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デジタル田園都市国家構想実現に向けた地域幸福度(Well-Being)指標の活用促進に関する検討会(第7回)

概要

  • 日時:2024年10月8日(火)9時30分から11時30分
  • 場所:オンライン
  • 議事次第
    1. 開会
    2. 議事
      1. 地域幸福度(Well-Being)指標 OASIS等研修実施状況/指標活用促進・情宣について
      2. 地方公共団体における地域幸福度(Well-Being)指標活用推進について
      3. リファレンス・ロジックツリー(案)に関すること
    3. 意見交換

資料

参考資料

議事録

司会(名倉): 定刻になりましたので、ただいまから、第7回デジタル田園都市国家構想実現に向けた地域幸福度(Well-Being)指標の活用促進に関する検討会を開催いたします。

ここからは前野先生の方に議事進行をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

前野座長: おはようございます。
デジ田の地域幸福度指標の活用促進に関する検討会を始めたいと思います。

盛りだくさんの内容ですけれども、それではよろしいですか。

議事の1番は地域幸福度指標OASIS等研修実施状況/指標活用促進について、これは南雲さんですよね。

南雲委員: はい。では始めさせていただければと思います。
色んな研修を進めております。それから情宣活動、これらの足元の状況についてご報告したいと思います。

(p.1)エグゼクティブサマリーは後で戻って参りますけれども、基本的には去年の12月にOASIS研修をこの検討会で提言いたしまして、3月から実施状況について定例的に報告することを始めているというものです。

(p.2)考え方としては、この2ページ目の右側にポンチ絵がつけてありますけれど、これが概念といいますか、縦軸でまずローカルの指導者を育てていこう、OASIS研修等6ヶ月の中身の濃い目のやつを入れているということです。

それから横軸の方でワークショップとか情宣活動ということで、Well-Being指標の活用に関する認識を広げていこうという「量」の方です。

それから真ん中はアンケートのローカル化ということですけれども、標準化されている前野先生と内田先生に作っていただいたアンケートに加えて、自治体の独自のものを加えることによって、より独自性を発揮したこの3軸で進めてきているということです。

(p.3)まずOASISですけれども、左側のグラフを見ていただきますと、こちらが実施状況ですOASISを受けている団体の数が積み上がってるということで、年度末に27というところに向けて上がっている。

一方で、右側が受講された人数ということで、3月の段階では12月の段階で200名行くかなということを言っていたのですが、それを遥かに超えて400というところに、第3四半期のところでも行くだろうというところで、かなり倍くらいのペースで受講してくださっている方が増えてるということです。

下の方にどんな方が受けているのかということで、自治体、民間団体、大学とか新聞社も入っていますけれども、本当に色んな所に広がっているという感覚を持っています。

(p.4)それからOASISは6ヶ月ですが、1日で、午前午後でいわゆる座学とワークショップの組み合わせでやるというのを色んな所でやっています。

これは「幅広く」の方に近いのですけれども、これも順調に伸びてまして、年度末の段階で1,000人を超えるところまで受講者数が増えるというところに来ています。

内訳でいうと、デジタル庁さんとの間で進めさせていただいている、いわゆる1日ワンデー研修というのと、それからこれもデジタル庁さんの声かけで自治体の方から来てくれと言われる所に行くキャラバンというのと、それから僕の方で独自でやっているので、このような感じで積み上がっているということです。

面白い所で言うと、鎌倉市の官民研究会とか、それから横浜市を中心とする8市連携市長会議というのですね。

広域での勉強会。それからいわゆる「デッカイギ」と言われる行政デジタル改革共創会議、それから日本ファシリテーション協会といったところ、こういったところが皆さん非常に関心を持ってくれているということで、前野先生、内田先生が今まで進めてこられたことの上に、うまく乗っかる形で、これを政策化する流れが積み上がってきているのかなという感触を個人的には持っています。

(p.5)それから大学での授業の中に、ウェルビーイングに基づく政策デザインということで、いろいろやってきているものが、これもだんだんと数が増えてきていまして、京都大学は実は今週末から始まるのですけれど、その他の大学もだんだんと始まっているということで、若手教育といった中にこれが入れているというところ。

それから右側は、金沢工業大学の学生が中心となって作った、このWell-Being指標を題材としたゲームなのですが、これがものすごい勢いで人気を博していまして、色んな体験会が全国で津々浦々始まっているという状況です。

多分、第2四半期の段階でこの数字ですけれど、もっともっと伸びていくのではないかとなってきています。

アイスブレイク的なところから基本的なコンセプトを選んでいただくという意味では、ちょうど手ごろというものができてきました。

(p.6)研修等の状況はこのような感じです。

OASIS、ワンデーそれからコレクティブ・インパクトカードゲームですけれども、こんな感じで、今、進めているという状況になっています。

(p.7)それからスマートシティ・インスティテュートの中の話になって大変恐縮ですが、会員も今650団体を超えるところまできていますけれど、オンラインでトレーニングプログラム、学校を持っています。

これは内閣府と内閣官房から頼まれる形もありまして、3年前に立ち上げて、今、3期生が受講中という段階になっていますけれど、その中にもWell-Being指標の話を基本的に学んでいただくというモジュールと、それからプレミアムコンテンツということで、去年、前野先生、今年は内田先生と広井先生に授業を持っていただくという形で、より深いところで、オンラインでface to faceというのはちょっと顔を見ながらという意味でface to faceなのですが、そういう形で講義を学んでいただくというようなこともやっています。

(p.8)それから情宣活動の方に少し軸足を移したいと思いますけれど。

(p.9)ご案内の通り、毎年7月に日経ホールで大きなイベントをやりますけれども、今まで前野先生と内田先生に出ていただいて、数年間積み上げてきたものをだんだんと自治体の方に出ていただく割合を増やしていまして、今年は鈴木さんと東大の小泉先生にコメンテーターとして入っていただくということをやりました。

(p.10)これが1ヶ月後にこういう形で日経新聞で大きく出るということもありまして、我々なりに認知を広げるということで、いろんなことをやっているということです。

(p.11)加えて、色んな所のメディアを使いながら、認知度を広く高めることをやっていますけれど、左上はNHKの「漫画家イエナガの複雑社会を超定義」という番組がありまして、この中でウェルビーイングとスマートシティのところ、番組制作で後ろに入りましてやっていただいたりとか、その他いろんな自治体さんでやると地域のメディアが拾ってくれたりとか。それから右下はアーティストの相川七瀬さんとウェビナーをやるという機会もありまして、これを企画されたのが世田谷区の議員さんなのですが、これも、相川さんもそうですけれど僕のワークショップの受講者だったということもあって、これが実現したという流れになってきています。

(p.12)その他、SDGsの流れでの寄稿論文があったり、民間企業でいうと八千代エンジニアリングさんのサステナビリティレポートの中にウェルビーイングに基づく持続的な社会の実現というようなものが入ってきたり、だんだんといろんなオーディエンスが増えるような形になってきているかなと思います。

(p.13)それから7月1日にキックしました「デジタル化横展開推進協議会」というのがあるのですけれど、その中にWell-Beingコミュニティというのを作りまして、いろんなファンクショナリティですね、ファシリテーター、道具、データからファイナンスまでといろいろあるのですが、8つのチームという形で立ち上げていまして、昨日、その全体企画会議、キックオフをやりました。

(p.14)8チームが立ち上がるということで、右側の表を見ていただくとこの8チームにどういう割合で人が入っているかということですけれど、上のところ188名と書いてありますが190名を超えました。なので、全国規模でいろんな民間企業さん、自治体さん、非営利団体さんが入ってきて、大学も入っていますけれど、皆で分担しながらこれを広めていこうという、全国的な運動化も始まっているというところに、今来ています。

(p.15)それからアンケートの話ですね、アンケートのローカル化ということですけれど。

(p.16)渋谷区は早くにOASIS研修を受けていただいて、今2年目という所に来ていますが、OASIS研修の中で渋谷区のデータを分析してみると、渋谷の関係人口と言われる人たち、住んでいないけれど通勤・通学もしくは遊びに来られる人たちのウェルビーイングのアンケートがやっていなかったという所に注目が行きまして、それをやってみようという形でデータをとって解析するという所まで来ています。

(p.17)少し意外な点もあって非常に面白いので、簡単に紹介したいと思います。

左側を見ていただくと、区民、来街者のうち仕事と学校関係、来街者のうち遊び関係という形でウェルビーイング、いわゆるカントリーラダーで0から10のポイントのときにどうなっているかと、区民の方が高かったというのがあったりとかですね。

(p.19)それから連想する言葉、やっぱり区民は「住みやすい」、来街者で学校関係だと「若者」、ただし「騒がしい」ということが出てきます。

遊び関係だと「華やか」とか「賑やか」とかそんな言葉が出てくるというのが出てきています。

(p.20)非常に面白かったのは、渋谷という言葉で連想すると断トツに「にぎやかな空間」というのですね、これ一番左側の緑の棒を見ていただくと一番高いというところに出ています。

ただ、どうなって欲しいかと聞くと「落ち着いた空間」、「緑が多い空間」というのが来街者も含めて高かったということで、イメージと求めてるもののギャップもこんなところにあったのかというのは渋谷区からすると非常に大きな発見だったという形になっています。

(p.21)いろんな解析をやったり、(p.22)こういう大きなロジックモデルですけれど、最初に作ったときには区民だけのウェルビーイングでロジックモデルを書いていたのですけれど、来街者も含めるとどういう構成になるのかというのを書き上げるというようなことも区の中でやったという、これは1つの事例です。

(p.23)加えて、渋谷区はシブヤ・スマートシティ推進機構というのを持っているのですが、私もそこの理事をやっていますけれど、そこでテーマと書いてありますが、安全・安心、環境、多様な空間活用等、チームでプロジェクトをまわしています。

そのスマートシティプロジェクトと色のついている一番上の移動・交通、公共空間、Well-Beingの因子ですけれど、どれがマッピングできるのかということで、各プロジェクトがどの因子を高めるような活動してるのかという、いわゆるテクノロジーから入ってきているようなスマートシティの概念と、Well-Beingのマッピング作業も終わったというところまできている、一歩一歩成長しているという、その事例をご紹介させていただければと思いました。

以上でございます。ご清聴ありがとうございます。

前野座長: はい。ありがとうございました。

それでは、これについて質疑応答する時間を取って良いでしょうか。

鈴木(デジタル庁): 前野先生、今日は内田先生が10時までのご参加と時間制限がありますので、先にコメントを頂いていただければと思います。

内田委員: すみません。学内の会議がございまして、途中退室になってしまう事をお許しください。

南雲さん、プレゼンテーションどうもありがとうございました。

すごい形で広がりを見せていることに驚きとともに色んな方がウェルビーイングというものを身近に感じたり、データの読み方ということについても、深掘や知識の向上が出てきているというのは本当に素晴らしいことだなと思いました。

自治体が自前で、自分たちで考えたりできるようになるというのがゴールであるということは前々から南雲さんとも話をさせていただいたと思うのですけれど、本当にそうだなと思いました。

1つ質問ですが、このゲーミフィケーションの手法は、固まったものというよりは試行錯誤しながらやってる感じなのか、それともすでにコンテンツとしてパッケージ化されているのか、こんなふうに使えるみたいなことがあればちょっとご紹介頂ければありがたいです。

南雲委員: はい、ありがとうございます。

今回のコレクティブ・インパクトゲームというのは、金沢工業大学の平本教授以下の研究室で作られているのですが、もともとはSDGsを題材としたゲーミフィケーションをずっとやってこられたところなんですね。

なので、ちょっと代表例でいうと、人生ゲームで皆さんお馴染みかと思いますけれど、あれのSDGs版なんかを作られているところです。

なので、手法としてはある一定の成熟度を迎えていて、学生が自分が大人に負けず夢中になれるものということで、自律的にあのようなゲームをどんどん作っていくという土壌までできているということです。

今回も指標を見たときに、これは産官学にいろんなプレーヤーがいて、それぞれの利益を追求するということと同時に、皆でWin-Winにならなきゃいけないという二軸の利益最大化というところをテーマにゲームを作ったということなので、かなり深い読み込みの上に手法論も成熟化を迎えているということなので、面白い段階に来ているのではないかというのが私の理解です。

内田委員: ありがとうございました。

コンフリクトみたいなものをどう調整するのかというところまで入ってるというのは深い段階に入ってるかなと認識しました。

ありがとうございます。

南雲委員: ありがとうございます。

前野座長: はい、ありがとうございます。他にご質問等ありますか。

関委員: 関から1つよろしいですか。

ご説明ありがとうございました。

渋谷区の事例に興味があるのですけれど、冒頭の目次のところでは独自指標みたいな言い方がされていたのですが、もともと用意されている指標以外に何か新しい指標を作って取ったという意味での独自でしょうか。それとも選び方の点で独自性をいっているんでしょうか

南雲委員: はい、前者です。

我々今みんなで使っている、いわゆる地域幸福度指標50問+オプション1問の51問に加えて、その市とか区で独自に聞くべきものは何なのかという形で質問を増やしたという形になっています。渋谷の場合は、それプラス対象を区民に限定しないというところまでいったというところが新しいということです。

関委員: 例えばどういう項目が新しく立てられたんですかね。

南雲委員: ちょっと待ってください。画面を出した方がいいと思うので。

(p.21)これが今回やったアンケートの代表例です。見ていただくと「まちで過ごす時間は、自分の健康によい影響を与えている」とか「このまちに誇りを持っている」も実は我々言っていないのですが、「このまちの住民の価値観に共感する」とか「このまちは、文化・芸術・芸能が盛んで誇らしい」、いろいろ入っているということです。分野で言うと、前野先生と内田先生が作られたもののどこかに入るものなのでしょうけれど、聞き方のニュアンスに広がりが出てきていると思っていただくと、よろしいかと思います。

関委員: わかりました。ありがとうございます。

南雲委員: はい。ありがとうございます。

前野座長: はい。他にご質問ご意見等おありでしょうか。

古賀委員: 質問させていただいてもよろしいでしょうか。東京大学の古賀です。

ご発表ありがとうございました。OASIS研修の3軸のところでちょっと質問させていただきたいのですが、3番のローカル固定のアンケートというものがあると思いますが、こちらのアンケート項目というのは、どなたがどのように決めてどう活用されているかということをお伺いしてもよろしいでしょうか。

南雲委員: はい。ありがとうございます。

これはちょっと長い歴史がありまして、もともとは僕のところで、客観指標しか持っていなかったんですね。前野先生と内田先生との出会いの中でやはり主観がないと、幸福感、ウェルビーイングは語りきれないよねということで、全般的な質問を前野先生に新たに作っていただきました。

もともと前野先生の4つの因子というのは有名ですけれど、これを10の因子という形で地盤を作っていただいたんですね。

内田先生は協調的幸福感ということで、もう既にでき上がった世界をお持ちでいらっしゃって、それの要素をこちらに組み入れるという形で、最初160何問というすごい質問数になったのですが、多少妥協もありましたが、答えていただく方のことを考えて、50問というとこまで縮めたと。

あとはデジタル化の質問が意外と少なかったので、これは僕の方で追加をして、うまいことパッケージを作ったという、広めて畳んでここまできたという経緯と、それからプルーブンな、前野先生と内田先生の手法を軸にしているというのが特徴になっています。

古賀委員: ありがとうございます。そうすると自治体別で別々の質問があるというわけではないということですよね。

南雲委員: そうです。もともといろんな自治体さんバラバラでやる傾向がちょこちょこありました。ただそうすると、本当に何ができて何ができてないのかというところの比較軸とか尺度が成り立たないということがあって、且つそれで別々にデータ収集までやるのかというと、コストの問題があるということもあって、一元化したというか、集約化をする形で2階建ての1階部分を作ったような形になっています。

古賀委員: ありがとうございます。

すごく両方とも大事な指標かと思うのですけれど、共通することももちろん大事ですし、ウェルビーイングの構成の仕方って地域によっても、もしかしたら変わってくるのかなという、そのリソースが変わってくるので、もしかしたら市町村の方が注目されているところというのが個別にあるのかなと、そういうことを聞いてるのかなということをちょっとお伺いしたくて質問させていただきました。

南雲委員: ありがとうございます。

1階部分で比較可能性、標準化というところがあって、2階部分が独自性ということで、例えば前橋市だと時間貧困ということでアンケートをすごく足したんですね。

今回、渋谷区は関係人口というところを加えているということで、全部で調査をやったことを俯瞰した上で、自分の自治体がこれとこれだけを見る、選択をするという形で独自性のさらに色を濃くするというそういうアプローチをとっています。

古賀委員: ありがとうございます。

前野座長: はい。他にご質問ございますでしょうか。

委員の先生方、ぜひご発言あったら手を挙げてお願いします。よろしいですか。

それでは、今日は3つありますので進めて、いつでも戻って関連もしますのでご質問いただくのもいいかと思いますが、それでは2つ目は「地方公共団体における地域幸福度(Well-Being)指標活用推進について」と題しまして、こちらはデジタル庁さんからですよね。

お願いします。

鈴木(デジタル庁): では、私の方から資料3についてご説明をさせていただきます。

(p.2)まず2ページ目でございます。指標の活用団体数でございますが、9月24日現在で、102団体と当初の年度よりも大きく増えてきているところでございます。

肌感といたしましては、102団体で留まっているというよりも、日々増加していると感じております。8月にジチタイワークスという冊子に記事を掲載させていただきまして、こちらをご覧になって関心を持ったという自治体からお問い合わせが増えており、効果があったと感じております。記事そのものについてはAppendix12ページに添付しておりますので、また後程ご覧いただければと考えております。

(p.3)次のページ、本日の議論のポイントでございますが、本日先生方にご議論いただきたいのは、4点目のロジックツリーの部分が主になると考えておりますが、今ほど南雲委員からもご説明のあった人材の育成であるとか、指標活用の裾野が広がっているところ、導入の初期の団体と活用が進んでいる団体と差が出てきておりますので、この辺り熟度に合わせた支援についてもご議論いただきたいと考えております。加えて、この後ご説明いたしますが、ワークショップ開催支援についてファシリテーターの派遣を開始いたしますので、この点についてもコメントいただけますと幸いです。

(p.4)4ページ、本年度の取り組み状況について、本日は赤枠で囲みました、大きく3点についてご説明をさせていただきます。

(p.5)5ページでございます。

まず、自治体アンケート調査システムのリリースについてでございます。

開発をしております、自治体のアンケート実施を支援するための調査システムを今月中旬にリリースする予定でございます。仕組みについては、これまでもこの検討会にてご説明を何度かさせていただいておりますので、本日は割愛をさせていただきますが、実証実験に参加いただいた団体から感想をいただいておりますので、ご紹介させていただきます。

このページの下部に記載をしております感想ですが、このシステムでは50問の質問がプリセットされており、設定が大幅に簡略化でき、アンケートをとるハードルが下がった。システムを利用することで団体が取得するデータの項目形式が揃うことになるので、自治体でデータを整形する等の事務がなくすことができ、非常に有意義だ。アンケート画面等のUIは見やすく動作もスムーズで回答に違和感はなかったが、UIについては継続的に改善して欲しい。市民からの悪いリアクションは受け取っていないという声を頂いております。

実証実験に参加いただいた団体から、システムの細かい部分についてもフィードバックを頂いておりますので、リリースまで可能なものを修正・反映いたしまして、リリースしたいと考えております。

このシステムでは、先ほども話題にありました、自治体の独自の設問についてもアンケートがとれるようになっております。このシステムを使っていただきますと、全てオンラインで、指標サイトへの反映まで紙を使わずできるようになります。

今月中旬にリリースいたしますが、11月以降を目途に、自治体で使いやすいよう、LGWANへの接続も予定をしているところです。

(p.6)次のページ、指標サイトにレーダーチャートを含め、グラフを出しておりますけれども、相関係数のグラフ・散布図のグラフ、これらを今年度冬ごろにリリースする予定です。イメージの図でございます。こちらも順次進めているところでございます。

(p.7)次に7ページでございます。

今年度開始いたしますファシリテーター紹介・派遣制度についてご説明をいたします。

デジタルによる地域の活性化を進めるためには、ステークホルダーの巻き込みが非常に重要になって参りますけれども、その具体的な手法として、ワークショップが有効だと考えておりまして、自治体の皆様にもこれまで開催をおすすめしているところでございます。しかしながら、自治体側からは参加者に誰を呼んでいいのかであるとか、どのような内容で開催したらいいのかといった、中々ハードルが高いといった声が寄せられておりました。この声を受けまして、本年度7月・8月に、ファシリテーター養成講座を開催し、103名のファシリテーターを紹介できる体制を整えております。ファシリテーターは、このページの左側の図にございますけれども、「提供する標準ワークショップ」の欄に記載のとおり、午前2時間の座学、午後3時間のワークショップを実施できる者を育成いたしました。

自治体の皆様には、この派遣についての申請の手続き等、紹介の申込方法等を10月16日に説明会を開催し、お使いいただけるように進めたいと考えております。

また申し込みについてはサイト上で受け付けができるようにしていきたいと考えております。

(p.8)次に8ページでございますが、今まさに南雲先生にもご尽力いただきまして、開催を進めているところでございますが、今後のワークショップの開催予定等を掲載しております。
またご覧いただければと存じます。

(p.9)9ページ、ロジックツリーの作成支援(能美市での実証)についてご説明をさせていただきます。前回の有識者検討会でもご議論いただいておりますロジックツリーの作成についてです。

詳細については、この後詳しく井上先生、また能美市様からご説明をいただきますが、私からは概要をご説明させていただきます。

前回の有識者検討会で、南雲委員からOASIS研修で進めるウェルビーイングに効く領域を明らかにしていくペルソナ・ロジックツリーと、今デジタル庁で進めているこの取組の整合についてご指摘をいただいておりました。
こちらについては、南雲先生ともお話をさせていただき、ロジックツリーを活用するタイミングが異なるということで整理をさせていただいたと認識しております。具体的には、本取組でのロジックツリーは行うべきプロジェクトの企画や事業化の前の分析をする段階で使うものであり、南雲先生が進めていただいておりますペルソナ・ロジックツリーについては、各地域のウェルビーイングに効く政策が何なのか、最も効果のある取組は何なのかを明らかにする、そういったツリーの活用のタイミングに違いがあると考えております。

スライド写真の上の欄に実証の概要を記載しております。実証内容ですが、能美市様には医療・介護環境の改善についてのロジックツリーの作成をお願いいたしました。6月から9月、4ヶ月かけてお取り組みいただいたものでございます。体制についてですが、能美市長ご了解のもと、企画振興部デジタル推進課でご担当いただきました。

支援の状況でございますが、井上先生とデジタル庁で能美市さんにお伺いをいたしまして、リアルの協議3回に加え、オンラインやメールでのご相談・お話をさせていただきながら、このロジックツリーの取組を進めていただいたところでございます。

この実証を踏まえて、ロジックツリーの作成を通じて、サービス対象者が抱える課題を想定し、打つべき施策を考える整理や、部門を跨いだ連携の必要性が自治体の皆様に体感されるということが確認できたと考えております。

今後、Type2、3採択団体でのツリーの作成をお願いして参りますが、支援策といたしまして資料に記載の3点を検討しております。

まず、能美市様での実証を踏まえた活用ガイドの公開をいたします。本日資料として、現在作っている段階のものを提出しております。

また2点目でございますが、慶應義塾大学白坂研究室のご協力を得まして、伴走支援体制について現在検討しているところでございます。

3点目、デジ田事業において防災分野に取り組む団体が複数ございますので、防災分野のリファレンス・ロジックツリーを現在作成しております。こちらは本日の資料4のガイドの30ページに現時点版を掲載しておりますので、ご覧いただければと存じます。

自治体の皆様には10月16日に説明会を開催し、より詳細に取組などについて説明の機会を設ける予定でございます。

デジタル庁からの説明は以上でございます。

前野座長: はい、ありがとうございます。

関連するので、井上さんと能美市さんも続けてやってもいいですけど、現時点でご質問ある方いますか。いたらお受けします。

井上委員: 慶応大学の井上です。

自治体アンケート支援システムで少し教えて欲しいなと思ったところがあるのですが、よろしいでしょうか。

前野座長: はい。

井上委員: 独自設問が設定可能となっていますが、これの質問数、独自設定設問を無限に増やせるものなのか、それとも何か制限があるのか。もし増やせるとしたときに、その回答の仕方、例えば選択式であればいいけれどドリルダウンのような形式で設定するのは難しいとか、何か制約があるのであれば、補足していただければと思ったのですが、いかがでしょうか。

鈴木(デジタル庁): はい、ありがとうございます。

まず独自設問数ですが、制限はないというか、100以上は設定できる形で作っておりますので、概ね制限はないものとご認識いただければと思います。

回答方式ですが、自由記述方式は採用できなかったのですが、それ以外の方法では回答いただけるようにしておりますので、複数選択式も含め、回答できる形にしております。

井上委員: 自由回答はできないということなんですね。

鈴木(デジタル庁): はい、セキュリティ上、自由記述欄はハードルが高く、実現ができていないところでございます。

井上委員: あとは、回答者は匿名というか、匿名であることを了承した形で回答に進むみたいな、そんなシステムになっているのですか。

鈴木(デジタル庁): はい、本日の資料のAppendixの1枚目に回答者の画面をつけておりますけれども、属性は性別と年代を選んでいただくというもので、個人を特定できないようになっております。

井上委員: 年代はちなみにこれは10歳刻み。

鈴木(デジタル庁): はい、10歳刻みです。

井上委員: わかりました。ありがとうございます。

前野座長: はい、他にご質問・ご意見などございますでしょうか。

なければ次は井上さんからですかね。

井上委員: はい、鈴木さんからお話しいただいたものの詳細、ご紹介したいと思います。

(p.1)それでは改めて鈴木さんのお話いただいたところの詳細概要、詳細と言いながら概要になりますが、ご説明したいと思います。

「リファレンス・ロジックツリー活用ガイド」というものをリリースする予定です。

(p.2)経緯と狙いについては、前々からお話いただいているところかと思うので割愛させていただきます。

(p.5)狙いのポイントのところは、先ほど南雲先生のペルソナ・ロジックツリーとの位置付けの違いみたいなことを鈴木さんからもご紹介いただきましたけれども、このロジックツリーに関しては、立場異なる多様な関係者が自らの考えを積極的に共有し、他者の意見にも耳を傾け、意思疎通を図ることで共創を生み出すことを目的とすると。

また、この共創のプロセスへの参画が関係者各自のウェルビーイングを高めることにも寄与し、その結果生み出された施策の成果により、市民全体のウェルビーイングが高められるという循環構造を生み出したいという、このようなコンセプトで進められてきたものです。

先ほど、南雲先生のペルソナ・ロジックツリーとの位置付けの違いというところでタイミングの話が言及されていましたが、あともう1つ補足をすると、対象の幅かと思っております。

このリファレンス・ロジックツリーに関しては、主には市役所だとか、自治体の内部でご活用いただく部分が大きいかと思っています。市民という形で参画も促していますが、ここで言っている市民は一般市民ということではなくて、主には民間事業者、政策に関わるような民間事業者が一部関わるといいのではないかという程度です。ですので、ペルソナ・ロジックツリーのような、より具体、市民も理解いただけるような、領域に使うものではないということだと考えております。

(p.6)活用ガイドの概要について進めていきます。

(p.7)ロジックツリーは、皆さんご承知の通りかと思いますので、割愛させていただきます。

(p.8)「活用ガイドその2具体的な作業の手順」というスライドを新たに作っております。

(p.9)まずはロジックツリーの骨格ですけれども、今回のものは全部で5階層です。第1水準から第5水準までの5階層で設定をしています。

第1水準が政策分野、第2水準が施策のゴール、第3水準が各施策群のアウトカム、第4水準が各施策のアウトプット、第5水準が個別施策となっています。ただ、これだけだとちょっとイメージがつかないと能美市様からもお話がありましたので、右側にありますように、少し補足をさせていただきました。

政策分野、これは選定するテーマの政策分野のことを言っています。第2水準、これは政策分野として達成すべきゴール。第3水準、ここは各施策の結果として目指すまちの変化を表していると捉えていただいていいかと思います。第4水準はより具体の市民の体験の変化と補足させていただきました。第5水準は同じことですけれども、個別の事業・施策・取り組みのことを申しております。

(p.10)続いて、ロジックツリーの骨格ですけれども、骨格の2ですが、まず最初に、Well-Being指標による地域特性を分析していただくというところから開始されるのがいいかと思っております。各市によって、やはりウェルビーイングの形も変わってくるでしょうし、どこに取り組むべきなのかというところも変わってくるでしょうと。この点からウェルビーイング分析を行った上で、重要政策分野を特定していただくと。これがロジックツリーのテーマの選定という形になります。選定されたテーマについては、リファレンス・ロジックツリーが提示されているものがありますので、適宜参照していただければという話です。

次のステップとしては、重要政策分野におけるゴールの明確化をしていただきたいと思っています。これは自治体として、特定重要政策分野における、目指すウェルビーイングの状態といったものを明文化していただくのがいいのではないかと思っております。どこの自治体も似たような形の文章になるかもしれませんが、やはりリソースが違うという点では、その自治体独自の目指すウェルビーイングの状態、これを明文化していただくといいかと思っております。

そして、その後、第1水準から第2水準の政策ゴールに必要なアウトカム、これを第3水準に整理をしていくと。この段階は後程また細かくお話したいと思います。

第3水準まで整理した後は、第4水準を整理し、この第1水準から第5水準までの流れを左から右、右から左という形で、行き来していただいて、整理をしていっていただくと。こんな流れが主だった骨格になります。

(p.11)作成のステップについては、標準作成期間3ヶ月から半年ぐらいを想定して、0からステージ4まで設定します。ただ、今回取り組んでいただく主なところは、ステージ3のところまでかと思っていますが、もしご関心と余力のある自治体さんについてはステージ4というところもご参照いただき、マネジメントシステムとしてご活用いただくのがいいかと思っています。ここの中身については、このステージごとにご紹介していきたいと思います。

(p.12)まずステージ0ですけれども、まずはキックオフする段階です。この作成の作業を始めるにあたっては、まずはプロジェクトオーナー、首長さん等のもと、どなたか1人もしくは1つの部署が1人でこつこつやるというのではなくて、部局を超えたチーム編成を行っていただくのがよろしいかと思っています。まずは、今回のテーマに関係しそうな部局・課の方々を集めていただいて、そんなに大きな人数ではなくていいと思いますが、初期のコアメンバーとしてチームを組んでいただくと。その際、各メンバーの役割・権限、コミュニケーションのとり方・方針、こういったものを明確にされておくと良いかと思っております。初期のコアメンバーの理解が深まるにつれて、徐々にプロジェクトのメンバーというのを広げていかれるのが得策かと思っております。
ここでポイントになるのはプロジェクトオーナーの存在と、まずはプロジェクトマネージャーとしてのどなたか、旗振り役を設定していただくというところになります。

(p.13)ステージ0の作業の補足としましては、ここに書かれていますが、細かい話ですので割愛させていただきます。ここに書かれているのは、特に何か特別なツールを使って作成いただくということではないですという話です。

(p.14)続いて、ステージ1準備段階です。ここで特定された政策領域、防災、モビリティ、医療・介護、こういったものから1つを選定していただいて、ゴールを設定していただきます。これは先ほどお話したウェルビーイングの明文化の話です。

そして各自治体さんには総合計画等々あるかと思いますので、ここの中から選定されたテーマに関連する事業というのをすべて抜き出していただくという作業をしていただくのがいいかと思っております。
能美市さん、後程細かい事例もあるかと思いますが、この時点では600を超えるかなり細かい事業一覧を出していただいて、その中からテーマに関連する事業を抜き出していただいたという作業をしていただきました。これが準備段階になります。

そしてこの準備段階においては、能美市様はまずは第1水準・第2水準・第3水準は、リファレンスをそのまま一旦使っていただいて、仮置していました。そして第4水準・第5水準に自治体の中で展開されている施策を整理されていったという形がこのステージ1準備段階に当たります。
(p.15)続いてステージ2熟議段階と言っています。

たたき台は仮置も含めて、一旦作り終えて、上位目的から各施策までストーリーとして繋がっているのかどうか、或いは各施策が上位目的に効果的なのかどうか、こういったことをプロジェクトメンバーの中で熟議をしていただきました。この中ではかなり行ったり来たりがあったと聞いております。この反復作業といいますか、行ったり来たり、整理してみたり、またやり直してみたり、このプロセスがとても大事かと感じております。
(p.16)そしてステージ3仕上げ段階です。

仕上げ段階については、ロジックツリー全体が一定の整合がとれてきたと言う段階ですので、ここにKPIを設定していただくという作業をしていただきます。この②のところです。

KPIについては第1水準から第3水準まで設定していただけるといいのかと思っています。ただ、ここでどういうKPIを設定するかというところも熟議が必要なところかと思っています。無理やりKPIを設定するということよりは、その項目に適したKPIを設定すると言う必要があろうかと思います。

そして③KPIも設定し、出来上がったロジックツリーについては、プロジェクトオーナー、首長さん等々と確認いただいて、そしてプロジェクトのコアメンバー以外の町内の職員の方々、民間事業者の方々、こういった方々にも開示して、フィードバックを得ていただくと。このプロセスを経て、ツリーの熟度を高めていただくということが、望ましいかと思っております。

(p.17)そして最後にステージ4というものをつけています。

これはロジックツリーを作成して終わりにしないために、継続的な改訂・実装に向けたマネジメントシステムとして機能させることを推奨いたしますというスライドです。

一旦作ってKPIを置いてみたけれども、ちょっとずれていたかもしれない、或いはもっと大事なことがあった。こういったことが多々あるかと思いますので、こういったものを反映して、また翌期に向けて作り直す。こんな形で熟度を高めていただくと良いかと思っております。

(p.18)今までバーッとお話したことのポイントをここにまとめています。

まずは準備段階、リファレンス・ロジックツリーのリファレンスをそのまま使って、施策を一覧にする。そして第4水準、第5水準を仮に記載する。そして熟議段階です。この左から右、右から左、この検証作業を行き来して、それぞれのストーリーを磨き上げていただく。そして仕上げ段階。次の形が見えてきたら、KPIを設定して、第1版という形にしていただく。

(p.19)ロジックツリー作成・利用上の留意点、私からはここに書いてあるところで2つだけご紹介したいと思います。

1つは、ロジックツリーですけれども、きちんとしたロジックとしてMECEになっていることが目的ではないと思っています。ここでは枠の中を綺麗に整理する分類学ではない。分類学に走らず、ストーリーとして、本当に大事な施策は何なのかを検討していただく、議論していただく、そんなツールになるとよろしいかと思っています。

そして、この作成の熟議段階もそうですけれども、プロセスを通じて、ぜひ部局を超えて、真に重要な取組、或いは相互に支援し合える取組、こういったものを共通認識として見出していっていただく、これがこのロジックツリーの意義なのかとも考えております。

(p.20)そしてここからは補足になります。

ロジックツリーの活用ガイドに対しては、指標カタログというのも別紙でつけています。

これがKPIを設定するときのリファレンスになります。

例えば第1水準医療であれば、主観指標としてはこういう指標があります、客観指標としてはこういう指標があります、それはどこで扱われているものですというものが示されています。第1水準・第2水準・第3水準まで紹介があります。ただ、これがすべて当てはまるとは思っていません。当てはまるものがなければ、自治体様で独自の指標というものを立てていただいて、検証に使っていただけるといいかと思っております。
(p.21)能美市様の事例についても、スライド上入っておりますが、これはこの後、能美市様からお話いただきたいと思っております。

(p.22)リファレンス・ロジックツリーどのようなものがあるかというのを再掲させていただきます。

(p.23)医療・介護についてはこのようなものを提示しています。

初見の方もいらっしゃるかもしれませんので、念のためお話しますと、これが完璧に網羅されているものではありません。あくまでもロジックツリーのイメージを持っていただくためのものとして、少ないですけれども、提示しているという形になります。実際には、能美市様の事例を見ていただくと分かるように、かなりたくさんの施策が並んでくるというものになります。

(p.24)そして指標というものが設定されているということです。

(p.28)続いて未就学児子育て編についてはこのようにご紹介しております。

(p.29)モビリティに関しても、このようにご紹介させていただいております。

(p.30)防災についてはまだ作成途中と聞いていますが、このように整理をさせていただいております。

(p.31)今回のスライドについてはこの後に、用語集ですとか。

(p.32)なぜロジックツリーなのか、できあがったロジックツリーは何に使うのかという補足的な説明もついています。

(p.33)この辺りは、後ほど、村上さんからもお話いただくと良いかと思っております。

(p.32)私からは一旦リファレンス・ロジックツリー活用ガイドの概要のご紹介という点で、させていただきました。

以上です。

続いて、能美市さんに振っていただければと思います。

前野座長: はい、能美市さん行きますか。能美市さんの話も聞いてから質問をお受けしましょうか。

能美市: (p.1)はい、それでは先生から説明していただきましたが、こちらの方は先ほど説明ありましたように、デジタル推進課が中心となり、企画振興部内で実施させていただきました。

まず、ロジックツリー作成の概要について、作成段階として4つの段階を踏んでロジックツリーを作成しました。4つの段階の土台となる作業として約1,500の医療介護分野に関する中事業を整理しました。実際に付箋やエクセルを活用し、その事業が、どのような目的で誰を対象にどのような概要の事業かということをまとめたものが、このロジックツリーの土台となりました。

(p.2)たくさんの中事業がある中で整理していくと、当初デジタル庁さんからいただいた第1水準から第4水準までのモデルをもとに当てはめていったのですが、たくさんの中事業がぶら下がっていますので、それを整理するために第6水準に同じような目的や概要の中事業を1つのグループにまとめ、そのグループのタイトルを第5水準として「政策のテーマ」として新たに考えました。

この流れで整理した後、第3水準・第4水準を紐づけていったような流れになります。

それも統括官や皆様からご助言いただいて、このような形まで整理することができました。整理して見てみると、中事業は医療介護分野で、絞り込んでますので、健康福祉部関係の事業だけではなく、他の生涯学習やスポーツ関係の事業、生活環境課において免許返納後のサポートに関する事業をしていたり、部局を越えての繋がりというのもよく見えてくるようになりました。また、部局を超えて課題解決に向け、同じような目的をもって実施していることが、広い視野で整理することができました。

(p.3)こちらの方は、当初、1番目のロジックツリーに至るまでに整理したやり方なのですが、第3水準・第4水準を1つに整理し、第5・第6水準をそのまま引き上げることを整理した過程になります。

(p.4)そのような過程を踏まえ、次3ページ目ですが、もともとこのデジ田の事業は、医療・介護分野の課題を解決するために、医療介護対策室からスタートした事業であり、現在はデジタル推進課と医療介護対策室の職員が一緒になり、事業を推進しています。事業を整理する過程において能美市にとってどのような事業を重点的にすべきかを整理する中で立ちどまりながら、自分たちの事業を改めて整理し、見直すことができました。
改めてデジ田の事業を中心として、何が大事だったのかというところを振り返るために、第3・第4水準・新第5水準というところで整理し直してみました。

その際に先ほど井上さんが第1から第5水準まで、どういう言葉を置き換えていいかというところで、いろいろ言葉を整理して、分かりやすいように言ってくださっていたのですけれども、自分もその整理するために、第4水準は、誰に・どんな価値・効果があるのかという、誰に・どんな価値というところを明確にする必要があるなということ。第3水準は町がどう変わるかということ。第2水準は市民がどう満足するかというところについてご助言をいただきながら、整理させていただきました。それで第1水準において政策分野の特定ということで整理していったところ、整理しやすくなり、デジタルツールを使って、より生活基盤が整備されて、有事でも平時でも能美市民の方が安心して暮らし続けることができる能美市というところを目指しているんだというところが再確認できたかと思っております。

(p.5)最後に、4枚目になりますが、最終的にいろんな過程を踏まえましたが、デジ田事業の足元を振り返りながら、もう一度その政策全体、医療・介護というところの分野にまた広げてみて、最後のこの仕上げに入りましたが、結果的にデジ田事業の整理しながら、医療・介護の改善の視点もベースにありつつも、市全体の施策とつなげてみたときには、第4水準・第3水準・第2水準と段階を踏んで目指すものがはっきりとし、全体を広く見て整理ができたかと思っています。

前野座長: ありがとうございました。それでは井上さんと能美市の説明に関してご議論いただければと思います。何かご質問・ご意見などございますか。

太田委員: リファレンス・ロジックツリーのガイドブックの内容や作成例をわかりやすく説明していただき、ありがとうございました。特に能美市さんの4枚の資料ですが、熟議のプロセスを通じてどのように変わっていくのかということがよくわかりました。

2つ提案があるのですが、1点目は、井上先生や能美市さんがおっしゃったように、第4水準においては、市民のみなさんがどういう変化を体感していくのかということが大事になると思います。ロジックツリーは既存の事業でもわりと使われていて、例えばこの中でいくと、4ページの第4水準の一番下にある重層的支援体制については、結構、ロジックツリーをやっているのを他でも見ておりまして、たぶん第4水準に近いと思うのですが、たくさんの市民の方のインタビューをされていて、そのインタビューを抽象化せずにそのまま、ナラティブな形で組み込んでらっしゃるのがすごくいいなと思っています。話を抽象化してしまうと、せっかく10分とか喋ったけれども、ちょっと自分の話したことと違うと感じることもあります。ナラティブなストーリーを場合によってはそのままロジックツリーとセットで参照していただくというのがいいのかと思っております。もちろん、短く伝えるためにはワンフレーズに抽象化する方がいいのですが、そうするとやはり市民や事業者の方との距離感が空いてしまうところもあるので、そこはうまく工夫できるといいかと思います。

このあたりは、健康マネジメントの研究をされている慶應義塾大学の堀田聡子さんが重層的支援とか、地域包括ケアとか、認知症のデザインとかをかなりやっていらっしゃって、ものすごくたくさんのインタビューを持っていらっしゃるので、1度お話しされるといいかと思います。

もう1つ、誰を呼ぶのかというところなのですが、ガイドラインに書いていただいているように、市民の方はもちろん大事だと思うのですが、その上でそこにちょっと重なる部分もあるのですが、この10年ぐらいいろんな団体がロジックツリーを伴走しながら共有しておりまして、代表的なところでいうと、日本財団から5年ぐらい前にスピンアウトしたCIIF(一般財団法人社会変革推進財団)とか、或いはもう10年ぐらい活動されていると思いますけれどソーシャル・インベストメント・パートナーズとか、そういったところが伴走して、社会起業家だけではなくて地銀さんとか信金さんとか、いろんな企業が範囲としては自分の経営の中ですけれども、地域の関係について、分野としては交通やケアなどでロジックツリーを活用した取組をされています。機会があればぜひ、地域の文脈という中で参加されるといいのかと思います。

古賀委員: 井上さんへのご質問ですが、24ページの指標項目がそのまま、ロジックツリーに入るということではないという理解でよろしいでしょうか。

井上委員: はい、そうです。そのまま入るものではないと思っています。

古賀委員: 熟議の段階で、例えば人の主観的健康感がどれぐらい上がったのかということを測る際に24ページの項目がすごくわかりやすくてこれを基礎にWell-Being指標が作られていると思うのですが、この項目とロジックツリーとの関連がちょっとわかりにくかったなという印象がありました。どういう項目について何をもって評価するか、ということがもう少しわかりやすくなるといいと思いました。

井上委員: そうですね。このリファレンスの中に当て込んでいる指標については、当自治体が独自に取る必要がないもの、公的な機関とかが公表している指標を集めてきています。自分たちのロジックツリーの第1水準、第2水準等々でこの指標がそのまま使えそうだということであれば、使っていただければいいと思います。

そうでない場合も多いと思いますので、その場合は、例えばアンケートシステムを使って独自に取るとか、いろんなことが考えられるかと思っています。

関委員: 私から2点質問があります。1点目は、ペルソナ・ロジックツリーとリファレンス・ロジックツリーというのが出てきていて、この2つの違いをちゃんと説明しないと自治体の皆さんが混乱しそうだなと思いました。私の中でもどのようなときに使い分けるのかとか、両方のロジックツリーはどう関係するのか、もしくは独立して使うものなのかといった点がちょっと理解できませんでした。そこはもう少しご説明いただきたいと思ったところです。リファレンス・ロジックツリーは割と事業計画の方に近いので、理想的には総合計画の下の実施計画のタイミングとかで、使っていくのに適しているのだろうなと思いましたし、デジ田とかのような新規事業の検討や既存事業の棚卸しとかという場面で、事業評価の枠組みの中で使えるのかなと思ったのですが、ペルソナ・ロジックツリーは、事業サイクルでいうと、どのようなタイミングでどう使うのが理想的なのかということを知っておきたいということが1点目の質問です。

もう1つは、能美市さん宛なのですが、ロジックツリーをみてみることで部局を超えた事業の関連性がわかるということがすごくメリットだと思いましたし、何度も行ったり来たりしながらいろいろ考えるという時間自体が自治体の中で少なくなってきているので、そういう場を持てることは素晴らしいと思ったのですが、私が関わってる自治体だと、部局横断で人を集めて議論をする時間を作ること自体、相当ハードルが高いと思ったのですが、その点、最初から協力的だったのか、どのような方法で他の部局に協力していただいたのかというところをお伺いできればと思いました。

前野座長: はい。ありがとうございます。最初のご質問は井上さん或いはデジタル庁にお答えいただければと思いますがいかがでしょうか。

井上委員: ペルソナ・ロジックツリーの位置づけについては、南雲さんにお答えいただくのがよいかと思います。

南雲委員: はい。リファレンス・ロジックツリーに関して言うと、関さんのおっしゃった通りでいいと思います。つまり、これはWell-Beingということを一旦忘れてもいいぐらいのレベルに行っていると思います。要するに事業計画や中長期計画を作るとか、自治体で言うと総合計画を作るとか、まちひとしごと創生総合戦略を作るとか、民間の場合だと、合併とか、ポスト・マージャー・インテグレーションなどのときに、組織の立て付けをどのようにミッションと結びつけていくかということを考える際の棚卸しのツールのレベルまで行っちゃっていると思います。だから、直ちにWell-Beingいうよりは、Well-Beingの話をする前に、自分たちの体制がWell-Beingを推進する上で適した組織体制になっているかどうかを見直しましょうという意味ですごく意味があると思います。

ペルソナ・ロジックツリーの登場する場面はどこかというと、まさに能美市さんが、テーマを作るときに、誰のためにどんな価値を、と言ったと思いますが、これがペルソナ・ロジックツリーの出番です。第4水準について議論するときには、やっぱり人の像が頭に浮かばないと、どんな価値を提供するのか、どんなWell-Beingを高めるのかという議論ができません。サイクルでいうと、大きなサイクルでロジックツリーをまわしていくなかで、第4水準に差し掛かったときに、市民の顔を思い浮かべるのでペルソナ・ロジックツリーが登場する。それをそのままロジックモデルの作成に使えるというような接合になってきます。

このあたりは、まだ言語として整理できていないので、全体の最適化を図っていくためのリファレンス・ロジックツリーとそれをブレイクダウンしていったときに使うペルソナ・ロジックツリーとの関係をちゃんと整理しないと自治体の皆さんは混乱してしまうと思います。

前野座長: はい。ぜひ今のところは、まさにデジタル庁、井上さん、南雲さんで協力して、わかりやすい資料づくりに取り組んでいただくとさらに良くなると思います。井上さん、デジタル庁から付け加えることはないですか。

井上委員: 私からは大丈夫です。

鈴木(デジタル庁): 私も大丈夫です。

前野座長: では次、能美市への質問に回答をお願いします。

能美市: はい。能美市です。現状は、企画振興部デジタル推進課としてまとめたものであって、部局横断はこれから最後の仕上げ段階で進めていくような形になります。

ロジックツリーという考え方自体、市の職員に浸透しておらず、私達も当初は全くわからないところから、デジタル庁の支援を受けながら井上先生と話をしながら、こういった整理の仕方があるのだというところを学んだような状況です。市職員全体にこの考え方を浸透していくというのは、なかなかハードルが高いとは思います。ただこういう作業を通じて、特定の分野について、部局横断で議論することが事業を整理する良いきっかけにはなるのではないか、という感触を持っています。

関委員: ありがとうございます。よくわかりました。市長とか副市長レベルでちゃんと理解していただかないと、全市的に進めるのはなかなか難しそうですね。

前野座長: はい、よろしいですか。では次、南雲さんお願いします。

南雲委員: これは発展するために、みんなでどう力を合わせていくかっていうとこのアイディア出したと思っていただければいいと思うのですが、大きな組織をロジックツリーで最適化するためのイロハのイというところに踏み込むということは、全体としてプラスだと思っています。次の難しいところはKPIの設定の議論になります。ここはもう少しよく考えたらいいと僕は思っています。具体的には、第1水準から第5水準までカスケードダウンする構造でロジックツリーは作っていくのですが、水準間の線がクモの巣みたいに入り乱れている状況のままだと、下からKPIを足し合わせていって上までたどり着けるかというと、複雑すぎてコントロールできなくなります。ここは1回整理した方がよいと思います。

それから、第1水準から第5水準までに分かれるということは、普通は、組織運用上、その水準に応じた責任と権限は誰が持っているのかという権限論と紐つかないとアカウンタビリティが発揮できないという話になります。概念の整理とともに、責任と権限すなわち組織体制との紐づけという点を整理してあげないと、マネジメントコントロールシステムにはなりません。この点ももう1度、整理が必要だと思います。ただ、わずか1年でものすごいスピードでここまで来ているので、まだまだ時間はあると思います。これをみんなでやっていくと、Well-Beingが高くなる組織とは何なのか、Well-Beingが高くなるKPIの構造はどうなのか、というところに進化していくかと思います。

最後に、横串の話で言うと、ある県で今アドバイザーをやらせていただいていて、提言をして実行することになったのですが、Chief Well-Being Officerというポストを自治体レベルで持つべきだろうと思います。その人は、市長とか県知事の右腕であって、横串の専門家、つまりWell-Beingを高めようと思うと、組織横断、機能横断が発生するので、そこに責任を持つ責任者というような、組織の進化ということをそろそろ考えるべきだと思います。

第1号がもうすぐ生まれるので、それを見ながら、もしうまくいけばここでベストプラクティスの共有という形で、これを広めていくような形に持っていければと思っています。以上です。

前野座長: はい、ありがとうございます。おっしゃる通りですね。

村上統括官: 大きく3つほど総括的に申し上げて、そのあと皆さんで議論していただければと思います。

1つは鈴木の方から紹介いたしましたが、Well-Being指標活用ファシリテーターの紹介・派遣制度です。これは極めて重要なステップだと思っております。Well-Being指標もいよいよ100を超える自治体で次の普及期に入ってきておりまして、人を育てて回すための仕組みも動き出すということで、南雲先生はじめご尽力いただいた方に感謝するとともに、せっかく作る紹介・派遣制度がちゃんと使われないと意味がないので、ぜひ有識者の先生方にも、広く周囲の方々にお声掛けをいただけるとありがたいと思います。

同様にアンケート機能の方も、自治体からみるとアンケートするための調査費を確保するということだけで結構頭を抱えてしまう課題なのですが、ネットバイアスがかかるとはいえ、ほぼフリーコストでできるということも含めて、上手に宣伝していきたいと思います。

デジタル庁の事業のためだけに使うものでもないので、このアンケートプラットフォームを、将来的には、皆さんの研究とかソーシャルな取り組みなどにもお使いをいただければいいと思っています。また、システム的にもうちょっと工夫できたらといったことがあればご連絡いただければと思います。デジタル庁のデザインルールとかセキュリティ上の制約が厳しくて、先ほどの自由回答のところも今回は入れられないということになっていますが、そのあたりも使い始めてみて、やっぱりぜひ、という話があれば、来年度以降、少しずつ改善していけばいいと思っています。これが1点目です。

次に2点目ですが、リファレンス・ロジックツリーの資料の最後についているのですが、新たな政策サイクルを考えています、という話を簡単にさせていただければと思います。まだ、議論用のたたき台でありますが、実はこんなサイクルを念頭に置いて動いています。簡単に申し上げますと、Well-Being指標で分析をすると、注力すべき政策分野を抽出できるというか、議論しながらある種のコンセンサス的なものがつくれるのではないか。政策分野・テーマが特定できたあと、その分野の中でどんな政策を打つのか、どこに注力していくべきなのかということについて、部局横断的に見える化するというのが、今回お勧めをしているリファレンス・ロジックツリーの作業かと思っております。

政策評価のために作ろうと思うと、きっちりとしたロジックモデルを作らないと政策評価には使えませんが、このロジックツリーはどちらかというと、まさにロジカルシンキングのツールとしてお使いいただくものであって、ツリーの正確性よりもツリーを使った議論のプロセスの方に重点を置いていると考えていますので、その成果物としての厳密性を求めるつもりはありません。

今回、能美市さんも部局横断的なことも含めいろいろなことの気づきのきっかけになっていただければありがたいなと思っていました。その中で典型的には、デジ田交付金事業だったり、市としての、デジタルを活用して重点的に取り組むべき重要な事業郡などを抽出していっていただければと思います。ちょっと部分的にご紹介すると、能美市さんの場合、最初に調べてみると、そもそも予算事業だけで能美市の規模で1,500以上ありました。その中から、医療・介護のロジックツリーで関係するものだけに絞っても160ぐらい出てきました。第5水準とはこの160個を全部書くのですか?というところからまず始まり、しかも実際に並べてみると、予算事業は予算を取るための整理学でございますので、極めて具体的な話を1つの事業名にしている場合もあれば、ものすごくざっくりとした括りを予算事業名にしている場合もあります。例えば、デジタル庁のWell-Beingの事業で言えば、Well-Being指標関連の分析事業全体を1つの事業として大きく括って1つの予算事業としていることもあれば、アンケートサイトを作るという具体的なシステム開発事業を1個の事業とみなすこともできます。

実は、このあたりの事業の粒度がバラバラでございまして、整理をしてみると、粒度だけではなく、同じ事業なのに、経緯の都合上別の部局に2つ似たようなものが計上されていたり、同じ予算事業のはずなのに、全然目的が違うものが共存していたりといったケースが見えてまいります。それに蓋をしたまま総合計画を作っていますので、ツリーを作ろうと思うときに、先ずはこれらバラバラな事業の整理を行わざるをえなかったというのが、最初に第6水準まで含めて膨大な数を南さんに作っていただいた経緯でございます。

それを一旦、粒度をそろえ、そこからもう1回、中分類、大分類、事業の効果などから、第6から第4水準という形で事業を整理してみると、見ていただいた2枚目にあるように、比較的すっきりした整理が見えてきました。今度は、その第4から第6水準と、リファレンス・ロジックツリーにある第1から第3水準との関係が一体どうなっているのかという議論が始まって、作った第4水準とリファレンス・ロジックツリーが提示している第3水準のアウトカムとの関係がよくわからないという話になりました。

そこで能美市の皆さんで大議論していただいた結果、実は第3水準をアウトカム、第4水準をアウトプットと言っていたのですが、できあがったものをみると、必ずしもそうなっていなくて、どちらかというと第4水準のところが施策の結果、市民個人に起こる変化や体験の変化、第3水準の方がそれを積み上げた結果、まち全体に起こる変化や体験の変化、どうもそういうふうに観念した方が、座りがいいねということを能美市の方自身が見つけてくれました。

今日ご紹介する時間がありませんが、実は井上先生がこのプロセスでISOが似たようなことをされていることを見つけていただきました。実は、Well-Beingのためのロジックツリーのリファレンスについて、ISO化された標準があったのです。この作業にぴたっと準拠しているというほどではありませんが、ただ、やはり彼らのロジックツリーの中でも、パーソナルなメンバーに対するインパクトと、その次にグループに対するインパクトという形で体系を整理しており、その意味で、能美市に発見していただいた第3水準と第4水準のすわりの悪さやその解消の仕方は、国際的にも似たようなことを悩んだ人がいたんだということがよくわかりました。

デジ田交付金のような重要事業があり、デジタルも例えば決済とか認証とかという基盤を、どういう事業の間で共有して、どういう事業の間でパーソナルな行動履歴も含めてデータを共有するのかという技術の選択をした後、実際にそれで生じた行動変容を計測する。実は、今、行動変容アプリを作っておりまして、別にデジタル庁のものでなくても良いのですが、ライドシェアの車に乗ったとか、健康政策の健康指導教室に参加したとか、いろんなプログラムに実際に参加しましたとか、政策に対して市民の皆さんの行動に生じた変化をリアルタイムで計測しようとしています。

この行動変容アプリを使って、実際に取り上げた政策に対して市民の客観的なアクションがどう変化をしたか、ということを計測できた上で、翌年度もしくは次のサイクルで、またWell-Being指標で主観的満足度の変化を図り、施策と行動変容の結果が、どのようにWell-Being指標上の評価を変えているかを確認する、という形で政策のPDCAサイクルを回したいと考えています。

もし実施した施策が違っていたのではないかという話になれば、改めてロジックツリー的分析をしていただくときに、ウェイト付けやロジックの紐づけを変えていただく、というような形で、市役所の全ての事業をこのモデルに載せるのは難しいと思いますけれども、とりあえず仮説としてこういうサイクルを回していくのを1つのゴールと考えればいいかと思っています。

最初は、それぞれの自治体の皆さんにこの5つのプロセスを同時に全部始めてくださいというのは難しいと思っています。Well-Being指標から始める人、ロジックツリーから始める人、行動変容アプリを先に使ってみる人、それぞれいろんな始め方のパターンがあると思うのですが、最終的には、これらの作業は相互に繋がっていく性格を持っているということを予告しながら、まずは目の前で取り組もうと思ったことをやってみてください、と考えております。これが2点目の話です。

最後に能美市で起きたこととその評価と今後の課題ということでコメントさせていただきます。能美市で起きたことについては、これまでに、事業粒度が不ぞろいでまずはそれを整理し、そのうえでどういうインパクトの論理につなげるのか、その時点で市民の変化とまちの変化という整理がしっくりときたというところまでご紹介しました。その上で、能美市さんは最終的に医療・介護全体でそれを第1水準から第5水準まで、全部綺麗に整理しろというのは、とても無理なので、デジ田事業の関連事業であるとか、この事業の関連事業であるとか少し第1水準で取り上げるスポットを絞ることによって第1水準から第5水準まで論理的関係が繋がって見えるツリーになりました、という段階まで来ました。

これについての今後の課題でありますけれども、ちなみに能美市の場合は期待以上にやってくれたのですが、大変ラインが良くて、まず市長さんがこの作業を全面的にやろうと最初からコミットしてくれました。それから部長経験者の参与が2人いらっしゃいまして、間に入っていろいろ立ち回っていただいた、直接手を動かしたわけではないのですが、この2人の存在は結構大きかったかと思っています。そのうえで企画調整のところで、次長さんとそれから担当課の課長さんが、極めてセンスよく、抽象的に何をやっているのかということを理解しながら、作業を進めていただきました。

さらに南さんという素晴らしい方がいらっしゃいまして、南さんご自身がこの分野についての政策の体験をたくさんお持ちでございまして、彼女自身の知見の中に、結構政策分野横断的なノウハウが頭に入っていたものですから、本格的に各部に広げて作業したわけではないのですが、ある程度彼女のところでたたき台を作ってそれをもとに議論することができました。その結果、ここまでできるのだったらといってぜひ政策評価に使いたいとこういう話になりつつある。今彼らには、こっそりロジックツリーとロジックモデルの違いとロジックモデルを作りたいのだったらこういうリファレンスをみたらいいという書類を差し上げているところです。

私も3回現地に行きまして、しっかりアシストして要所要所でこういうことじゃないかと井上先生と一緒にキーワードを放り込んだり、アシストしたりしました。

リファレンス・ロジックツリーを作るのが、医療・介護、子育て、防災、それから交通ということになっていますので、各分野1個ぐらいずつ、アシストの程度は下げるかもしれませんが、白坂研究室、井上先生以下のご協力をいただき、南雲先生ともご相談しながら、他の自治体についても、支援をしていきたいと思っております。
なお、先ほどご質問が出ておりましたが、ペルソナ・ロジックツリーとの関係ということについてもきちっとした説明が必要です。この言語化もさきほど南雲さんと井上先生からも、説明していただいた通りでございます。ある意味、両者は、それぞれ独立して使うものですし、同じツリーでも使い方や局面が明らかに違う。事前にとりあえずやってみる、という際には、リファレンス・ロジックツリーをお勧めしますが、やっぱり、もうちょっと緻密に、なぜこういう政策なのかということをちゃんと分析しようと思うと、このロジックツリーではそこまでの熟度に到達いたしませんので、次に進むときはペルソナ・ロジックツリーの手法等をお使いいただく必要があるのではないか、という2段階ステップになると思います。ただその辺の説明を含めてどうするかは、今後しっかり言語化しないといけないということで、南雲さんにもご相談させていただいているところです。

最後は、主観的な満足度とこの作業の関係です。先ほどのPDCAを見ていただくと、やっぱりどうしても客観的な数字に縛られる感じが前に出ますので、せっかく主観指標の世界を作り上げているのに、ちょっと客観の方にバイアスを起こすリスクがこのサイクルにあるのではないかということです。これについては2つのポイントがあると思います。1つは、先ほど古賀先生からもご質問ありましたが、このロジックツリーの各項目の中でKPIを貼り付けるときに、どの程度、主観的指標を活用できるかという問題です。

ロジックツリーのリファレンスの中に入れた指標集はそれぞれに使えそうな候補を上げているだけですので、あれがそのまま使えるものでないことは、井上先生からご説明があった通りでございますが、その中からこのツリーの中でも積極的に、特に第3水準のまちの変化のところは、積極的に主観的指標を取り上げていくことはできるのではないかと思います。

もう1つは最後の行動変容アプリで実態を計測した後、次のWell-Being指標の評価につなげるというところをどうやって意識をして進めていただくかということではないかと思っています。行動変容アプリは、本当に行動の変化しかとりませんので、客観しか取れません。その次にあるWell-Being指標の世界では、とりあえずその政策についてのアンケートではなくて、普通に今まで通り聞いてきた主観のアンケートをやるわけですから、その中で本当に主観指標の結果に何らかのインパクトと変化があったのかをしっかりと観測して、その中に因果関係があるのかないのかをちゃんと推測してくださいと。難しく言えば、そういうことになるのではないかと思います。

あとはそういう主観的な満足度の部分のところをさっきのアンケートツールで、独自の設問を追加できるようになっていますので、標準セットの51問に加えて、特に政策との関係でフォーカスしたい満足度絡みの質問については、その時点で次のサイクルのWell-Being指標の評価をするときに、市独自にその分野にフォーカスした設問を載せていただくといったようなことも考えられるのではないかと思っています。

この辺はすべてペルソナ・ロジックツリーとの関係も含めて、南雲さんや白坂研究室の皆さん、さらにはこの有識者会議のメンバーの皆さんにもぜひアドバイスをいただきたいと思います。そして、さらに具体的に良いものにしたものを次の有識者会議のときにご報告できればいいと思っています。

前野座長: ありがとうございます。というわけでもう全体のまとめみたいになりましたが、他にもまだ質問ある方いますか。

南雲委員: 村上さんのおっしゃることに100%賛成です。もうこれはみんなでやっていくベクトル合わせになっているので、今日は本当にいい回だったかと思います。僕の今感じていることを少し申し上げたいと思います。今日、内田先生が本当に一言だけ触れておられましたけども、自治体が自立的にやれるようにしましょうということが、実は、前野先生、内田先生、それから関さんとも話をしていた最初の起点だったと思っています。だからあまりに難しいものを作ってしまって、これが外部コンサルタントに丸投げになってしまってブラックホールになってしまうのはまずい、という点は、最初の合意事項ということで今一度、確認したいと思います。

自治体の皆さんがこのWell-Being指標を使って、自分たちで政策を作っていく組織を変えていくということを自立性、これこそ自己効力感だと思います。自己効力感は、前野先生の世界でよく出てくるWell-Beingの一番大きなファクターの1つだと僕は思っていますが、そういう成功体験を積んでいくためのツールになっていくと素晴らしいと思っています。そういう意味ではあまり難しいものをたくさん積み上げるというよりも、継続的にみんなが育っていく環境を整えていくというスタンスがとても重要かと思います。

それからもう1点、先ほどの主観のところはとても難しい問題を秘めていると思っていまして、もともと主観指標で、あなたは幸せですかという設問と客観指標をいきなりつなげようと思ったらうまくいかなかったという前野先生のご経験があって、24の因子に割ってから客観指標とつなげることによって連鎖が見えてくるということで、ここまで来たという経緯です。そこに至る過程で、160問の設問があったときには、その行動をしましたかというセンシュアスシティの質問を入れようとした時期がありました。これはつまり、公園の数が足りているとか、交通渋滞がないとかという客観の情報に、あなたは何回、何をしましたかという設問を挟んで、主観指標につなげていく。この環境→行動→思考という連鎖を考えてみて、それを1回単純化した(行動を省いた)というところに今立っています。潜在的には、行動実績と主観との関係が本当に整合的なのか、すなわち、バイオメトリクスから取れるようなデータと、それからアンケートで取れるような言葉・意識というものが、本当に整合的なのかという高次元な問題があって、それこそ前野先生が、仏陀と前野先生の比較で出てくるあれだと思うのですが、とても重要な課題を最後に解かなくてはいけないという認識を僕も持っています。

ただこれは、本当に世界的にものすごい実験をやっているということだと思うので、誇りを持ってやっていくことが大切かと思っています。以上です。

前野座長: 太田さんも手が挙がっていますか。

太田委員: はい、太田です。ちょっと違う観点なのですが、私は今、グッドデザイン賞の審査をやっておりまして、まだ途中なので具体的なお話はできないのですが、8月から5,500ぐらいの作品を見ています。定量的な数字はないのですが、Well-Beingのテーマが結構少ないなと思いながら見ていました。プロセスとしては、応募は4月ぐらいにあり、その前にいろんな説明会とかがあります。また来年2月ぐらいに次の応募に向けて、どういうテーマを出すかを検討するのですが、この説明会や方針策定会議というところで連携するといいかなと思っています。その理由は、5,500ぐらいの内容をみて思ったのが、いわゆるそのアジャイルとか、OODA(観察して方針決めて作ってみてまた変える)みたいなものが、ソフトウェアだけではなくて建築とか、化粧品とか、遊具とか、いろんなところに浸透しておりまして、その良さというのは、結構Well-Beingと相性がいいのではないかと思っています。それから今日、計画とか、施策をやった結果みたいな話がありましたが、実際に物とか事を作っていくなかに、Well-Beingの指標とか分析、或いは対話を通して出てきたことが実装されて、やはりなんぼだと思いますので、そういう意味でもうまく繋がってくるといいなと。グッドデザイン賞は一例ではありますが、国内だと7、8割、アジアでも6割ぐらい認知されているものですので、うまく繋がっていくといいなと思います。以上です。

前野座長: はい、ありがとうございます。皆さんいろいろなコメントありがとうございます。私も言いたくなったので少し話しますが、学問がどんどんどんどん細分化して、みんなよかれと思ってバラバラのことをしている結果、全体問題が解けなくなっている。だからそもそもの幸せに立ち返るべきだと思い、Well-Beingの研究を始めたという経緯があります。

省庁も縦割り行政というのは便利でして、縦割りにしておくとそれぞれは進むのでいいのですが、それが行き過ぎちゃったので、デジタル庁ができてやっぱり横串を刺して、そもそも何をやるかということに立ち戻らなきゃいけないということだと思います。

ロジックツリーもまさにそれですよね。人類の長い歴史の中で細分化したものをWell-Beingという非常に大きなもので統合しようということでして、我々は人類史上ものすごく大きなことの第一歩を歩んでいるのだと思います。ですから、いろいろな議論があるのは当然で、でも世の中も行政も学問もみんなもバラバラだったのを、統合していくという1つの道筋をつくれることができたら、それこそ本当にみんなが幸せな社会をつくれますよね。

分解、分解ばかりしたせいで、環境問題とか貧困問題とかこの全体問題が解けなくなっているわけですから、これをぜひここで議論して統合していく。そういう非常に大きくかつ重要な議論をしていると認識しています。そう考えると、ノーベル平和賞をもらってもいいのではと思うぐらいです。

これからも議論を重ねて、みんなでよいロジックツリーというか、もっと大きくデジタルでWell-Beingを実現するということをやっていけるのでないかと。そういう夢の広がった会議でした。皆さんご尽力本当にありがとうございます。発言いただかなかった方もぜひ同士ですから。ともにこの大きな世界を作っていくということをやっていければと思っています。

村上統括官: 今後のことですが、井上さんや南雲さんたちとさらに論点を整理しつつ、まず自治体への説明会を来週やらせていただきます。その上で、個別伴走とか、自治体の皆さんとも会話しながら進めていきたいと思います。今日ご参加の自治体の皆さんも、今日の議論を聞いた時点で質問とかアプローチがあればぜひ遠慮なく言っていただければと思いますし、説明会までにまとめて持ってきていただいてもありがたいと思います。また、その中からなるほどという指摘が出てきたら、ぜひ先生方にもご相談しつつ、実践のプロセスに入っていこうかと思います。

改めまして紹介・派遣制度とアンケート機能のご活用について、ぜひ先生方にもご協力をいただいてご紹介いただきたいと考えています。それからこの3ヶ月ぐらいで少し自治体といろいろやってみますので、まさに部局を超えた、分解から統合への政策の切り返しがちゃんと始まるかどうか。正直、自治体にとって部局横断は実は一番難しい課題でございます。この間、函南町長のところに行ってきてライドシェアを説得しようと思って、そのために朝日町の取り組み例として、みんなで未来!課という部局横断的な事業推進課ができたという説明をしたら、函南町長が真っ先に、朝日町の町長を尊敬すると。「ここにある『みんなで未来!課』、なかなかこれができないんだよ」とつくづくおっしゃっておりました。

分解から統合のところの1つの切り口が、役場の中の縦割り、その中に1つの関連する取組群への共有と思いを持ち込むという、それが実際のエリアにおけるWell-Beingの好循環を始めるときの起点かと思います。必ずしもすべての施策が市役所起点ではないかもしれませんけど、やっぱり地域社会における役所の力は影響力が大きいです。役所の中の縦割りをどう統合に持ってくかという切り口と運動論について、世界に誇れるような手法が見つけられたらと思います。かなり大胆かつ雑な議論ではありますが、ぜひご協力をいただければと思います。本日はどうもお忙しいところありがとうございました。

前野座長: はい、ありがとうございました。それでは大団円ということで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

以上