デジタル社会の実現に向けた重点計画
このページでは、2022年6月7日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を要約してご紹介しています。正式な内容はページ下部の資料をご覧ください。
誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を
2021年9月1日、日本のデジタル社会実現の司令塔としてデジタル庁が発足しました。デジタル庁は、この国の人々の幸福を何よりも優先し、国や地方公共団体、民間事業者などの関係者と連携して社会全体のデジタル化を推進する取組を牽引していきます。
このページでは、これからの日本が目指すデジタル社会の姿と、それを実現するために必要な考え方や取組について紹介します。
重点計画とは
デジタル社会の実現に向けた羅針盤としての重点計画
デジタル技術の進展によりデータの重要性が飛躍的に高まる中、日本で世界水準のデジタル社会を実現するには、将来の目指す姿を描き、構造改革、地方の課題解決、セキュリティ対策といった多くの取組を、関係者が一丸となって推進する必要があります。
こうした状況を踏まえ、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を策定しました。この計画は、目指すべきデジタル社会の実現に向けて、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を明記し、各府省庁が構造改革や個別の施策に取り組み、それを世界に発信・提言する際の羅針盤となるものです。
重点計画に記載した施策は、進捗や成果を定期的に確認しながらPDCAサイクルの徹底を図ります。そして、国民や民間企業の満足度や利用率などをデジタル化の進捗を大局的につかむ指標として把握・公開しながら、必要な施策の追加・見直し・整理を行います。
デジタルにより目指す社会
デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会
社会全体のデジタル化は、国民生活の利便性を向上させ、官民の業務を効率化し、データを最大限活用しながら、安全・安心を前提とした「人に優しいデジタル化」であるべきです。
デジタル技術の進展により、一人ひとりの状況に応じたきめ細かいサービスが低コストで提供できるようになり、多様な国民・ユーザーが価値ある体験をすることが可能となってきました。デジタルの活用で目指すのは、これをさらに推進し、誰一人取り残されることなく、多様な幸せが実現できる社会です。
デジタル社会の実現に向けた理念・原則
デジタル化の推進とその効果を最大化するために、以下に示す理念・原則をあらゆる施策や取組において徹底します。
誰一人取り残されない
個々人の多種多様な環境やニーズを踏まえて、利用者目線できめ細かく対応し、誰もが、いつでも、どこでも、デジタル化の恩恵を享受できる社会を実現します。
デジタル社会形成のための基本原則
デジタル改革基本方針で掲げているデジタル社会を形成するための10原則、デジタル手続法で明確化している行政サービスのオンライン化実施の3原則を、デジタル社会の実現に向けた基本的原則とします。
デジタル社会を形成するための10原則
- オープン・透明
- 公平・倫理
- 安全・安心
- 継続・安定・強靭
- 社会課題の解決
- 迅速・柔軟
- 包摂・多様性
- 浸透
- 新たな価値の創造
- 飛躍・国際貢献
行政サービスのオンライン化実施の3原則
- デジタルファースト
個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結 - ワンスオンリー
一度提出した情報は二度提出が不要 - コネクテッド・ワンストップ
民間を含む複数の手続・サービスを一元化
業務改革と規制改革
オンライン化を目的とせず、行政サービス利用者の利便性向上及び行政運営の効率化に立ち返って業務改革に取り組みます。さらに、デジタル化の効果を最大限発揮するための規制改革を行います。
クラウド・バイ・デフォルト
迅速・柔軟に情報システム整備を進めるためのクラウド・バイ・デフォルト原則を徹底します。クラウドサービスの利用を第一候補として検討するとともに、共通に必要な機能は共用できるように、機能ごとに細分化された部品を組み合わせる設計思想に基づいた整備を推進します。
デジタル化の基本戦略
デジタル社会の実現に向けた理念・原則に基づき、以下に示すデジタル化の基本戦略に沿って個別の施策を計画・実行していきます。
デジタル社会の実現に向けた構造改革
デジタル臨時行政調査会で策定したデジタル・規制・行政改革に通底する構造改革のためのデジタル原則に沿って、現場のデジタル化を阻害する規制や制度の横断的な見直しを行います。
デジタル田園都市国家構想の実現
デジタルの力を全面的に活用し、地域の個性と豊かさを生かしつつ、都市部と同等以上の生産性・利便性も兼ね備えた「デジタル田園都市国家構想」の実現を目指します。
国際戦略の推進
トラスト(信頼)を基盤とした国際連携の確立、国際標準の適切かつ有効な活用、諸外国のデジタル政策に関わる機関との関係強化、新興国等への情報提供や研修等の支援・協力を推進します。
サイバーセキュリティ等の安全・安心の確保
クラウドサービスの利用拡大などを通じて、利便性の向上とデジタル情報等の安全性確保を両立します。また、個人情報の保護、サイバー犯罪防止や災害対策に取り組みます。
包括的データ戦略の推進
行政が社会の基本データを保有・整備し、オープンなプラットフォーム(基盤)で利活用できるようにする包括的データ戦略を推進し、経済発展と社会的課題の解決を図ります。
デジタル産業の育成
クラウド技術の開発支援や次世代の計算基盤整備、ITスタートアップへの投資、未踏事業の強化、セキュリティ製品の基盤づくりなどを通じて、デジタル産業を育成します。
Web3.0の推進
ブロックチェーン等の分散台帳技術やデジタル資産に関する研究開発・利用環境の整備を行い、世界の潮流に遅れることなく、必要な施策を実施します。
目指す社会を実現するために施策を展開する6つの分野
「誰一人取り残されることなく、多様な幸せが実現できる社会」を実現するためには、目指すデジタル社会を様々な切り口から整理し、それぞれについて目指す姿、その実現に向けた手法、留意点と合わせて具体的な施策を展開・推進していくことが求められます。
ここからは、目指す社会を実現するための施策を6つの分野ごとに紹介します。その背景にある課題や目標を踏まえて、国、地方公共団体、民間事業者が連携・協力しながら各分野のデジタル化を推進します。
1. 継続的な成長
デジタル化による成長戦略
官民でデジタル技術とデータを徹底して活用し、力強く成長する社会を実現するため、官民がデータをやりとりできる情報基盤を構築します。官民の相乗効果を発揮することにより、新たな産業の育成と、国民の利便性の向上を実現します。
課題
新型コロナウイルス感染症対応で行政の非効率が顕在化しました。今こそデジタルを最大限活用した課題解決が必要です。
目標
データ活用や抜本的な構造改革により、ニーズやライフスタイルに合ったサービスが提供される豊かな社会を実現します。
主な取組
行政手続のオンライン化
スマートフォンで手続が完結することを目指し、行政手続をオンライン化する等の効率化を図り、国民にとってより便利なものにします。
(デジタルファースト原則)※デジタルで完結、紙不要
データを誰でも扱いやすく
国民が自らのデータを必要なときに素早く利用できるようにするため、また、府省間の連携を強めるための情報基盤を構築します。情報基盤は、扱いやすく標準化された形式・方法で活用できるようにします。
(オープンデータ原則)
(府省間ネットワーク)
官民の相乗効果を発揮する
情報基盤は、モビリティ(交通)・物流・取引等のデータも統合し、民間企業が活用できるよう一般に公開します。これにより、新たな産業の育成と、国民がより細やかなサービスを受けられるようにします。
(相互連携分野)
未来の経済成長に向けて
今後の日本の経済成長のためには電子商取引の推進が必要であり、それを支える制度や技術の整備を行います。また、デジタル上の資産などの新たな経済を創出するための調査研究を行なっていきます。
(デジタルトランスフォーメーション)
(Web3.0)
2. 一人ひとりの暮らし
医療・教育・防災・こども等の準公共分野のデジタル化
医療、教育、防災、こども等の国民生活に密着した分野のデジタル化を進め、データの連携と活用のための整備に取り組みます。これにより、個人のニーズに応じた最適なサービスが提供される、豊かな国民生活を実現します。
課題
暮らしのサービスは、様々な切り口から断片的・画一的に提供されており、一人ひとりに最適なサービスが提供されていません。
目標
多様なサービスをニーズに応じて自由に組み合わせ、暮らしをデザインできる社会を実現します。
主な取組
暮らしのサービスを柔軟に
医療、教育、防災、こども等の、国民の暮らしに関わるデータを連携することで、より個人のニーズに応じたサービスが提供されるようにします。
(準公共分野)
(包括的データ戦略)
データの利活用を促進
様々な分野のデータを官民を越えて連動させることが、国民の多様な幸せの実現に不可欠です。そのためのデータのオープン化(一般公開)と環境の整備に取り組みます。
(オープンデータ・バイ・デザイン)※行政データは公開を前提とする
連携の仕組みの標準化
現在、各サービスはそれぞれの事情に合わせて個別に設計されています。データの標準化やルール整備により、官民や分野を横断する連携を実現します。
制度の見直し
デジタル化によって目指す社会での新たなニーズを踏まえ、暮らしに関わる分野の制度や運用を継続的に見直していきます。
3. 地域の魅力向上
デジタル化による地域の活性化
共通基盤や情報インフラを整備し、地域行政を効率化します。地域がデジタル技術を活用して主体的に課題を解決することができ、地域の魅力を向上するための施策に取り組みます。
課題
アイデアや手法を展開し、地域の課題を解決するためには、情報インフラの整備と、地方のデータが全国とつながる必要があります。
目標
地域の課題が解決され、地域の魅力が向上する社会を実現します。
主な取組
業務を効率化する
地域行政における共通基盤を整備し、情報の扱い方を統一することで、地域行政の効率化を図り、地方公共団体が住民の必要とする行政機能の遂行に集中できるようにします。
(ガバメントクラウド)※国・地方共有のクラウド環境
(業務改革)
情報インフラの整備
デジタル社会の基盤となる情報インフラを広く国民が活用できるようにするため、有線と無線両方の高速通信網の整備を進めます。情報格差の是正や、遠隔地での勤務を支援することで、地域の利便性を向上します。
人材と課題をつなげる
地域が主体的に課題解決の提案を募集し、若年層の移住や新規ビジネスの促進に取り組みます。デジタル技術を活用して地域社会の力を引き出し、地域が自立して課題解決と魅力の向上を実現できるようにします。
4. UX・アクセシビリティ
誰一人取り残されないデジタル社会
デジタル社会の実現にあたっては、徹底的に利用者の視点に立ち、誰もが行政サービスを活用できるようにするための体制を作ります。それにより、これまで解決が難しかった課題が解決され、国民が豊かさを実感できるようにします。
課題
従来はできないと諦めていたことがデジタル技術の導入によって可能になる中、目指す社会のアップデートが必要です。
目標
誰もがデジタルを活用できることにより、課題が解決され、豊かさを実感できる社会を実現します。
主な取組
利用者視点に立つ
徹底的に利用者の視点に立ち、優れたサービス体験を実現するために、民間サービスとの連携も含めてシステムやルールを設計します。
情報機器に不慣れな人の支援
情報機器に不慣れな人でもデジタルを活用できるようにするための環境整備を進め、推進委員の取組を2022年度にスタートします。高齢者、障害者、こどもや在留外国人にも分かりやすく、誰もが使いたくなるサービス体験を実現します。
(皆で支え合うデジタル共生社会)
情報リテラシーの啓発
SNSの誹謗中傷や社会の分断といったデジタル社会の負の側面に対応する施策を実施します。デジタル社会における情報リテラシー(情報活用能力)の普及と啓発を官民両方から支援します。
根拠と効果の可視化
デジタル技術の導入は、心豊かな暮らしや社会の持続可能性の実現が目的です。それが本当に効果をもたらしているかどうかを、客観的な根拠に基づいて検証と改善を続けます。
(EBPM)※根拠に基づく政策立案
(Well-being)※心豊かな暮らし
(Sustainability)※持続可能な環境・社会・経済
5. 人材育成
デジタル人材の育成・確保
デジタル社会の担い手となる人材を充実させるため、様々な教育機会を提供し、人材が官民学の様々な主体の中で活躍し育っていくための、実効性のある対策を行います。
課題
デジタル化による改革のために不可欠な人材が、質・量ともに社会全体で不足しています。
目標
デジタル社会の担い手となる人材が、創造性を生かせる環境の中で活躍し、育っていく社会を実現します。
主な取組
情報教育の強化
デジタル社会に必要な情報教育を、学校教育から社会人プログラムまで、生涯にわたって学び直せる機会として充実させ、国民誰もが情報リテラシー(情報活用能力)を高めることができるようにします。
(リカレント教育)※生涯を通じて学び続けること
人材育成環境の整備
デジタル社会の担い手となる人材が地域や世界で活躍し、教育機関や企業から育っていくための環境を整備します。また、女性がデジタル社会で活躍するための支援を行います。
(デジタル人材育成プラットフォーム)
(女性デジタル人材育成プラン)
行政機関での人材確保
デジタル庁が中心となり、デジタル技術を専門とする人材が行政機関の中で活躍できるようにするために、官民を越えた組織間で人材の交流を行います。
(デジタル人材確保・育成計画)
6. 国際戦略
DFFTの推進を始めとする国際戦略
デジタル化においては、国際戦略の視点も重要です。「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の推進を始めとした国際協力と情報発信を積極的に行うことにより、デジタル技術の利用やデータの流通において世界をリードします。
課題
デジタル化による様々な課題が世界的に顕在化していますが、国際的な枠組みが複数存在し、整合性の確保が必要です。
目標
国際的に連携し、デジタル技術の利用やデータの流通に関し世界をリードする姿を実現します。
主な取組
自由なデータ流通
デジタル社会でデータが信頼できることを担保する仕組みが不可欠です。日本が2019年に提唱したDFFTの概念はその基盤となるもので、DFFTを国際的に推進します。
(DFFT)
国際的な情報発信
デジタル化による様々な課題に対して世界が保護主義の流れにある中、日本は技術やイノベーションといった中立的な価値観から、国際協力について世界をリードする情報発信を行います。
国際競争力の強化
日本の国際競争力を高めるため、人材の育成・確保や、デジタル関連技術の研究開発の促進を行います。また、国内企業・国外企業間の公平な競争条件の確保に取り組みます。
(イコール・フッティング)※公平性の確保
重点計画のこれから
一人ひとりの幸せを実現するために
重点計画に沿って施策を実行し、社会全体のデジタル化を推進します。また、計画内容を見直し、項目の追加や更新を行います。
✓デジタル庁が司令塔として取組を牽引
デジタル庁は、デジタル社会の実現に関する司令塔として、重点計画の策定や施策について主導的な役割を担い、関係者によるデジタル化の取組を牽引します。
✓政府全体の推進体制を強化
PMO等の体制の充実などデジタル化に関する各府省庁の推進体制を強化するとともに、デジタル庁において、求められる役割を適切に果たせるよう人員増強など体制の充実・強化を図ります。
✓デジタル・規制・行政を一体的に改革
デジタル臨時行政調査会を開催し、デジタル改革、規制改革、行政改革といった構造改革に係る横断的課題の一体的な検討や実行を強力に推進します。
✓地方公共団体や民間事業者との連携・協力
国民との接点の最前線に立つ地方公共団体職員の声を聴き、民間事業者の意識の啓発やプラットフォーム整備、情報共有、人材交流などを推進します。
✓重点計画は継続的にバージョンアップ
重点計画に記載した施策は、工程や指標(KPI)を可能な限り設定し、着実に進めます。そして、この計画に記載した理念・原則に基づき、必要となる施策等の追加や見直しを行います。
資料
概要(簡易版)
PDF(1,100KB) PPTX(165KB)本計画とデジタル社会形成基本法第37条第2項各号、及び官民データ活用推進基本法第8条第2項各号に定める記載事項との対応関係
PDF(92KB) XLSX(31KB)オンライン化を実施する行政手続の一覧等
PDF(1,693KB) WORD(349KB)統合版(令和4年6月7日閣議決定)
デジタル社会の実現に向けた重点計画(本文/工程表/別冊)(PDF/8,522KB)別表(施策集)
PDF(931KB) XLSX(143KB)
本ページ掲載内容の紹介資料
過去資料
デジタル社会の実現に向けた重点計画の過去資料は以下をご覧ください。
掲載内容について
重点計画について要約した紹介資料のご感想は、ご意見・ご要望よりお寄せください。今後の資料につきましても、皆様から声をいただきながら、よりわかりやすくお伝えすることを目指して参ります。