本文へ移動

2023年度デジタル庁情報システム調達改革検討会のフォローアップ

概要

  • 日時:2024年2月6日(火)16時から17時まで
  • 場所:デジタル庁共用中会議室
  • 議事次第:
    1. 開会
    2. 議事
      1. 2023 年度デジタル庁情報システム調達改革のフォローアップについて
      2. 自由討議
    3. 閉会

資料

関連政策

調達における公平性・透明性の確保/新技術を活用するための調達改革

議事概要

日時

2024年3月12日(水)16時から17時まで

場所

デジタル庁共用中会議室

出席委員

梶川委員、有川委員、川澤委員、木村委員、坂下委員

議事概要

デジタル庁門馬研究官からの冒頭挨拶の後、事務局より、資料1に基づき、提言施策に対し今年度実施してきた取り組み成果、難易度の高い取り組みにおける主な課題や次年度以降の施策の進め方等について、概要説明を行い、各委員による自由討議に移行した。
その後、梶川座長より討議の振り返りと総括があり、最後に、デジタル庁冨安統括官より本検討会での討議内容を踏まえたデジタル庁の今後の取り組み方針についてコメントをいただいた。

デジタル庁門馬研究官による冒頭挨拶

昨年度、第7回デジタル庁情報システム調達改革検討会において最終報告書のとりまとめを行ったところである。今年度は、同報告書で示した5つの施策の方向性に沿ったかたちで各種取り組みを実施してきた。本日はそのフォローアップとして、この1年間の取り組みの実施状況や重要な課題と認識している点等をご報告させていただき、今後の方向性等について様々な観点からご示唆をいただきたい。また、今回は、主な関連業界団体にもヒアリング調査を実施し様々なご意見・ご要望を頂いた。本日の報告・討議内容を公表し、公共における情報システム調達改革の一層の推進に役立てるとともに、デジタル庁の取り組み報告とさせていただきたい。

事務局からの概要説明後、各委員からの主な意見は下記のとおり。

自由討議

  • 昨年度の最終報告書で示した5つの施策の方向性に沿って、全体的に順調に取り組みが進行していると評価できる。
  • 調達仕様書の雛形整備、相談窓口設置、ベンダ―ロックイン防止のためのチェックリスト導入、業界団体との意見交換や情報共有について、着実な進行を見せている。
  • 一方で、デジタルマーケットプレイス(DMP)の実証実施、アジャイル開発の取り組み、損害賠償金額の上限設定検討など、比較的難易度が高い課題については、まだ道半ばという印象である。限られた時間と人員体制の中、多くの課題への対応を求められているため致し方ない部分もあるが、今後、難易度の高い課題についても必要性が認められるものは重点的に取り組むことに期待したい。
  • アジャイル開発について、なぜ公共調達でアジャイル開発を採用する必要があるのか、アジャイル開発の目的・定義・制度設計等の一般的な開発手法との相違点、メリット・デメリット、外国を含めた先行事例分析等を進め、効率的・効果的な実施の在り方を検討すべきである。
  • 技術的対話についても、外国を含めた先行事例分析等を進め、効率的・効果的な実施の在り方を検討すべきである。
  • 損害賠償金額の上限設定やアジャイル開発における準委任契約について、民間契約においてどのような趣旨や狙いで行われているか把握し、それらが公共契約に当てはまるのか、またはどのような点に違いがあるのか等分析し、公共契約における導入の必要性や理由を明確にしながら、法的検討を進めていくと良いのではないか。
  • 取り組み全体の方向性は違和感ない。
  • アジャイル開発の環境整備について、初歩的だが重要なのは、プロジェクト初期のリスクの洗い出しやオンライン会議で顔出しをしてコミュニケーションを充実化すること等の取り組みである。公共調達では大規模なプロジェクトでもプレゼンも無く提案書の確認のみでプロジェクトが開始されることもあるため、プロジェクト開始時のコミュニケーションを十分に行う必要がある。この点について発注者側に認識していただくため、アジャイル開発の実績を踏まえ、既存のガイドラインに加筆すべきである。また、事業者側にもプロジェクト当初におけるコミュニケーションコストの必要性について認識いただくため、調達仕様書にも明示すべきである。
  • 当初から要件定義に係る要員を多めに確保すること、要件定義や目標設定等を言語化する取り組み等が重要と考える。ウォーターフォール開発のように、きちんと明文化しないとしても、アジャイル開発でも要件定義にもう少し時間を割く必要があるのではないか。
  • アジャイル開発における準委任契約を選択したことによって成果物完成責任を問えなくなる点が課題として指摘されている。確かに課題だと思うが、一方で、理想的な開発成果を追求せずに完成することのみを優先し、低い品質のシステムが納入され、それを前提に以降の開発を進めざるを得ない状況もリスクである。何れにしても個々の契約で準委任契約のあり方を検討する方向が良いだろう。なお、発注者、受注者の双方でどのようにリスクを負担し合うべきかの検討は必要である。
  • 相談窓口の展開について、各省庁担当者の能力向上の視点が重要と考える。デジタル省庁が他省庁から全ての相談を受け付けるのではなく、各省庁で一次相談を対処し、それでは解決しない内容のみデジタル庁で受け付けたり、各省庁含めて相談担当者へのワークショップを開催したりする等、運用上の工夫をすると良い。
  • 調達仕様書データベースの整理は、非常に重要な取り組みと評価できる。サプライヤーの情報も追加すると、今後の案件の周知や企業の参画促進等に繋がっていくのではないかと思う。
  • 複数の施策が同時並行で進捗し、民間への取り組み発信が実現できている点も評価できる。調達仕様書データベースやベンダ―ロックイン防止チェックリスト等、以前から取り組んでほしいと考えていたものに、まさに挑戦していただいている。
  • アジャイル開発における準委任契約は、民間でも苦労している。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が作成した契約書の雛形はあるが、大型案件に適する内容という印象のため、小型案件に対応できる雛形をデジタル庁で作成すれば、準委任契約の利用促進に繋がるのではないか。
  • ウォーターフォール開発が望ましいプロジェクトもある。デジタル庁内で、案件特性に応じて、開発方式の適性を見極めるための基準を作ってはどうか。無理にアジャイル開発を選択することなく、また適切な案件で導入できるようになると良いし、基準によって発注担当者ごとの判断のばらつきがなくなるのではないか。
  • 損害賠償金額の上限設定に関し、リスク管理の課題は残るが、近年では民間企業の契約書でも記載されるようになってきており、時勢を鑑みても検討すべき時期だと考える。
  • 損害賠償金額の上限設定の検討については、出来るところから取り組むのが良いのではないか。大型案件と小型案件を同時に検討すると中々決まらないため、最初はあまり細かいことにこだわりすぎず、金額やリスクの低い案件で上限設定を試みても良いのではないか。
  • 官公庁案件に慣れていないスタートアップ企業と発注課とのやりとりに課題があるケースもあると伺っている。スタートアップの企業文化を理解し、適切な調達で、適切なスタートアップ企業を選定する必要がある。また、調達によっては従来のような大手企業の方が適切である場合もある。スタートアップ企業の参画はとても良いことだが、何でもスタートアップ企業が上回っているわけではないことに留意し、適性を見極めるべきである。
  • ベンダーロックイン防止のためのチェックリストの導入についても評価できる。一方、適切に活用できていない案件もあると伺っている。また、必ずしもベンダーロックインが悪いというわけではないため、数年間一者応札が続いた場合にどのように対策するか、随意契約の場合の価格交渉の在り方など、ベンダーロックインの先の話も交えながら対策を検討していくと良い。
  • 中小・スタートアップ企業等の参画機会拡大や一者応札等の成果としてグラフが示されているが、重要なのは数値の変化要因を言語化し、効果的な取り組みとして他省庁にも同様に取り組んでもらうことである。
  • アジャイル開発について、金融業界でアジャイルを導入し成功している事例がある。成功実績のある企業へヒアリングし、今の取り組みと照らし合わせることで、何が不足しているのか検討すると良いのではないか。
  • DMPについて、先行事例であるイギリスGDS(Government Digital Service)のシニア・レスポンシブル・オーナーやオーストラリアDTA(Digital Transformation Agency)等の海外事例と比較し、現状のデジタル庁の取り組みの達成状況を評価したうえで、次の取り組みを検討する必要があるのではないか。

追加意見

  • アジャイル開発の場合は、一括請負の契約にすることで受注者にリスクを負わせることになり、技術力の高い企業が参入しづらくなり、本来の発注者としての目的が達成されない。どちらかがリスクを負うという発想ではなく、発注者、受注者双方でのリスク分担をどのように進めるのかという観点で議論するとよいのではないか。
  • ベンダーロックイン防止について、大手以外の参入が難しい大規模且つベンダーロックインとなっている案件については随意契約を選択し交渉することでより効果的な調達とする方法もある。また一般競争入札を実施するとしても、例えば、若手技術者の配置を加点評価し、少なくとも同じ企業でも新しい技術者へのノウハウ継承や情報共有を進め、特定の企業及び技術者だけにノウハウが蓄積しないような発注の際の工夫をしてはどうか。

座長による振り返りと総括

  • まず、2023年度の取り組み評価及び今後の施策の進め方についてだが、昨年3月に取りまとめられた最終報告書で示された5つの施策の方向性に沿って、情報システム調達の目指すべき姿の実現に向けて着実に進んでいることが認められ、進むべき方向性はおおむね適切に進行しているものと評価できる。取り組みとして評価できる点としましては、プロポーザル型企画競争の試行開始や技術的対話方式の普及促進等の、新しい調達手法の活用、DMPの実証実施といった情報システム調達の発展に寄与する取り組みを積極的に進めたことが挙げられる。好板取り組みは効果をよく見極めつつ、引き続き拡大を図っていくべきである。また、調達仕様書の雛形整備や共有化、相談窓口の設置、変更契約のルール化、ベンダ―ロックイン防止チェックリストの導入等、適正かつ公平な調達手続きの実現のための基礎となるツールづくりが進められてきた。今後は、内部統制機能を活用しつつ、これらのツールが、適切かつ効果的に活用されているかその有効性を検証し、実効性の担保にも傾注していくことが期待される。限られた人材リソースの中で実効性の高い取り組みを実現するため、多岐に及ぶ短期施策・中期施策についてプライオリティをつけて実施していくことも重要であると考える。今回のフォローアップにおいて整理された「今後の取り組みの方向性」は、業界団体のご意見や検討会委員による議論・検討の結果を集約された総意を踏まえつつ、デジタル庁として如何に推進していくべきかを明らかにしたものと認識している。デジタル庁の情報システム調達への改革取り組みに向けた一層のレベルアップを期待したい。
  • 次に、難易度の高い施策や課題への対応についてだが、本日の課題としても議論された、アジャイル開発関係や損害賠償金額の上限設定の問題等、難易度の高い施策・課題のある施策の実現方法・アプローチに関する改善策については、取り組みの進捗を確認しながら検討を進めることが必要だが、中には立場の違いや考え方の違い等から必ずしも目指すべき方向性を定めきれない課題も存在する。こうした課題については、諸外国の状況を参考とし、各府省、関連業界団体、有識者等の意見を幅広く聴取するとともに、議論を深めることによりベストプラクティスを導き出せるようデジタル庁は積極的に関与していくべきと考える。
  • 最後に、調達改革取り組みの浸透・拡大への注力について。今日振り返った調達改革の取り組みの多くは、現時点においては、デジタル庁のみにおいて試行的に実施されているものとなっている。デジタル庁は引き続き新規施策の効果を検証の上見極めつつ、有効性が認められるものについては順次、各府省へ展開していくことが重要である。地方自治体へも同様に展開していくことが求められるが、調達手続きの根拠となる法令が異なっていることもあり、まずは、地方自治体等とのコミュニケーションを活発化し、有効な連携策を検討の上、その浸透を図るべきである。こうした情報システム調達改革の取り組みについては、業界団体を通じた民間企業との対話の窓口としても従来にはなかった取り組みであり、政府調達の適切な改善のためにその強化を図っていくこともデジタル庁は担っていくべきである。特にDMPに代表されるような新しい取り組みの施策を中心に、各府省、地方自治体、業界団体を通じた事業者等に対し、一層の積極的PRやサポート等その浸透に努めることを期待する。
  • こうしたデジタル庁の取り組みは社会的にも関心が高く、公共サービス提供の在り方を示す上で重要である。社会の皆さまにどのように役立つのか、広報活動を含めて進めていただき、各省庁・自治体だけでなくサービスを受ける国民の皆さまにも、着実な取り組み状況についてご理解いただいた方が、施策も進みやすいと考える。

デジタル庁冨安統括官による挨拶

  • 今回は、昨年度提言した施策に沿い、今年度実施した活動について取りまとめた。良いサービスの提供に結び付くことを目指し、一生懸命取り組んでいるところである。成果として良い変化も出てきているため、引き続きしっかりと取り組みを進め、各省庁や自治体にも波及できるように取り組んでいきたい。
  • DMPについて、実証的に事業者にSaaSを載せていただき政府が検索できるという段階まで進捗している。今後は会計や調達に係る制度に折り合いをつけていく作業がある。その上で、2024年秋以降に本格運用し、自治体の調達にも寄与するものにしたい。
  • デジタル行財政改革会議においても、将来的に生産人口減少等に伴う自治体職員の減少が想定されるため、地方公共サービス維持のためにもデジタル技術の活用が必須であると議論しているところである。デジタル庁も共通機能の提供等に取り組んでいきたいと考えており、自治体の調達でDMPを活用していただくことは、意義あるものと思っている。一方、自治体それぞれの調達の仕組み等もあるため、それらも考慮し、更なる検討をして参りたい。
  • 引き続き、ご指導のほどお願いしたい。

以上