Web3.0研究会(第3回)
概要
- 日時:令和4年10月21日(金)13時00分から14時00分まで
- 場所:オンライン
- 議事次第:
- 開会
- 議事
- ご説明(草野絵美様)
- 質疑応答・意見交換
- good digital awardデジタル賞状について(事務局)
- 閉会
資料
議事要旨
日時
令和4年10月21日(金)13時00分から14時00分まで
場所
オンライン会議
出席者
構成員
國領二郎(慶應義塾大学総合政策学部 教授)
石井夏生利(中央大学国際情報学部 教授)
伊藤 穣一(株式会社デジタルガレージ 取締役 チーフアーキテクト、千葉工業大学変革センター センター長)
河合 裕子(Japan Digital Design株式会社 CEO、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 部長、株式会社三菱UFJ銀行 経営企画部 部長)
殿村 桂司(長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
藤井 太洋(小説家)
松尾 真一郎(ジョージタウン大学 研究教授)
デジタル庁(事務局)
- 河野大臣、大串副大臣、尾﨑大臣政務官、他事務局
議事要旨
有識者ヒアリングについて、草野様より説明。
- 「Fictionera」という名前の会社を今年の2月に立ち上げた。社名の由来はFictionとEra、物語と時代である。まさにWeb3.0、NFTは最大のフィクションであり、人類が楽しむことのできる物語として、クリエイターとユーザーが一緒に物語を紡いでいくという願いを込めて名付けた
- メンバーは、私を含めて2名。私のバックグラウンドとしては、3年間東京藝術大学で非常勤講師として生徒にコンセプトワークの授業や、ミュージシャンとしてSXSWなどの海外のフェスへの出演、メディアアーティストとしてアート作品をつくってSIGGRAPHに出展したりしてきた。
- NFTの世界に飛び込んだきっかけは昨年の夏休み、自由研究でNFTをやってみたいという8歳の息子の発言である。当時、ちょうどパンデミックで発表の場が失われ焦っていた時期にNFTのことを調べていたら、「ポケモンカードを買いたいから僕もやってみたい」ということで、一緒にコレクティブNFTを始動した。現在、250以上の作品がOpenSea上にあり、これまでの流通総額としては4000万円、単体では最大180万円で購入された作品もある。これが話題になり、40回ほどテレビで取り上げられ、多くのクリエイターがNFTを始めるきっかけになったと言われている。
- 息子の作品が話題になったきっかけは、NFTを保有している人たちが入れるDiscordのコミュニティーであった。Web3.0起業家の人やクリエイター、クリプトとカルチャーを愛する人たちのトークンコミュニティーの、FWB(Friends with Benefits)というDAOの中で有名になり、Zombie Zooの作品が売り切れた。その後、DJであるスティーヴ・アオキ氏が、3つの作品を当時のレートで累計240万円相当、6ETHで購入した。
- 息子の作品がNFTで話題になり、作品の公共財としての価値を高めていくため、あらゆるコラボレーションに奮闘した。Zombie Zooをアニメ化したいという本人の希望で東映の友人に話を持ち込み、東映アニメーションと共同で日本初のアニメNFTの映像を制作した。パンデミック世代ならではの考えで、ゾンビ化した動物たちとどのように人間が共存していくか、どのようにワクチンを作り世界をよくしていくのか、という考え方でアニメの原案を考え、プロモーションビデオも作成した。
- アニメーションの世界だけでなく、世界最大のメタバースプラットフォーム、The Sandboxと日本で初めてのNFT IPとしてコラボレーションし、来月か再来月頃にリリース予定である。
- 新しい事業として、Zombie Zooのホルダーと共同で「新星ギャルバース」というプロフィールピクチャープロジェクトを開始した。日本では、伊藤穣一氏や関口メンディー氏、海外ではマーク・ザッカーバーグ氏の姉のランディ・ザッカーバーグ氏や、NFT界の著名人は大体ギャルバースを保有している。
Web3.0用語で、僕たちはうまくいくという意味のWAGMIという言葉があるが、そのWAGMIを倣って、WAGMA「We're all gonna make an Anime(みんなでアニメを作る)」という合い言葉を基にいろいろなコミュニティーに毎日営業を行い、魅力を伝え、あらゆるコンテキストがいろいろなところに伝わって、8,888体売り切った。絵を描いているアーティストは別途いて、私はコンセプトワークなどを担当している。 - ギャルバースアート祭りというファンアートを開催しており、250のファンアート作品が世界中から集まっている。ファンアートコンテストでは単なる二次創作だけではなく、多くのNFTと同様に、ギャルバースのホルダーには「ギャルバースに関するNFTを作り、それを利益にしていい」ということを今回推奨した。まだNFT界隈に知られていないが、アートに挑戦してみたい人がギャルバースのアートを作り、買ってもらうなど盛り上がりを見せている。ファンアートを盛り上げて、それ自体ファンエコノミーとして動かしてくというのはNFTの王道である。
- Web3.0領域におけるIP保護、詐欺対策について大きな課題を感じており、偽物のNFTがかなり出品されている。例えばジブリの絵をそのままトレースして別の名前で売っているものが多く存在しており、ジブリが作ったものだと思い込んだ海外の方がNFTを購入する事例があるなど、日本側としても認識する必要があると感じている。
- 日本ではまだ起きてはいないが、お金が集まったら運営者が持ち逃げするラグプル(Rug pull)と呼ばれる詐欺目的のプロジェクトがあり、詐欺プロジェクトが多いとNFT全体が疑われる恐れがある。DeFiやNFT、DAOなどの事業者の意見だが、何が法的に問題なのかなど、Web3.0のリテラシー向上のための情報整備が追いついていないこともあり、リテラシーが低い。そのためクリエイターも参加しづらく、詐欺に騙される可能性も高いため、新しいことを始めたい人のためにも環境が整備されると有難い。
- ギャルバースの二次創作コンテストなどを通じ、日本には非常に素晴らしいアーティストが多くいるが、海外に挑戦する人がすごく少ないと感じており、そういう人がもう少し増えていくことが望ましい。アーティストの育成やインキュベーションのような取組みは政府主導で一緒に進めていきたい。
- その他、アイデアとして、NFT全体が詐欺と思われる余地があるため、政府機関や業界団体における認証プログラムのようなものがあるとよいのではないか。
- 今回、NFTの日本の団体の様々な方にヒアリングして課題点を整理した。意見として多く挙がったのは、事業として何が法的に問題なのか分からないことや、同じ外見で複数のNFTを発行する場合、暗号資産に該当するのか分からないということがあった。
構成員からの質疑及び草野様からの回答において、主に以下の発言。
構成員: NFTに関して、特に永続的なエコシステムを作る端緒にあると思っており、政府によってNFT認証プロジェクトなどをやってほしいというところが引っかかった。最初の発言で、「クリエイターとユーザーが一緒に物語を紡いでいく」という素晴らしい言葉があったが、詐欺か詐欺でないかをより分け認証や格付けを行うことは政府の役割ではないと思う。逆に言うと、政府の認証により何らかのお墨つきを与えるということを言っているのではないかと思うが、ブロックチェーンも含めて、このWeb3.0の動きというのは、ある種のパーミッションレスイノベーションという、誰かに許可を得ずにイノベーションできるというところが極めて大事な世界観なのではないか。
政府機関の認証を得ることは、クリエイターとユーザーと政府が一緒に物語を紡いでいく可能性があり、これは恐らく本来創りたい世界観と違うのではないか。詐欺に関しては他のケースと同様、警察や司法が関与していく必要があるが、これをもう少し丁寧に突き詰めないと、パーミッションレスイノベーションを目指していた方向性の逆で、パーミッションレスイノベーションの自殺になってしまうのではなってしまうのではないか。構成員: このエコシステムを永続させるときに、信頼を得るためにお金を支払うという意味では実は大きなマネタイズのポイントになっており、この点を政府に手放すのは逆にもったいないのではないか。認証に関するテクノロジーや仕組みをユーザー主導で、クリエイターの協力も得ながら作っていくということが、このエコシステムをもともとの理想のまま強くするということになるのではないか。
構成員: 例えばNFTや暗号資産でも、詐欺のような手口というのは意外とツイッターに早く出ていて、それを見たユーザーが早く探知して情報が拡散する。ユーザードリブンでそこにテクノロジーで加わったほうが早く対応できるし、よい自衛ができるのではないか。そういうRegTechやSupTechなど、ユーザードリブンで自浄していくようなテクノロジーを備えることにより、Web3.0のエコシステムを永続させられる方向に進んでいくのが良いのではないか。そういう仲間づくりも含め、その辺の方向についてご意見を伺わせていただきたい。
- 発言者: 人が増えないと、エコシステムもなかなか生まれないというところがあり、感覚的には詐欺プロジェクトをこれは詐欺だと話している方が少なく、広がっていないと感じる。また、海外ニュースで詐欺と話題になっていても翻訳する人がいないという印象がある。詐欺をなくすテクノロジーをより培っていくなど、政府機関認証ではないのではないかと、話を聞いていて感じた。
構成員: 大きく分けて2点ほどお伺いしたい。
構成員: まず1点目は、懸念される法的な問題として、具体的にどのような領域のものが心配、懸念されるのか。詐欺的なコンテンツが載ってしまうことと、著作権のライセンスか。実際にWeb3.0の世界において、特に気をつけておいたほうがいい法的な課題は何かをお聞きしたい。もし海外の人たちとトラブルが生じた際、どこの国の法令を適用して、どこの国の裁判管轄になるのかという話まで発展しかねないため、紛争解決手段としてどのような仕組みがよいかについて、もしお考えがあればお聞きしたい。
構成員: 2点目は、政府が認証に関わってしまうと、望ましい世界観が実現できないであろうというのは先の指摘と同意見。ただ、認証は政府が関わらなくても、一定程度コンテンツの信頼性を維持するために民間主導で認証の仕組みを作っていく手法はあるのではないか。その際に誰が何を認証するのか、どの段階で何を認証するのかを詰めておく必要があると思われる。例えば、コンテンツの信頼性を担保するフェイクニュースのファクトチェッカーに似た仕組みがあると望ましいとか、市場に乗せる前にNFTの信頼性を担保する仕組みとして、具体的にどういうものがあるとよいかについてお伺いしたい。
- 発言者: 非常に難しい問題で、NARUTO NFTのようなものが何度も出ては消えるということが起きている。キャプテン翼は詐欺NFTが出た際に、公式でNFTを出していないという内容を英語と日本語でそれぞれツイッターを発信していた。少年ジャンプに似せた少年ジャンクというNFTが出た際も、出版社が通報したらすぐにOpen Seaが対応していた。法的にどこの法律で裁かれるかなど、コンテンツの信頼性を担保するための対策までは考えられていない。
構成員: 詐欺の種類は違うものの、一時期メールの9割以上がスパムだった時代には、法律を作るなどの動きがあったが、たくさんのベンチャーがスパム防止のテクノロジーを作り、プラットフォーマーたちがいろいろな規格を決め、結局、民間側で大胆な法律を通さずに直せた。今回、NFTのスピードに少し遅れてはいるが、このようなフォージェリ防止の会社が出てきて、そもそも偽物やコンテンツが似ているようなものは、プラットフォームやマーケットプレイスがミントできないようにするとか、買うときでも偽物かどうか判別するとか、これはフィーチャーとしてもどんどん出てくるのではないか。これはお金儲けのためにみんな作っているし、プラットフォーマーたちも訴えられたくないから一生懸命そのような機能を増やしていく。これは世界のルールで日本では分からないが、基本的に盗品を所持していると、盗品と知らなくても買った側に責任がある。これはもちろんプラットフォームもそうだが、アート業界でも盗まれた作品を持っていると取り上げることができる。つまり本来であれば偽物のNFTは、買う側にも多少義務があったりする。NFTは実際には流通されないため、リアルワールドのいろいろな法律をもう少しアプライしやすく、RegTechのような法律と新しい技術を合わせるとまたいろいろなことができると思う。認証やKYCなどは国の意見が必要であるため、民間会社と国とアーティストとユーザーが、まさにこの勉強会のように問題提起しながらディスカッションをしながらクリーンアップしていくことが望ましい。
構成員: もう1つの論点として、そういうものが越境して流れるような時には、国の法律ではできなくて、結局プラットフォームのルールに依存してしまうのではないか。国の統制は利かない世界に行ってしまうのではないか。
構成員: ポイントは2つある。1つは国の法律対応は遅いので、今激しくいろいろなものが変わっている時に法律を作ってしまうとずれてしまう可能性があるので、あまり急いで国の法律を作らないというのが1つ。2つ目は、NFTは、ロイヤリティーをアーティストに払うのがよいところだが、最近ロイヤリティーを払わなくてもいいプラットフォームが出てきており、かなりプラットフォームとアーティストの信頼関係が裏切られた感じがある。NFTのロイヤリティーを支払わなければならないという法律はない。非中央集権型でプラットフォームがバッドアクターかをグループで議論した時に、誰がポリシングして、どういうリングで話すかというガバナンスで面白い話が出てきている。プラットフォーマーに任せられるのか、市場原理に任せるとみんなベストプラクティスになるかどうかはまさに問われているところで、ご意見を伺いたい。
- 発言者: NFTもいろいろな使い方があるが、ユーティリティーについて多く議論されており、ただのJPEGではなく、それをステーキングするとコインが貰えて儲けられるとか、転売できるとか、そちらに目が行っている。しかしNFTアート自体の最大のユーティリティーはアートを楽しむことや、作家に対してクラウドファンディング的に、次の作品に対して期待を込めて購入される方が増えたほうが望ましいと思われる。アーティストに還元されなくなってしまうと、購入する人は少なくなってしまうのではないか。
- 発言者: 今はまだNFTをどう使っていくか、様々な模索をしている最中で、他業種の人が入って、実際ロイヤリティーは何のためにあるのかというところを考えると、アーティストに還元されていくものが残っていくことが望ましいと思っている。
構成員: アーティストの育成について、アーティスト側のご意見を伺いたい。金融の立場としてどうクリエイターを支援していけるか考えながら、具体的に何をすればアーティストの方々は喜んでくださるのか迷いがある。グローバルに活躍できるNTFアーティストの育成と支援がまだまだ足りないとあるが、公的機関や金融、投資家からどんなことを期待されるか。
- 発言者: NFT事業やNFTに挑戦してみたい方に対し、情報の整備がまず必要であると思う。始め方についても教育していく必要がある。絵しか描いていない人がより挑戦しやすいインキュベーションのような、マーケティングとかクリプトに興味がある人と絵が描ける人とマッチングしてプロジェクトにするなどの仕組みができることが望ましい。
- 発言者: 文化庁が実施しているメディア芸術の育成プログラムや、既存の芸術分野のサービスに対してNFTの講義を入れるなどをやってもよいのではないか。NFTを始めたおかげでクライアントワークをせずに、アートだけで食べていけるようになった人がいる。Google翻訳などを使って発信するなど、そういう人が身近にいて刺激し合えるような環境になれば、挑戦する人も増えるのではないか。
構成員: NFT周りのアーティストの育成策とか、リテラシーの向上をさせるとか、そういうことが必要なのではないかと提起があったが、文化庁的に今取組というのはどんなことをお考えになっているか伺いたい。
構成員: 文化庁の若手クリエイターの育成支援では、例えば専門家からのアドバイスや、技術提供をはじめとした育成支援、制作費の支援、そういったことを採択した企画に対して支援している。現在のところ、NFTに限った支援はないが、今後NFTを活用しながらより多くのアーティストの方々の活躍の場面を作ることは大変大事なことだと思うため、これから充実させていく必要がある。
- 発言者: Web3.0に挑戦したい、海外に向けてギャルバースのようなプロジェクトを生み出したい起業家は多くいるため、そういう方とアーティストの方のマッチングができるとより加速するのではないか。
- 発言者: NFTは、絵を売った後、そのユーザーにどうNFTをホールドしてもらえるか考えていくが、ゲーム性を足していくところが日本のコンテンツに触れている方は得意なのではないか。アニメ、漫画だと、トップのNFTは大体アニメインスパイアなど、絶大な人気があるはずなので、海外のNFT市場で、日本のチームは強いと認識されると一気に世界が変わるのではないかという希望がある。
構成員: 前提として、著作物がNFTに紐づいている場合は、通常の著作物一般と同様に保護される。その上で、NFTの取引によってコンテンツに関するどのような権利を得られるかに関しては、NFTマーケットなどのサービス利用規約や本人同士の契約に依存する。この場合は、当然双方が事前に確認することが大事であり、基本的な部分をしっかりと理解してもらうような普及啓発が大事である。
構成員: 実際のところは、まだこの話も走り始めたところであり、今の時点で、まだユースケースが整理されて分かりやすい形になっていないところもある。今の時点では、具体的な事案を見ながらクリアしていくということを積み重ねていくことが大事ではないか。
構成員: 日本人が海外マーケットで挑戦できる環境とあるが、海外マーケットとはどういったイメージのものか。NFTを作ってOpen Seaに載せるだけであれば、海外マーケットや日本マーケットはないと思うが、結局コミュニティーにリーチしてバズらせたり、もしくはNFTから周りに付随するいろいろなメディアに拡散していく過程で、日本だけでやるより海外というイメージなのか。海外マーケットというのがどういったもので、どういったものが今足りなくて、どういったものがあれば、より日本人が海外に出て行けるのかという辺りを教えていただきたい。
- 発言者: 海外マーケットというのは、ここで言うと英語圏という意味合い。ギャルバースを売り切ることができたのはアメリカが大きいと思うが、NFTを、英語でやり取りしている方、メインストリームの欧米圏の方に購入いただくのが大きいのではないか。
構成員: 正確な数字はないが、個人的な経験からすると圧倒的にアメリカが多い。アメリカは今、一生懸命規制をしようとしているが、プロジェクトを見ていても、8~9割英語なのではないか。
- 発言者: 言語的なハードルによってトレンドの移り変わりが激しく、今こういう売り方をしないと売れないというものが結構出てきている。NFTを始めたばかりの時はNFTの売上げで何をしてくのかを示したロードマップがなくても売れていた時代もあったが、今はロードマップを出さないといけない文化にはなっている。日本だと移り変わりをキャッチアップするのが難しい。
構成員: 1点物のアートを販売する、または体験を販売する場としてOpen Seaを代表とするNFTがモデルを提供し始めていると思うが、小説は1点だけ売れても全く意味がなく、100万円で1点売れるよりも100円で1万点売れたほうがいいアートである。複製する数がとにかく増えたほうがいい形の活用ができるようなNFTのマーケットあるいは、NFTを利用するというマーケットの話を聞いたことがあるか。小説だけでなく、音楽も一回性もある演奏という体験を1回だけ販売するということできるが、大量に流れてくれるという、コピーされた時の価値というものが強い芸術もあるので、活用する手段を聞いたことがあれば教えていただきたい。
- 発言者: 音楽NFTを出す時に、広く届けたいのになぜNFTにして1点物にするのかという考えに陥ったりもしたが、NFTのIP自体が広まれば広まるほど、8,000体にしかないギャルバースみたいなものの価値が上がってくる。ギャルバースがテレビシリーズになって、NFTを触っていない人にも知られるようになると価値が上がる、Zombie Zooがニュースに出ることによってZombie Zoo自身の価値が上がるので、別のものとして考えていくのが望ましい。もう1つの視点として、NFTホルダーがそのNFTを活用して新しいIPを作っていくという考え方が多い。例えばBored Ape Yacht Clubという一番有名な猿のNFTも、購入者が猿のマークを使って、新しい会社やその看板を使ったハンバーガーショップを始めたりしている。また購入者は、1000万円以内であれば二次創作でグッズなどの作成や販売が許可されていることが多い。購入者が作品の二次創作で広めていく話や、作品の主人公にそれぞれNFTをつけておき、そのNFTを保有している人は、主人公のキャラクターに関連するNFTがまた貰えるような仕組みにするなど、広く届けるマーケティングとNFTの存在価値を分けて考えて、相互に影響し合っていくと考えるのがいいのではないか。
ここでヒアリングが終了。事務局より、デジタル賞状などの発行の取組みについて説明。
- 「デジタルの日」や「デジタル月間」に合わせて、デジタル庁では様々な取組を行っている。その中の一つとして、デジタル化に貢献している個人や団体などを表彰するgood digital awardというものを実施しており、この賞状をNFTとして発行してはどうかという提案を有識者の方からいただいた。この研究会についても、今、DAOをどうやってつくるかというところを鋭意取り組んでいるところだが、今後の検討の参考になる部分もあるかと思い、good digital awardのNFT発行について紹介させていただく。
- Verifiable Credentialsと譲渡不可NFTを組み合わせたデジタル賞状の発行について説明。
- 今回リリースを予定している仕組みだが、good digital awardの賞状をデジタルでも発行する。以下の要件を満たす形で実装。
- デジタル庁が発行した賞状であることを電子的に証明ができる。
- NFTとしても発行することで、受賞者のウォレット経由で賞状が確認できる。
- できるだけWeb3.0らしい分散型の技術を採用する。
- 世界標準の仕組み、オープンな技術を採用する。
- ユーザー体験だが、本システムによって、サイト上で、W3Cの標準形式で認証済みの賞状の画像を表示可能。また、こちらからお送りするウォレット経由でログインをしていただくことで、NFTのマーケット上でこの賞状をNFTの形で表示することができる。
- 今回中心となった技術は、Verifiable Credentialsというもの。こちらは内容の検証がオンラインで可能な自己主権型のデジタル証明書と言われているが、W3Cが提唱している標準規格になっている。発行者、今回の場合はデジタル庁が、保有者、すなわち受賞者に対して発行した証明書というのを、第三者である検証者が検証できる仕組みである。第三者のサイトからでも確認が可能という形の技術。
- 今回、VCを実装する技術としては、Blockcertsというものを使用。こちらはMIT Media LabとLearning Machine社が共同開発したブロックチェーン証明書の標準規格になっている。W3C標準のVC規格に準拠しており、今回発行したVCは別のサイト、Blockcertsなどでも確認ができる仕組みである。
- これらの技術を選定した理由は、ユースケースにマッチしていること、オープンソースであること、世界的に利用されていること、また、国内先行事例が幾つかあり、特に千葉工業大学の仕組みがオープンソース化されており、こちらをデジタル庁でも採用した。
- 技術的バックグラウンドとして成り立たせるものの1つとして、DID、分散IDというのを使用している。具体的にはdid:webというメソッドになるが、それを使用して、デジタル庁のドメインが発行した賞状であるということを示すために、このIDをドメイン配下に置いている。そして、Verifiable Credentialsの仕組みを使って、このドメインから発行された証明書であるというブロックをイーサリアムのチェーン上に書き込むことで検証を可能にしている。
- 譲渡不可NFTという点については、デジタル庁のウォレットから受賞者のウォレットにNFTを発行して、譲渡不可な仕組みになっている。NFTの中のメタデータにBlockcerts用の検証のサイトのURLも書かれている仕組みになっている。
- デジタル庁が発行した賞状であるということを証明できる。これはBlockcertsとDIDの仕組みで実装をしている。また、NFTとしても発行することで、受賞者のウォレットでも賞状が確認できる。こちらは譲渡不可NFTというのを発行し、デジタル庁のウォレットから受賞者のウォレットにトランスファーをして、そのウォレットのキーを受賞者に配付をするという形で実現している。また、できるだけ分散型の技術を利用すべく、このNFTのファイルやVCのファイルというのは、IPFS、これは分散型のファイルシステムだが、その上に配置をしている。そして、世界標準の仕組みに合わせる。これはW3C推奨の自己主権型の証明書、Blockcertsというものを採用している。これ自体がオープンソースになっており、元の千葉工業大学のものを参考したが、このデジタル庁のGitHubでも、我々が構築した仕組みのソースコードを公開していきたい。
- 補足をすると、実際に賞状を発行するところをやってみた中で、例えば多くの受賞者の方がまだウォレットを持っていないということや、DIDのファイルをデジタル庁のサイトに置くので、サイトがなくなると検証ができなくなるということ、NFTは永続的に参照できるところが大事だと思うが、今回、コンテンツをIPFSに置いているので、このIPFSの利用費を止めてしまうと消えてしまうといった課題を認識した。役所の事業は基本年度単位で行っており、デジタル日の委託事業の一環でやっているため、早ければ来年度のどこかで消えてしまうかもしれないため、消えないようにどうするかというところも、検討を始めている。実際にやってみなくては分からないことが多々あるということを日々実感しながら取り組んでいる。
- 次回の研究会は、10月25日火曜日開催予定であることを事務局より説明。
- 議事要旨は、構成員の皆様に内容を確認いただいた後に公表させて頂くことを事務局より説明。
以上