アジャイル開発に関する有識者検討会(第3回)

概要

本検討会の概要は、アジャイル開発に関する有識者検討会をご覧ください。

開催情報

日時:
令和7年(2025年)11月26日(水)15時00分から17時00分まで
場所:
オンライン(Microsoft Teams)
出席委員:
狩野座長、杉井委員、岡島委員、佐野委員、木村アドバイザー

議事次第

  • 開会
  • 座長の挨拶
  • 議事
    • 前回の有識者検討会の振り返り
    • 論点と仮説の共有及び議論
    • 今後のスケジュール
  • 閉会・諸連絡

資料

議事要旨

事務局から前回の検討会の振り返り、今回の検討会での論点と仮説について説明があった後、討議が行われた。各委員からの主な意見は以下のとおり。

前回の有識者検討会の振り返り(官公庁特有の制約(予算))

  • アジャイル開発における条件として、「予算の融通性が不可欠であるか」に関しては、スコープが無限に広がるのではないかという不安要素について、整理していくべきだと考える。
  • 仕様の変更や、プロジェクトの作業スコープの調整は、実際はウォーターフォール開発の方が多く発生する傾向にある。アジャイル開発で変更が多いという先入観を取り除くべきである。
  • 民間でアジャイル開発を実施した際、予算を追加したことはあるが、アジャイル開発が原因ではない。一方、経験の浅いプロダクトオーナーや受託者が、プロダクトが求められた品質基準に満たないなどの問題が発生した時に、適切に判断や対処をできず、結果として追加予算が発生した経験はある。プロジェクトの作業スコープのコントロールを丁寧に行った上で、常にリリースをできる状態にしておく必要がある。
  • その他、予算を追加する要因としては、発注者側と受託先の誤認が原因となるケースや、受託先のスキル不足が原因となるケースがある。それらを防ぐために契約書や仕様書の書き方は重要であり、受託先のコミットメントが必要である。アジャイル開発の理想的な形は、予算の範囲内でスコープを柔軟に進めていくことである。

調達におけるアジャイル開発の採用に向けた予算確保と見積り方法

  • 基本的にはアジャイル開発もウォーターフォール開発と同様の見積り方法でよいと考える。まずは、全体の作業量を見積もる必要がある。
  • 工数をどう見積もるかの話になる。事業者に見積りを依頼する際には、仕様の変更があるとはいえ、想定成果物は必要である。民間企業においては、プロダクトバックログを整理し、数パーセントのバッファを持たせて見積もる形が多い。一方、準委任契約の場合は単価契約になると想定され、単価も含めた見積もりが必要である。自治体には標準単価が設定されている場合があるが、市場価格と乖離がある場合には課題があると考える。
  • 発注者が内部で大まかに見積りをして、事業者に金額のずれがないか確認してもらう方が望ましいが、発注者側にそのようなアジャイル開発に関する知見を持った者がいないと実施困難である。
  • プロジェクト支援のコンサルティング業務をしている事業者にプロダクトバックログを整理してもらうという方法もあり得る。
  • 最初の見積もりにはプロダクトのゴールやミッションビジョンが必要で、目標に向かって予算内で進め、仕様変更があった場合はHowの部分を調整する。プロダクトゴール自体が変わるなら別プロジェクトとして再度予算を組むべきであると考える。プロダクトマネージャーやプロダクトオーナーはゴールの解像度やバックログへの落とし込みのスキルが求められる。
  • プロダクトバックログに基づいて見積りの要求をする前に、要件定義に相当するような少額契約で見積りの精度を高める場合、同じベンダーが確実に要件定義と要件定義後の開発の2段階連続で採択されることが理想である。
  • 少額随意契約ではMinimum Viable Product(MVP)を固めてからというケースがよくある。逆にMVPで関わった後でも契約が取れない場合もあるため、運用の工夫が必要である。準委任契約で入札型プロジェクトとして進めるケースでは、最初のMVPの段階で柔軟に何を作るかを決め、その後通常通り調達に移行するパターンも存在する。また、デンマークでは調達前にベンダーのベロシティを確認のため、何日間か一緒に作業をして、その後に調達する事例もある。
  • 適切な見積を取得するには、現場の職員だけでなく、上層部や財務部門等の関係部門への認識合わせが重要になってくる。アジャイル開発で進めることを事前に丁寧にインプットしておく必要があり、作成するプロダクトを変更する可能性があるという旨をきちんと説明する必要がある。
  • ベンダーにとっては、優先順位の前後を柔軟に入れ替えたり、工数の増減が可能なものがプロダクトバックログという認識である。そのような性質であるということを現場の調達担当者と上層部や財務部門、ベンダーで認識を合わせる必要がある。
  • 柔軟な予算確保の実現に向けた対策に関して、開発が失敗して追加予算が必要になるケースは、アジャイル開発に限らず他の開発手法でも起こりうるため、大きな懸念点として考える必要はないと考える。
  • 準委任契約になった場合は、発注側に一定の責任があるため、事業者に追加で依頼することができないことを理解すべきである。

アジャイル開発に適合する契約

  • 準委任契約の履行割合型を採用する際、ベンダーに対し法的に完成責任を問うことはできないが、成果にコミットメントが必要な旨を、入札時に明記するのも一案である。そうすることで結果的に質の高いベンダーからの入札が増え、調達先の選択肢が増えると考える。具体的には、ベンダーの実績を入札時に表現してもらうのが良いのではないか。
  • 準委任契約の履行割合型と派遣契約は類似する部分が多いため、参考に取り入れるのもよい。
  • 行政機関における契約の場合、請負契約の場合であったとしても、法的に分析すると実態としては準委任契約だったことはある。契約形態を重視するのではなく、全部まとめて議論した方がよい。そもそも請負契約と準委任契約のどちらかを選ぶのではなく、プロダクトを作るのであれば請負契約、業務を委託するのであれば準委任契約を選択し、必要に応じて要素を加えていく方が適切ではないか。
  • 精算については、準委任契約の履行割合型の方は部分払いにして、請負契約の部分は完成後に支払うなどと定めればよいと考える。
  • チームの密接な連携と法的要件が衝突することがある。また、準委任契約の際、エンジニアの面接や面談もできないことで、委託先ベンダーの技術力を適切に見極められないことがリスクだと考える。
  • 現場でのコミュニケーションについては指揮命令とは線引きされる。また、ベンダー選定については、一定の条件を設定することは可能であると考える。
  • 実務的には、ベンダーの管理者をスクラムマスターとして体制上置き、プロダクトバックログという書面を通して発注者と受注者が合意を得ていた。
  • 準委任契約の履行割合型と成果完成型を比較する際に、履行割合型はコストが安くなる。リスクの所在によって異なるが、請負契約や成果完成型の場合、事業者側がリスクを負うのでバッファを設ける傾向にある。一方、履行割合型では発注者がリスクを持つため、金額は安くなるが、その分追加予算などで対応が必要になる場合がある。結局、どちらがリスクやバッファを持つかという話になると理解している。

準委任契約(履行割合型)における検査(検収)

  • 成果物等が契約内容に適合しているか否かどのように判断するかについては、受け入れ基準や完成の定義を、発注者と受注者が合意して進めることが理想である。発注側に技術的な判断能力や知見がないと適切な検収はできないと考える。ベンダーに技術的サポートを依頼する旨を調達時に明示するとそのような事態は防げるのではないか。
  • 発注者とベンダーで一緒に作り上げていく形が良いのではないか。ベンダーとしても、現実的でないプロダクトは作ることはできず、逆に基準が緩いのも問題と考える。非機能要件の妥当性なども含め、ベンダーと一緒に検討するのはどうか。
  • スプリントレビューは非機能要件も含め網羅的にテストできるよう、テスト期間は十分に確保すべきである。
  • 契約終了時の検収には、スプリント毎のプロダクトオーナーの承認や、テストプロセスを合意していることが判断材料になる。
  • プロダクトのレビューを第三者機関に任せるべきかについては、検収する立場にある発注者が最終的な判断をするべきだが、ベンダーが自社の足りない部分を補強するために提案することも合理的であり、選択肢の一つである。
  • アジャイル開発の場合の、完成の区切りのつけ方等、成果物の確認について、スプリントが終わってから1~2週間後のタイミングで、プロダクトオーナーが受け入れ基準を満たしているかどうかの判断をしている。基本的にはその時点でリリースが可能であることが原則ではあるが、リリースタイミングはケースにより異なる。非機能部分やセキュリティの部分はスプリント毎にテストを実施し、問題がなければリリースするケースもあるし、プロダクトによっては、一定期間後にまとめてリリースするといったケースもある。
  • 受け入れ基準について、ベンダーの立場では、あらかじめ作成したプロセスを提出し、発注者側に正しいかどうか判断してもらう方法を取っていた。発注者とベンダーのスキルセットは契約の初期段階で合わせていた。
  • 受け入れテストの内容まで準備して、クリアしたら精算を約束するという防衛策を取っていた。
  • 発注者には、テスト計画や品質担保計画の理解が求められる。
  • 行政の場合、民間に比べるとエビデンスやドキュメントが重視される。アジャイルだからドキュメントが不要、ということはなく、発注者はそのバランス感覚を持ったベンダーを選定する力を伸ばすことが大切である。

以上