていただき、それを取りまとめつつ、「交通空白」とされた場所についてどのような方策を取るのかも含めて、この解消本部を開催しながら取組を進めます。3カ年の方針も策定しつつ、集中的に取組を進めていきたいと思います。進捗自体も本部において毎年度フォローすることで、空白の解消に向けて着実に進展を図っていきたいと考えています。以上です。

麻山参事官: 土田課長、ありがとうございました。今回から、交通商社の議論を進めていくことといたしましたので、モビリティサービスをめぐる事例について、ご見識をお持ちの有識者から、ご説明をいただきたいと思います。はじめに、暮らしの交通株式会社代表取締役の田島様から、「町の移動を作り出す交通商社 暮らしの交通株式会社」と題しまして、ご説明をお願いします。

田島氏: よろしくお願いいたします。田島颯と申します。出身は東京の江戸川区ですが、3年前に香川県三豊市に移住しまして、今は暮らしの交通株式会社を運営しております。ここからいくつか事例も含めてご紹介させていただきますが、会社を運営する中で大事にしていることとして、都市一極集中から地域多極流動への変化を目指しています。

我々は交通事業者から始まり、交通事業を進める中で課題感を感じ、その先にたどり着いたのが交通商社という概念でした。どうしたら町の人々が移動したくなるのか、移動総量を増やしていくことを目的に事業を推進しています。地域における交通商社の役割としては、潜在需要の把握、目的地の創造、異業種連携の三つがあると考えています。一つ目の潜在需要の把握としては、香川県三豊市では年間55万人ほどの観光客が来る地域でもあるため、観光客も含めた需要の把握を行っています。二つ目の目的地の創造では、移動を手段として割り切って捉えたときに目的地や移動の動機を作り出していかなければならないと考えました。三つ目の異業種連携では、交通事業を交通事業者だけでなく町や事業者に開いていき地域の交通を守っていくこと、これらが交通商社の役割だと感じています。

暮らしの交通株式会社は13社の出資会社があり、その中には地域のタクシー会社3社や、地元の100年企業である建材加工業、地元唯一のスーパー、観光事業者等多業種の方が含まれています。これらの事業者で共通するのは、スーパー等、交通と密接につながっていて交通がなくなると困る事業者や、交通があることで新しいサービスを考えられる事業者であることです。様々な事業者様や3社のタクシー事業者にご参加いただき、暮らしの交通株式会社が立ち上がりました。

我々が交通商社を行う中で大事にしていることは、交通商社の機能と需要側との間でいかに質と量が担保された接触時間を顧客と持つかという点です。交通需要や移動需要はこれまで可視化されていなかった中、交通事業は供給側中心で提供されていました。顧客目線から何が求められているのか、アンケートやインタビューではなく、実際の事業を通じて認知していくことを交通商社として行っています。

現在、地域において子供たちとシニア層をターゲットに交通商社の事業を進めています。私の移住のきっかけにもなったのですが、子供たち向けに「みとよ探究部」という部活動を通じて、三豊市の教育委員会と合同で小中高生に新しい探求学習の機会を提供しています。毎週地域の大人や事業者のもとに子供を連れだすことや、子供たち自身でテーマを決めて探究する活動の伴走支援を行っています。部活動の中では学生と企業とのつながりを作るサポートを行っています。この活動の欠席理由として多かったのは、親の送迎に起因するものでした。町全体を見ても学校の統廃合だけでなく、部活動の統廃合も行われています。そうすると、隣町までいかないと部活ができないような状態になってしまいます。移動可否によって学びの選択肢が大きく変わってくると考えています。

それらを「移動格差からくる学びの選択肢の格差」と定義付け、どうすれば解決や軽減できるのか考えて始めたのが、乗合タクシーサービスのmobiです。システム自体はWILLERとKDDIが子会社を作って持っているものですが、そのシステムを借り受けて、町への展開を私たちで行っています。学生は月々4,500円、一般の方は7,500円で乗り放題としています。観光客については、1回500円で距離関係なく利用いただけます。こちらについては三豊市内7町の中の2町でご利用いただいています。現在、アプリと電話で予約でき、月間4,000から5,000ライドあります。うち6割が学生ユーザー、残り3割が観光客、1割が一般の方です。

2年ほど活用いただいていますが、運賃収入が運行経費を上回らない状況です。また、学生や観光客ユーザーにおける学校や観光地等、明確な目的地への移動は多く利用いただいておりますが、そこから分岐する周遊のような形での利用には至っていない点を課題と感じています。どのようにすれば移動の頻度や目的地を増やすことができるのかと考え、町の知らないことをワクワクに変えていくことをコンセプトとして、社内サイネージを利用し目的地を伝えていく事業や、マイルアプリを開発し、今後導入することで、町の中での周遊、移動頻度を増やすことを仕掛けていこうとしています。同時に、この仕組は運賃収入に加えた収入源として、運行経費に充てていくことを想定しビジネスモデルを作っており、最近では運行経費を賄える状態になりました。

次に、シニア層に対しては、最後まで家や自分の街で暮らしている人ほど移動頻度が多いのではないか、という仮説のもと、いかにその状態を作り出せるかを念頭に置いてサービスを作り出しました。この6月から新しく始めたのがシニアサポート「まごころサポート」事業です。日常寿命をコンセプトとおいて、電球交換から相続不動産まで、法に触れない限りどんなお困り事も解決する万屋のようなサービスを提供しています。こちらは240店舗ほどあるフランチャイズ事業に加盟し私どもで新たに始めた事業となります。地元スーパーや不動産屋と協業し行っています。20分1,000円で、草むしりから買い物、一緒にお出かけ、空き家の残置物撤去等、幅広くシニア層の困りごとをお受けする事業を行っています。元々は個人のお客様からご依頼を受けることが多かったサービスですが、最近ではケアマネジャーや民生委員等から時間や労力面で行えないサービスを代わりにご依頼いただいております。コンシェルジュと言われる方々に従事していただいておりまして、完全報酬型の業務委託、いわゆるスポットワークの形で地域の方々に協力いただいております。地域の中での働き方が正社員かパートに限られている中で、スポットワークが浸透するのかという疑念を抱いていましたが、募集を開始した際に応募が7,8件あり、現在は15名ほどが常に勤務できる状態でコンシェルジュとして関与いただいています。主に子育て終了した主婦層や65歳の定年を迎えたアクティブシニア層が登録されております。最近では移住者の方が最初の仕事として地域を知り、地域のシニアの方と関係を築くための方法としてコンシェルジュとして勤務いただいています。現在登録されている方が増えてきているため、二種免許を取得してもらったうえで、実験的に空いている時間にタクシーの乗務員をしていただくことを現在タクシー会社と協議しています。

まごころサポートでシニアの方をサポートする中でこれまでシニアの方ができていなかったことや介護関係者が行ってあげたかったけれども手が回らなかった部分について、役割分担をし、我々がサポートするケースが増えてきました。あるご家庭では、奥様ががんを持たれていて、旦那様がほぼ寝たきりの老夫婦に対して、奥様が余命を感じたところから、サポートに入らせていただきました。そのなかで旦那様から、最後奥様と旅行に行きたいという話を伺いました。このような経験から、シニアの方やその周りの関係者には断念した願望や欲求があると感じています。買い物に行きたいけれども重い荷物が持てず外出頻度が減っている、友達と会いたいが転倒が怖くて会えなくなった等、可視化されていない諦められた願望が非常に多くあると感じています。

まごころサポートの次フェーズとして、地域の中でシニアの楽しみや役割を作っていくための新たな事業を計画しています。このような事業が移動需要を作ることにつながってくると考えています。シニアの移動需要を作った具体例としては、地域のスナックを昼間に利用してシニア向けにカラオケ喫茶を開催し、移動の動機を生み出したものがあります。きっかけとしては地域で唯一のカラオケ喫茶がつぶれ、40分かけて歌いに移動している話を聞いたことです。最初に白髪のおばあちゃんが一人で来て歌ってくれていたのですが、ある時に電話をかけておじいちゃんを呼んで来てくれた時の写真です。交通商社として作りたい景色はまさにこのようなものです。おばあちゃんとしては、カラオケが目的であり、おじいちゃんとしては、おばあちゃんと会うことが目的になって移動してくれました。このような小さい移動の動機を街の中でたくさん生み出していくこと、もしくはすでにある動機を認識して移動の連鎖を作っていくことによって結果的に移動サービスや地域の公共交通を使ってもらうことに紐づけていくことで、交通事業として成り立つことに近づくと考えています。

これらの取組を通じて、質と量を担保した需要サイドとの接触時間を増やしていき、地域内の交通を最適化しながら営みを残していくことにチャレンジしています。

最後に、地域で交通事業を営む上での難しさをご説明します。一つ目は、地域内に残る「利権」との向き合いの難しさです。三豊市にタクシー事業者は5社あり、そのうち3社は出資会社です。しかし、残り2社のうち1社のおじいさんが県議会議員で地盤を持っておりまして、市役所も強く言えず、金銭的支援、後方支援も受けられない状況で新しい事業を始めざるをえませんでした。交通の話になると、変わりづらい土壌、文化がまだまだ残っていると感じました。二つ目に、交通事業は稼げない前提でできている面があります。価格設定面で、我々のサービスは適正価格と考えていますが、三豊市の行政のバスは、1回100円でどこまでも乗れるものです。比較対象がそこになると、運賃収入が担保できず、運賃収入以外でどう収入を担保させていくか考えなければなりません。その状況に向き合う中で出てきたのが、交通事業者から交通商社に変わっていくプロセスでした。課題がある中で、我々も試行錯誤しながら今後も事例を作っていければと考えています。以上でございます。ありがとうございました。

麻山参事官: 続きまして、MSP構想につきましてご説明をいただきます。議事次第では、山下様からご説明いただく予定でございましたが、よんどころない事情により、一般社団法人日本自動車工業会の久保様からご説明をいただくことになりました。久保様、よろしくお願いいたします。

山下義行氏(代理:久保氏): ありがとうございます。ただいまご紹介に預かりました日本自動車工業会でデジタルタスクフォースの事務局サポートをしております久保でございます。お時間をいただきまして誠にありがとうございます。山下に変わりまして、代理でお話をさせていただきます。

まず、本日のご説明の枠組みだけご説明させてください。本日は自工会デジタルタスクフォースで取り組んでおりますMSP構想、Mobility Smart Passport構想についてご紹介させていただきます。以前、このワーキンググループの前身である「『モビリティ・ロードマップ』のありかたに関する研究会」でもMSP構想について、山下からご説明をいたしました。マイナンバーカードと運転免許証の一体化を契機に開始したプロジェクトであり、実証を通じて構想を具体化していく予定があることをお話いたしました。その後も自工会デジタルタスクフォースでは検討を進めておりまして、今年度一つの実証実験を行うことになっております。来年度からはその実証実験の結果も踏まえた上で、実装に向けての検討をしていこうと自動車会社が集まって相談をしております。本日の説明は前半でMSP構想はどのようなことを目指しているかを簡単に説明いたしました後に、後半で具体化の形として、三重県多気町と今実証実験の準備を進めておりますので、その内容についてご紹介いたします。
 
まず、自工会が掲げております「モビリティビジョン2050」を紹介いたします。人口減少や生産年齢人口の減少によって働き手が不足し、生活者の暮らしに直接影響を与える課題が山積しております。そのような状況のもと、自動車業界として豊かで夢のあるモビリティ社会を実現するため、次世代のモビリティ産業に進化し、社会課題の解決と新しい価値の創出、経済の発展に貢献していこうと掲げたものでございます。
 
そのためには、自動車業界だけではなく、業界の垣根をまたいだ多くの仲間との連携が必要だと考えております。社会、人、生活者を中心に据えた上で、様々な産業と連携を深めていこうと考えております。生活者のお困りごとに向き合った上で嬉しさ、豊かさ、幸せを提供していくことが基本の考え方でございます。
 
社会の安全・安心に貢献する、ヒト・モノ・コトすべてが自由に移動でき、社会とつながる喜びを提供する等の「モビリティビジョン2050」で掲げる世界観の実現に向けて業界一丸で取り組んでまいります。
 
その中の一つの具体的な取組が、このMSP構想でございます。便利で豊かな暮らしを支えることを目指しております。そのために、デジタルの力、データの利活用が不可欠であるという考えが基本的な立場です。
 
生活者のライフスタイルや価値観は多様化し、生活者と自動車との関係も多様化しております。例えば 、ある人が自家用車、法人車、レンタカー、シェアカーを運転することもあります。最近では個人間で車を貸し借りするサービスも現れてまいりました。裏返せば、同じ車両を複数の方が多様な目的、多様な方法で利用するようになってきています。MSP構想では、人と車のN対Nのつながりをデジタル活用によりきめ細やかに把握し、生活者一人一人に寄り添った便利で安心安全なモビリティ体験を提供していくことを目指しております。例えば、様々な資格情報、履歴データを、マイナンバーをトラストアンカーとし、自己主権性、安全性、プライバシーを守りながら簡単、便利に使うことができることが考えられます。また、車のデータに関しても、登録情報や整備履歴等の静的な情報に限らず、運転挙動データ等も、利用者の同意を前提に、新しい価値創出に利用することを考えております。
 
そして、それらの人のデータと車のデータをN対Nで掛け合わせてつないでいくためには、人側だけでなく、車側にも一意に特定する識別子の体系を整備する必要があります。
 
その他にも、資格情報のデジタル化や、将来的には人と車のつながりを実現する鍵となるデジタルキーの技術進化や具体化が必要になってくると考えています。この点については、他の産業の皆様や国、学識者の方々と意見を交換しながら進めていければと考えています。
 
ここからは、実証に関してご紹介させていただきます。資料9ページは自工会のデジタルタスクフォースに参加する11社の自動車メーカーの方々、約40名が集まり、話し合って作成した絵でございます。先ほどご説明したようなMSP構想の実現や、データの連携、利活用の拡大によって、どのような嬉しさがモビリティとして生み出されるのか、または生み出していきたいか、という想いが描かれています。この図をご覧いただくと、一つ一つがユースケースになっており、全部で10個あります。
 
すべての詳細説明はいたしませんが、いくつかをご紹介させていただきます。まず一つ目のわかりやすい例として、自動車に関する手続きのすべてをデジタル化することにより、いまある多種多様な書類やハンコ等を可能な限り削減し、お客様にとって手続きが簡便になる取組があります。二つ目として、運転中のドライバーの医療情報と連携することで、もしもの時に迅速かつ適切な対応が可能になるのではないか、についても考えています。三つ目に、多気町との取組でもご紹介しますが、お出かけの際に移動手段で困っている方々を支援する取組も進めています。四つ目に、免許証を返納された方やお体が不自由な方に対して、その方々に最適化されたパーソナルサービスを提供することも考えられます。五つ目に、ドライバー不足が深刻な物流分野において、効率化と働きやすさの両立に貢献できると考えております。
 
このような取組を10個考えており、喫緊の社会イシューとのすり合わせによって、三つに絞り込みました。巡りあわせによって、来年の3月実施を目途に「共助型の地域交通」の実証実験を三重県多気町と協力し進めていく準備をしています。
 
ここからは、三重県多気町と具体的に進めている取組の概要について、現時点の予定ではありますが、ご紹介させていただきます。実施に際しては、ご出席いただいている村上統括官からは多大なご支援をいただいております。この場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございます。
 
今回の実施に際して何よりも大切なのは、住民の方々のお困りごとや地域の実情に寄り添うことでございます。それが大前提になります。そのために現地に足を運び、多くの方々の声をお聞きするところから始めました。今回の実証実験にあたっては、その中で見えてきた二つの困りごとを対象にして、まずは実証実験として進めております。
 
一つ目は、高齢者の方々のお出かけの足がなくなってしまっていて困っておられる点です。高齢者の方々が病院に行く際には同居のお子さんに送迎をお願いすることはできても、ちょっと遊びに行くことは我慢されているケースが多く見られました。
 
二つ目は、お子様を抱えておられる家庭でございます。お子様がいる家庭で、毎日の送迎が極めて大きな負担になっている例がみられました。家族全員のスケジュールが子供の送り迎え中心に組み上げられている実態になっているというお声もございました。もしかしたら先ほどのお話にもありましたような、学びの機会を損なっている一因にもなりかねないと感じております。
 
そのような現地の方々のお話を聞きまして、今回、実証実験では「誰もが、好きな時に、好きな場所に移動できる共助型の地域交通システム」をコンセプトに掲げて、1回トライしてみようと進めております。
 
具体的には、実施内容のイメージはこちらのスライドの通りでございます。多気町の勢和地区を中心に実施いたしますため「勢和のワゴン」で「せいわごん」と名前を付けながら、地域の方と一緒に相談をしながら進めております。多気町の方が空き時間を利用して、いわゆる共助ドライバーの役割を務めることを実施してみようと思っております。車両に関しましては、事務局の方で4台ほどご用意させていただきます。利用者の方は、希望の時間に、希望の場所で乗って、希望の場所で降りることができるように準備してございます。そのような、いわゆるオンデマンド型の乗合交通システムを一度トライしてみようということで、今回は実証でございますので、まず第一歩として、ドライバーも利用者も少し人数を絞った形で実施する予定でございます。
 
資料24ページは、事前のヒアリングで多気町の勢和地区の方にお話を聞いた時の発見でございます。今回、この共助型の仕組でトライしますが、その仕組の土台となるような「地域のために貢献したい」という文化が非常に根付いていることが声から分かりました。そのことも今回の実証計画をこのような形にした理由の一つでございます。実際に今でも近所の方同士で送り合うようなお話もございました。
 
ただ、一般論的な話ではございますが、プロではない一般の方が運転するため一定の不安を持つ方もいる点も打合せでご相談いたしました。運転者の技能、あるいは健康状態、また車両の整備状況等に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。これらの不安を払拭するためにも、このサービス・仕組の中に不安の払拭を埋め込むべきではないかについて相談しております。今後このサービスが広域展開され、ドライバーや利用者が増えた時にも重要な論点になってくると考えております。
 
そのような考えのもと、今回の実証実験ではMSP構想で考えている仕組を使って、このサービス自体に信頼の仕組を埋め込むことをトライしようと考えております。検証のポイントは2点ございます。一つは、マイナンバーカードを活用し、ドライバーと利用者双方が多気町の住民であることを証明しながら、このサービスにエントリーする方法です。もう一つは、ドライバーの運転技能を運転データによって証明することです。資料26ページ左側のドライバーAさんは、今回用意した4台の車両をまたいで運転することになりますが、それらのデータを別々の車でも統合し、Aさんの運転スコアを算出することをトライしてみようと思っております。
 
また加えまして、すでに多気町が取り組んでおられる他の事業との連携も今後図っていきたいため、相談を始めております。広域連携の取組、例えば美村パスポートや美村ペイ等のサービスとの連携、お出かけイベントとの連携についても相談を進めております。
 
資料28ページに「実現したいのは、住民の方の元気と幸せ」とあります。こちらは打ち合わせ資料ではありますが、やはり将来的には単なる移動手段の提供に留まらず、住民の方々の元気や幸せにつながるような取組にしたい、という思いを共有しながら現在準備を進めております。
 
MSP構想の目指すものを資料29ページに絵で示しました。MSP構想はやはり生活者中心で考えていきたいという思いで進めております。人の嬉しさのために、データを安全につないで利活用するためのデジタル基盤やルール作りを整備していくことを自動車業界としても行っていきたいと考えております。
 
残念ながら、現時点ではデジタル基盤の整備は必ずしも万全とは言えない状況と認識しております。デジタルの世界における「私」という存在がバラバラになってしまっていることや、分野を超えたデータの連携が思うように進んでいないことがあると考えております。
 
そこで、MSP構想としては、ユーザーが自己主権的に自身のデータを取り扱いながら、産業をまたぐデータ連携を実現し、嬉しさを生み出すような広域な将来構想を描いております。この中では、本人の同意に基づいてデータを提供するデータ提供者と、そのデータを活用して本人にサービスを提供するサービサーないしアプリケーションがあると考えております。私どもは、このデータ提供者とサービサーをつなぐデータ連携基盤、あるいはコミュニティやルール形成も含めた基盤作りを皆様と一緒に進めていきたいと考えております。人を中心に据えた上で、様々な嬉しさが生まれ続けるような生態系を作り出せれば良いと考えております。
 
資料33ページには現状の課題意識をいくつか記載いたしました。上の段に人のデータ、下の段に車のデータという形で整理をしております。まず上の段、人のデータに関して、生活者の方々が自身のアイデンティティ情報等のデータを自己主権的に管理し、プライバシーを保護しながら企業やサービスに提供できる仕組やルール作りを進める必要があるのではないかと考えております。また、その中では、モバイル運転免許証mDLをはじめとした証明書や資格情報のデジタル化等の論点も含まれてくるのではないか、と考えております。
 
次に車のデータに関して、1台の車両を、ライフサイクル全体を通じて一意に特定する車両識別の体系整備や標準化の検討を進める必要があるのではないかと考えております。また、これは自動車に限った話ではなく、すべてのIoT製品を含めたモノのIDとしての議論と一体化して進める必要があるのではないかと考えております。
 
さらに、車のデータの利活用拡大に際して、公正な競争環境の維持、秘匿性の高い技術等の保護、適切な費用負担等の観点の議論も必要であると考えております。これらを検討しつつ、引き続き皆様とご意見交換をさせていただきながら、進めていきたいと考えております。私からの説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

麻山参事官: 久保様、ありがとうございました。続きまして、交通商社を考えていく上では、海外の事例も参考にして検討すべきと考えており、日高構成員に海外の状況をまとめていただきました。海外事例と地域の交通商社機能に関しまして、ご説明お願いいたします。

日高構成員: 資料タイトルには「海外事例と交通商社的機能検討について」と書きましたが、主にデジタルの共通基盤についてお話しさせていただきます。よろしくお願いします。
 
私たちがMaaSの文脈で取り組んでいるのは、地域にある様々な交通を統合的にサービスとして提供し、ユーザーにとっても、地域にとっても利便性を向上させる仕組で、業界ではMaaSオペレーターと呼ばれる取組です。いくつか事例をご紹介します。
 
まず一つ目は、フィンランドのヘルシンキで行われたWhimです。スタートアップで、様々な海外展開の難しさもあったため、今は他の会社にサービスを売却されております。ただ、地域の中で、公共交通、カーシェア、タクシー、シェアサイクル等々を一元的に提供しており、交通サービスを商社的に扱うという意味では、共通項があるのではないかと思っております。
 
フィンランドのWhimは今なくなっておりますが、弊社のMaaSレポートの中では、多く事例があったので、紹介いたします。一つ目は、イギリスのサンダーランドです。移動だけではなくて、レストラン、イベント、家族での移動プラン等々も含めた無料のスマートシティアプリがございます。移動交通を中心にしながらも、他のものと組み合わせたものになります。始まったばかりで便利かわからないですけども、こういうアプリがございます。

二つ目はメトロバンクーバーが主体となり、地下鉄等の公共交通機関だけではなく、カーシェアやシェアサイクルに拡充する取組がありました。MaaSという言葉をあまり使っていないケースもございますが、そのような取組も世界各地で粛々と進んでおります。
 
三つ目は、地域のレベルが異なるかもしれませんが、隣国の韓国です。韓国ではスーパームーブというサービスが進められております。このサービスは国内全域で利用可能な形を目指しています。すでにヤフーマップやグーグルマップ等で交通情報は提供されていますが、韓国政府として国全体の交通サービスを取りまとめる形になっています。交通商社という概念と少し異なるかもしれませんが、分散した交通サービスを共通的に取り扱う交通プラットフォームとして進んでおります。
 
交通商社が何をするのかという観点で申し上げますと、例えば異業種との連携もあるかと思いますが、供給側の観点で申し上げます。私は鉄道会社にいた経験もありまして、供給側の最適化には個人的にもこだわりがございます。その例として、リトアニアのスタートアップTrafiが展開する、ドイツのベルリンでのJelbiというMaaSアプリがあります。これはスマートフォンを通じてユーザーデータを収集し、そのデータを活用してMobility Policies、いわゆる交通の最適化を進めています。データをもとにユーザーの需要から交通を作り、交通供給の最適化を図っている点で、交通商社の共通項が見られる事例かと思います。
 
次に、シンガポールのmobility Xの事例です。モビリティのプランニングとデータアナリティクスを組み合わせた取組を進めております。ライドシェア事業者やタクシー配車アプリ等もデータを使って最適化しております。地域全体の交通商社のありかたとして、複数の交通モードを束ねる観点で申し上げると、需要に応じて供給量を最適化することが考えられます。例えば、稼働率を上げる、コストを抑える、利便性を向上させる等の取組です。
 
今年、ITS世界会議がドバイで行われ、様々な交通のデジタル化の取組が紹介されました。この中で、スマートフォンユーザーとの接点を広げる一方で、オペレーション側のデータで、例えば“but there is much more”という形で、ユーザー向けサービスを拡充する一方で、データを活用して供給側を効率化する取組も進められていることが紹介されており、非常に参考になる事例だと思います。
 
続きましてS’hailはシーメンス社が提供するSiMobilityの一環として進められております。道路や駐車場の満空情報、輸送サービスの信号制御等を組み合わせた取組です。これは地方部よりも、都市部の交通最適化の視点で進められていますが、交通商社のような取組にもつながる可能性があります。

次で海外事例の最後になります。こちらはオーストリアのウィーンにあるUPSTREAM MOBILITYというプラットフォームです。ウィーン交通局がプロジェクトオーナーとなり、民間企業が運営している形です。このサービスでは、車や駐車場情報や各種モビリティサービスを取りまとめ、デジタルプラットフォームとして他のスマートフォンアプリやウェブアプリケーションに接続しています。資料11ページの真ん中の図が交通商社と呼べるかわかりませんし、左側に供給、右側に需要があるデジタル庁の図とは異なりますが、これも交通商社的な取組といえるかもしれません。これらの取組を支えるデータ基盤にはオープンAPIモデルが活用されており、データが連携するという意味では、一つのサービスが一つのアプリに閉じるのではなく、一つの会社のシステムが他のアプリからも呼び出せる仕組が導入されています。オープンAPIのため、スマートフォンのマップサービス、ショッピングアプリ、決済サービスから呼び出せることができるようになると思います。オープンAPIは簡単には作成できないですが、参考になる事例だと思います。
 
オープンAPIができますと、ユーザーIDを活用することで、例えば医療情報との紐付けや、住民割引、観光客課税等プライシングを変えることも可能です。また、脱炭素の文脈でCO2削減モニタリングについても、どういう交通のマネジメントをすれば下げられるのかを考えられます。CO2削減だけではなく、地域のKPIとして高齢者の移動の足、交通空白地をどう埋めていくか等、地域全体の経営をするために、交通のデータを一元的に管理する仕組が重要であると考えています。
 
モビリティサービスのデジタルプラットフォームとして考えると、地域という言葉の中では航空まで含まれるので少し大きいかもしれませんが、ひとつ、日本の中でも見直せる部分として、サービス同士の連携ができないかという点がございます。やはり鉄道は鉄道、航空は航空でシステムを構築されていますけれども、今後老朽化による取り替えや新しいシステムを作るにあたって、他のサービスと連携できる仕組を導入することが重要ではないかと思います。先ほどオープンAPIについてお話ししましたが、こうした取組が進むことで、サービス間の連携やマルチモーダルの選択肢が増え、シームレスなつながりを実現できるのではないかと思っております。
 
抽象的な話から少し現実に引き寄せてお話しますと、海外の事例を見ても人口が減ってドライバーが不足する問題にもしっかり目を向ける必要があります。先ほど収益が厳しいというお話もありましたが、交通産業全体が非常に厳しい状態にある中で、テクノロジーで解決を目指す一方で、人材の不足の現実も見逃せません。運転する人材が足りないのはもちろん、自動運転のオペレーターもおそらく不足してくるでしょう。そのような状況の中、地方部だけでなく首都圏でも同様の問題が起きており、これが地方に限らない全国的な課題になっております。これにどう対応していくかが重要だと考えております。
 
最後に、これは海外事例ではなく私の一構成員の考えになります。地域、都市部を含めて交通商社的な機能を検討する際には、人口減少による利用者の減少と担い手不足を前提として考えるべきだと思っています。その上で、三つのポイントを挙げたいと思います。
 
一つ目は、デジタル化を進め、人が行う仕事を可能な限り減らすことです。地域ごとに分散して行うのではなく、外部リソースや一つの会社に業務を集約して効率化することです。例えば、タクシーの配車業務を全国で一括して担う電脳交通のような例があります。BPOや、BPOにSaaSをつけたBPaaSも最近話題となっております。二つ目は地域ごとの開発ではなく、共通化されたシェアードサービスを導入することです。三つ目はデータ連携をしやすくなる日本版モビリティデータスペースJMDSの活用です。これらは国交省のMaaS2.0やSIPで進められている取組とも関連しています。このような仕組を組み合わせていかなければ、地域の交通商社としての採算性も厳しいだろうと考えています。
 
こうした取組をうまく組み合わせることで、モビリティ・ロードマップに記載できると良いと考えております。以上で私の発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

麻山参事官: ありがとうございました。それでは、私から「モビリティ・ロードマップ2025の論点及び策定に向けた進め方」についてご説明させていただきます。(資料7により説明)

続きまして、意見交換に入りたいと思います。本日は、交通商社についてご議論いただきたいと思います。交通商社の主体はどうあるべきか、また、どのような業務を担うべきか、さらに、対象エリアを自治体に合わせた設定にするのか、圏域を越えて対象にすべきか等を論点として、ご議論いただきたいと思います。また、費用面で、どうしたら交通商社機能が継続するのかという点についても、ご意見をいただければと思います。

なお、急遽ご欠席となりました若菜構成員からパワーポイントの資料をご用意いただきましたので、簡単にご説明させていただきたいと思います。

若菜構成員のお考えでは、交通商社の役割は一律に決まるものではなく、地域の特性によって変わるのではないか、資料に記載の通り、特に都市部では「分離による効率化」、地方では「統合による効率化」という方向に二分されるのではないかというご意見をいただいております。また、交通商社に期待される役割や機能について、現場への適用を想定してわかりやすく整理することで、その必要性が伝わるのではないかという話をいただいております。その上で、自動運転の導入にあたっても、交通商社が果たす役割も明文化をしていただけると、非常に良いのではないかというご意見をいただいています。詳細については、画面に表示のスライドをご覧いただければと思います。

意見交換は、30分ほどでございますが、時間の許す限り、ご発言いただく機会を再度設けさせていただきますので、本日ご説明を頂いた有識者の方々、省庁へのご質問も含めて、まずは3分以内でご意見をいただければありがたく存じます。ご発言の際は、Teamsの挙手ボタン、もしくはチャット機能でお知らせいただき、発言時にはマイクミュートを解除してお願いいたします。では、岡本構成員、お願いできますでしょうか。

岡本構成員: 私からは、物流改革と交通商社機能の2点についてコメントいたします。
 
まず1点目、物流の改革については、今、非常に進めていただいていると理解しました。素人的な見解で恐縮ですが、パレットの標準化が相当重要だと思っています。標準化により、パレットを一貫輸送することやパレットを活用して共同配送を行う等、様々な展開が可能になり、パレットにIDを付けることでデジタル化も容易になると考えています。パレットの標準化の論点があると考えて聞いておりました。

次に2点目、交通商社機能についてですが、考え方に非常に共感しています。私も送配電事業をしております。これまでは系統電力をお客様にお届けする仕事でしたが、今は地域に分散する再生可能エネルギー等、多様な分散電源と地域の需要をマッチングさせるエネルギー商社的機能が必要になっており、そこへの変革を進めようとしています。交通商社と似た話になってきております。これは交通分野でも同様で、地域の移動ニーズを創出しながら多様な交通手段をマッチングする機能が非常に重要だと改めて感じています。特に、モビリティの電動化や自動化が進む中、エネルギー商社的な機能と重なる部分が出てくると思います。具体的には、送配電インフラを活用して充電設備の整備や自動運転の支援が可能だと思いますし、地域の再生可能エネルギーを組み合わせて移動の脱炭素化にも貢献できると思います。このような取組を通じて、地域において省人化、省エネルギー、省CO2を進めながら、逆にその街の魅力や住民のウェルビーイングを向上させることを考えています。私はよく“more from less”と述べていますが、その考えを実践していきたいと思っています。そのために、交通商社的機能の検討の初期から私どもも参加させていただきたいと思っております。以上でございます。どうもありがとうございました。

麻山参事官: ありがとうございます。交通商社機能と自動運転につきましては、次回、次々回までに検討を進めていきたいと思っております。パレットの標準化についてお話をいただきましたが、国土交通省からコメントはございますでしょうか。

林田課長補佐(国土交通省 物流政策課): 岡本構成員からご説明いただいたパレットの標準化については、共同輸送やデジタル化等を進めていく上でも前提になりますので、物流部門でも非常に重要だと考えております。具体的には、本年6月にパレットについて、標準的な規格として1,100mm×1,100mmのいわゆる11型パレットについて、標準的な仕様や運用等をまとめたところです。今後の荷役等の効率化に向けて、普及をしっかりと進めていきたいと考えております。

麻山参事官: ありがとうございます。続きまして、須田構成員、よろしくお願いいたします。

須田構成員: ありがとうございます。今日は、様々な事例のお話を伺いまして、様々チャレンジされていることがわかりました。MaaSとして国土交通省や経済産業省で進められている話と個別にはオーバーラップする話が多いと感じました。大都市では交通事業者がスーパー、デパートなど、すでに多くのサービスを手掛けており、交通商社のような機能を大手私鉄等がすでに担っていると思って聞いておりました。しかし、普通の状況ではマスが小さくて公共交通が成り立たない場所で、誰がこの役割を担うのかという議論であると思います。人口密度、地域の広さ、時間的な距離、公共交通と自動車の分担率等、限定的な話になっていると感じました。これらの話をうまくまとめていかないと本当にできるのかと感じたのが感想でございます。今後議論が進められる自動運転についても、大きな視点で議論する場を作っていただきたいと思います。私からは簡単ですが、以上になります。

麻山参事官: ありがとうございます。自動運転につきましては、次回、集中的に議論していきたいと思います。交通空白の話題も少し出ましたが、国土交通省から簡単にコメントいただくことは可能でしょうか。

土田課長(国土交通省 モビリティサービス推進課): 交通空白の話題とはどのようなものでしたでしょうか。

麻山参事官: 交通空白そのものに関するご意見ではないのですが、地域の足をどう確保していくかという観点からのご意見だったかと思います。須田構成員、補足いただけますでしょうか。

須田構成員: 先ほどの発言の中では、交通空白という言葉は使わなかったのですが、既存の公共交通が成り立たないところにどのように作っていくかという点です。今、公共ライドシェアや日本版ライドシェアが一つのターゲットですが、それだけではなく、どうビジネスとして回していくのかという視点でございます。

土田課長(国土交通省 モビリティサービス推進課): ありがとうございます。交通空白については、地域に応じて抱えている課題が千差万別だと思っております。我々はツールと称しておりますが、日本版ライドシェアや公共ライドシェア、乗り合いタクシー等を含めて、それをどう組み合わせて交通空白の解消につなげていくか、地域の方々と自治体を中心に話し合いをしながら対応していきたいと思っています。

麻山参事官: ありがとうございます。時間の関係もございますので、秋本様、お願いできますでしょうか。

鈴木構成員(代理:秋本氏): 夢のあるプレゼンをいただき、ありがとうございます。3件コメントいたします。

まず1件目、MSP構想についてですが、ヒト・モノ・コトを動かすプラットフォーマーを交通商社として構築していくところで、需給のマッチングだけでなく、何が、誰が、どう動いたかというトレーサビリティも考えていかなければならないと思います。セキュリティやプライバシーのところは当然考慮されるとの説明いただきまして、非常に良いと思います。

2件目ですが、どこで行うかの話で、ドローンもそうですが、ヒト・モノ・コトがないところでPoCだけ実施しても、社会実装は進みません。人もモノもある程度動いているエリアで、特区もセットで事業や社会実装のモデルを作っていくのが一番良いかなと感じています。

3件目に、交通商社については、どういうスキームで作っていくかという点で、公益デジタルプラットフォーム的なものになるのかなと思います。この分野は様々な関係省庁や自治体が絡んでくるので、民間で行うのは難しいと感じています。国が主導するような公社的なものを立ち上げて社会実装を進めていき、その後民営化していく手法も検討が必要だと思います。以上でございます。

麻山参事官: ありがとうございます。プラットフォームのあり方につきましては、事務局としても引き続き検討していきたいと思います。続きまして、山本様、お願いいたします。

山本構成員(代理:山本昭雄氏): 今回、ITSジャパン会長の山本構成員の代理で出席しております。今回の内容につきましては、事前に確認しておりますので、今からの発言を山本構成員のコメントとしてご認識いただいて問題ございません。

重点テーマの論点整理について、今日の日本の移動課題解決に資するものがかなり整理されており、とても素晴らしいと思っております。各論点の中で、次回以降の意見となりますが、自動運転の社会実装と交通商社機能の2点についてコメントさせていただきます。

まず一つ目に、自動運転の社会実装について、日本の自動運転はどうあるべきか、日本に合った自動運転は何か、日本の移動課題解決のためにはどのような自動運転を活用すべきか、これらをしっかり考えるべきだと思います。都会における移動課題は、利便性をいかに向上させるかである一方で、地方はいかに移動手段を確保するかという根本的な課題があると認識しています。地方創生をする上で、雇用や福祉等と並んで移動手段を確保することは、それを支える必要不可欠な要素です。そのため国土交通省でも交通空白解消本部が設置されて議論が始まろうとしていると理解しています。

日本における自動運転のサービス形態としては、ロボットタクシーやシャトルバスの自動運転が考えられますが、日本ではまず政府の2027年に100カ所という目標通り、自動運転シャトルバスの地方での実現を優先すべきだと考えています。地方は自治体のコミュニティバスがすでにサービスを行っており、それをいかにシャトルバスで効率化していくことが近道だと思いますし、ロボットタクシーの方は多くの開発費用がかかるため、コスト面でも日本に合った方法を考えるべきだと思います。例えば、北国では電磁誘導線の活用も考えていくべきだと思います。

ロボットタクシーについては、公共ライドシェアをいかに置き換えていくかというアイディアが良いのではないかと思います。国土交通省の説明の中では公共ライドシェアと日本版ライドシェアは区分が同じになっていましたが、日本版ライドシェアはタクシー業界を活用したものであり、公共ライドシェアの方が空白地域に適しているのではないかと思います。前回の若菜構成員のご指摘の通り、ドライバー確保は非常に課題になっており、ロボットタクシーを公共ライドシェア、自家所有車等を使って置き換え行くかを地方で優先的に考えていくべきだと考えます。

二つ目に交通商社機能について2点ございます。まず、地方の交通サービスをいかに持続していくか、田島様がおっしゃった通り、人が少ないところでは需要がないので、公助をしっかり考えて交通商社機能を考えるべきではないかと思います。次に、共通基盤、例えば自動運転の路車協調をどう入れていくか、財源をどうするか、自動運転のサービスをどうしていくか等の企画機能をいかに交通商社機能が考えていくかを次回以降議論できたらと思います。財源については、道路維持建設に多くの費用をかけていますので、ハードウェアから交通商社機能のような移動サービスにも資金を振り向けることも考えてはいかがでしょうか。以上でございます。

麻山参事官: ありがとうございます。ロボットタクシーがシャトルバスと比べて費用がかかるというご説明を頂きましたが、何か情報をお持ちでしたら補足いただければと思います。

山本構成員(代理:山本昭雄氏): 色々情報収集しているのですが、ロボットタクシーの開発費用については、例えばアメリカのWaymoでいきますと1兆円を軽く超えるという情報があります。開発費用と車両の製造費用は分けなければいけませんが、開発には莫大な費用がかかっているという情報があります。

麻山参事官: ありがとうございます。地域の交通維持には公助が必要だという話をいただきましたが、実際に、地域の交通の維持に取り組まれている田島様からご意見を頂けますでしょうか。

田島氏: 我々もまだまだ試行錯誤しながら取り組んでいるところではありますが、本当に良い意味で適切な危機感を持つことは常に意識しております。公共交通に関しても、初期段階から我々も行政の補助金が入らなかったことで、どうにかこうにか事業として成り立たせなければならないという前提でいろいろと考えていたところ、結局様々なビジネスとの連動性が見えてきました。ある種、交通の既存の枠組みから逸脱する形でも、その地域ならではの掛け合わせで、事業間連携等を作っていくことが、まさに交通商社の役割だと思いますし、今後の持続性を高めていく観点では非常に重要だと思っております。

麻山参事官: ありがとうございます。続きまして、村松構成員、お願いいたします。

村松構成員: ありがとうございます。私が担当しておりますロボットの領域についても、かなり似た状況でありますので、それを少し共有させていただきます。

まず、支出面においては、今あるロボット、今ある技術をどれだけ最大限活用できるかに関しては、支出を増やさないことがまず大前提になります。結局、大きく投資してしまうと、それだけ回収が大変になり、ROIが上がらなくなって、結果としてみんなロボット導入を諦めてしまう状況になってしまいます。ですので、まず支出においては、極力、現状維持でどうにかすることが重要となります。ただ一方で、現時点のロボットがすべてROIに見合うわけではないため、多少支出が増えたとしても、今後さらに深刻な人手不足が起こる中でも、ロボットを活用してサービスのクオリティを担保していくのか注力しているのが支出面です。

続きまして収入面ですが、極力、ロボットの働く時間を増やすことが重要となります。例えば、清掃ロボットだと朝と夜しか働かないと、日中時間帯は遊んでしまうことになります。するとROIが全然合わなくなってしまうので、その日中時間帯は、清掃ロボットの自律移動機能のみを活かして、商品を運ぶ、ポップを担いで商品を売ること等に活用できます。そうすると、ロボットの使える幅が増えてきます。もちろん、手を生やしたり何かをしたりするとまた違ってくるのですが、基本的には、今あるロボットをどれだけ有効的に使うかが重要だと思っています。

この話の意図としては、需要を取りまとめる際に参考になる部分があると考えております。例えば通勤通学は時間がある程度決まっているのでその時間に業務を割り当てる一方で、他の時間帯についても何か業務を割り当てて、稼働率を上げることが重要です。結局、MaaSのインフラ投資はどうしてもかかってしまう中で、その投資を抑えながら、どのように収入の方を上げていくかの点で、例えば、清掃ロボットが商品の販売を始めたり、警備を始めたりすることで、うまく掛け算できると、お互いに何か新しい付加価値が生み出せて、効率的な交通商社が実現できるのではないかと考えております。以上です。

麻山参事官: ありがとうございます。続きまして、甲田構成員、よろしくお願いいたします。

甲田構成員: ありがとうございます。皆様の多岐にわたる情報提供ありがとうございました。

1点目、人口規模に応じて産業としてギリギリに成り立つ場所では、物流においても、交通・移動手段においても、担い手の育成や産業そのもののブランディングが非常に必要だと思いました。特に物流やバスなどの、長時間労働や変則的な働き方でありながら給料が高くないところは、業界全体で若手の育成や福利厚生の充実が必要です。法改正がされるとはいえまだまだ厳しい状況になっています。インフラである以上、国策として支えていく必要があると思いました。

2点目に、人口の多い場所、少ない場所共通して、交通空白の言葉と実態との乖離について考える必要があります。例えば1事業者でもタクシー事業者や公共交通機関があれば、そこは交通空白ではないという考え方になると思いますが、それが生活者の需要を満たしていることとイコールではありません。田島様から伺った通り、交通は稼げないことが前提に成り立っていることを考えると、B2Cモデルにのみ依存して住民ニーズに応えることの限界を見つめる必要があります。既存のサービスの温存は必要ですが、収益性がない中で民間がじり貧で頑張ることは不可能ですし、公共だけで支えるのも難しいです。そのためC2CのシェアリングにMSP構想の中で取り組まれているのは興味深いです。一般人が運転することに対する不安について様々な対策が打たれていましたが、何かは起きてしまいます。その一つのアクシデント・インシデントがあった時に社会や世間が叩く状態にならないための制度作り・仕組み作りが必要です。

最後に質問になるかもしれませんが、交通空白や暮らしの交通で取り組まれている中で、移動距離の長短のどちらの利用者人数が多いのか、乗り放題サービスとオンデマンドサービスの利用割合がどれくらい違うのかお聞きしたいです。これによってビジネスの組み立て方が違ってくると思います。わかる範囲でお答えいただけたらと思います。

麻山参事官: ありがとうございます。甲田構成員から、移動距離、収益性、人口が少ないところでは実態との乖離があるという話を頂きました。田島様が実際に工夫されている点等がありましたら、補足説明いただければと思います。

田島氏: ありがとうございます。まず移動距離については、我々が提供しているのは地域内限定エリア内での短距離移動のサービス提供に現状はとどまっております。もちろん移動需要で、例えば空港に行く等、距離がある部分の移動についてもニーズがあることは認識しています。ただし、現状は出資会社にバスを運行している事業者がいるので、逆にその接続をどうしていくのか、幹の部分と枝の部分と葉の部分と区分けをした時に、既存事業者を全部淘汰したいというよりは、役割分担をしっかりとしていくことが大事だと考えています。その部分については、常に議論しながら、それぞれができることを考えて、地域内交通を検討しているというお答えになります。

次に、採算性・収支の部分です。サブスクリプションのようなものを採用してはいるのですが、現状、基本的にサブスクリプションで利用しているのは、学生がほとんどである状況になっています。基本的には毎日使う通学になります。コミュニティバスは100円で市が出しているのですが、1回100円×月の利用回数で安い方を利用するという意思決定をしているかと思います。例えば、1ヶ月のうち20日学校に行って往復で40回使うと4,000円となりますが、プラスでお昼ご飯を食べに行く移動等を考えると、4,500円であればmobiの方が安くなるため、mobiを利用することとなります。この点はラインを見極めて金額設定をしております。

一方で一般のお客様はほぼワンタイムで利用しているケースが多いです。ここについては、ある程度土地柄も関係しております。香川県自体、タンス預金率が日本一で、倹約家の文化性があるので、何回使うかわからない乗り放題よりも、明確に回数がわかる回数券や1回券の方がユーザーのニーズにマッチしていると認識しました。サブスクリプションは残してはいますが、基本的にはワンタイム売りをプッシュしながら、利用者を増やしております。以上です。

麻山参事官: 他にご発言されていない方はいらっしゃいますでしょうか。石田構成員、お願いします。

石田構成員: 今日は、田島様、久保様から面白い話を聞かせていただきましたし、日高構成員からは海外の状況も伺いました。ありがとうございます。特に条件不利地のモビリティサービスについて新しいモデルを示していただいたと思います。私なりに考えると、満たされるのは、お互いに助け合う持ちつ持たれつの社会だと思います。サービス提供者とビジネス提供者が画然と分かれた従来のモデルは成立しないと思います。それを裏付ける枠組みや社会慣習、法制度がまだまだなので苦労されていると感じました。これがモビリティワーキングの主要な課題になると強く思いましたので、よろしくお願いします。

土田課長にお伺いしたいのですが、交通空白地帯で検討している自治体が24に減りましたという報告をいただいて安心しましたが、それが本当にウェルビーイングにつながってみんなが望んでいる交通空白地帯の解消になっているのか疑問です。なっていないのではないかというのが失礼ながら正直な感想です。その点はどのあたりを目指しているのでしょうか。その中において公助としての枠組みを変える等、どういう連携ができるのかご意見をいただければと思います。物流もぜひ議論したいのですが、林田課長補佐からは相当程度かっちりしたプログラムが進んでいると伺いました。それを邪魔しないようにうまい議論の仕方やうまい相乗効果の出し方も気をつけなければと思います。以上です。

麻山参事官: 土田課長、いかがでしょうか。

土田課長(国土交通省 モビリティサービス推進課): 石田構成員、ありがとうございます。今回、半年ほど取組を行い、公共ライドシェア・日本版ライドシェアに手がついていない自治体については、集中的に伴走支援しながらサポートした結果、数が減りました。しかし、住民が満足できる状態になっているかについては検証が十分進んでいません。そのために、改めて交通空白がどの程度残っているかについてお伺いして、現れた結果に対して国土交通省として今後3年間で集中的に取り組みたいと思います。交通空白については、地域によって実情が異なるため、自治体で判断していただくことになります。互助の精神は重要で、供給や需要の少ない地域では、なるべくそれを束ねていくことが大事です。昨年は、公共交通でのリデザインとして、スクールバス、介護福祉サービスの活用等を議論しましたし、それらを支援する制度を設けています。そのような制度を活用しながら引き続き交通空白の対策に努めます。

麻山参事官: 物流に関しては、質問ではなくコメントのように思いましたが、物流・自動車局から何かございますでしょうか。

林田課長補佐(国土交通省 物流政策課): 物流については、2024年問題が大きなテーマとなっており、昨年から様々な対応を行ってまいりましたが、2030年に向けては労働力がさらに減ることを考慮して、関係閣僚会議等における議論等も経ながら、長距離の幹線輸送などの輸送力不足に備えた対応を行ってまいりました。さらに、地方部等、人が少なくなる地域において、どのように対策をしていくかも重要ですので引き続き、適切に連携しながら進めてまいりたいと考えております。ありがとうございました。

麻山参事官: ありがとうございました。予定した時間も超過しておりますが、まだご発言されてない方で、どうしてもということがあればお伺いしたいと思います。日高構成員、波多野構成員、よろしかったでしょうか。

日高構成員: ありがとうございます。ぜひいろいろ議論できればと思いますが、やはり通底して思うのは、モビリティ事業でも交通事業でも、その事業性をどう評価するかという点です。デマンド交通や自動運転、公共ライドシェアというラベルはあるものの、どういう形態で、どういう速度で、何人乗れて、どういうドライバーにするとどれくらいお金がかかり、地域にどういう効果があるのかというモデルが存在しない中で、空中戦になっているところもあると思います。どうあるべきかという話もありますが、モデル式のようなもので事業性を評価する点が一つ考えられます。これがあると、この地域ではデマンド交通が合わない、シャトルバスの方が良い、等の議論も具体性を持つと思います。以上です。

麻山参事官: 波多野構成員、よろしかったでしょうか。

波多野構成員: ありがとうございます。皆様のご報告の中で、一番肝心だと感じたのは、事業性の確保のために、移動の需要をいかに発掘するか、そしてそれを様々な手段で対応するためのマッチングをするかだったと思います。地域の業種や手段による制約がかかってしまい、マッチングが十分でないところは、何らかの制約の垣根を越えて水平的に一括して対処できるような特区的な考え方が必要です。課題は実行してみないと分からないので、制約の少ない環境を予め作り出して、マッチングに対してトライアンドエラーを行う事がスムーズに行えると、日本特有の課題の解決スタイルが見えてくると思います。デジタルの力で改善の方向に向けて検討いただきたいという点が、率直な印象でした。以上です。

麻山参事官: ありがとうございます。それでは、本ワーキンググループの閉会にあたり、森主査に代わりまして、村上統括官より総括をお願いします。

村上統括官: 皆様、長時間ありがとうございました。三点ございます。

第1に、自動走行については、次回集中的に議論したいと思っております。諸報道によると2027年には都市部でロボタクシーが数百台スケールで走ることとなりそうです。自動走行はいよいよ目の前の現実になってきそうです。一方で、人手不足の地方でこそロボタクシーが走ってほしいと思いますが、その採算性は微妙です。国土交通省による支援により地域でも多くの自動走行実証が行われるようになりましたが、自立・事業化に向けては多くの課題が残されています。その解決に向け、是非皆様のお知恵と政策的アイディアをいただきたいと思っています。
 
第2に、交通商社機能の議論です。本議論は、多くの識者から注目されている一方、企業によっては、3年間まさに交通商社機能を実践してきたがなかなか採算が取れないといった話もいただいています。国土交通省のご尽力もあり公共ライドシェアが広がり始めている一方、多くの自治体が日本版ライドシェアと公共版ライドシェアの違いが分からないとか、道路運送法第78条の第2号と第3号の違いが分からないといった混乱に悩んでいる自治体も少なくありません。また、これを利用する需要の創出という議論が重要となりますが、いざ需要の創出という話に踏み込み始めると、教育や福祉などを所管する他の部局との関係もでてきてしまい、進め方が一挙に難しくなります。次々回に議論したいと思いますが、交通政策以外の部署も参加を要請してほしいといったご意見があればデジタル庁の方に連絡ください。皆さんからお知恵をいただければありがたいです。

第3に、担い手についてです。モビリティの議論は、制度や技術の議論は良く伺いますが、担い手がどういう人なのかというイメージを具体的に語るケースは少ないと思います。田島様の世代は希望の星だと思います。業界自身の健全で活力ある事業承継や世代交代も考えていかないと、現場で深刻なのは、事業形態もありますが、プレイヤーをどのように確保していくかだと思います。自動走行の担い手、交通商社の担い手、これらに対する新たな知恵や知見を誰から各地域に注入にしていくのか、引き続き活発なお知恵とご議論をいただければと思います。

次回は自動運転の社会実装について集中的に、これまでの皆様の取組や論点、また、自動運転の運行事業者等からも意見聴取を行う予定です。交通商社機能のあり方については、次々回で再度ご議論をお願いしたいと思います。ぜひ委員の皆様におかれましても、それぞれの専門分野を生かし、引き続きご尽力を賜れればというふうに思ってございます。石田構成員以下、ご参集いただいた皆様、本当に毎回ありがとうございます。引き続きご協力のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

麻山参事官: 本日も様々なご助言をいただきまして、ありがとうございます。特に、話題提供いただいた田島様、久保様、日高様、そして、現在の取組状況をご説明いただいた国土交通省に御礼を申し上げます。本日、まだ話し足りないということがありましたら、来月の1月7日までに事務局までいただけますようお願いします。なお、本会議の資料につきましては、デジタル庁のホームページにて公表させていただきます。また、議事録につきましては、有識者の皆様に内容をご確認いただいた後、同じくホームページで公表の予定です。次回のワーキンググループは、現在、日程調整中ですが、1月下旬を予定しております。本日、事務局から今後の進め方についてご説明させて頂きましたが、スケジュールについては特段のご意見がありませんでしたので、3月まで毎月1回のペースで行う予定とさせて頂きますので、引き続きご協力をお願いいたします。本日のワーキンググループはこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

以上