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デジタル臨時行政調査会作業部会(第22回)

概要

  • 日時:2023年(令和5年)7月26日(水)15時00分から17時00分まで
  • 場所:オンライン開催
  • 議事次第:
  1. 開会

  2. 議事

    1. ベース・レジストリと制度的課題について
    2. 「テクノロジーベースの規制改革」の進捗及び当面の進め方について
    3. 意見交換
  3. 閉会

資料

議事録等

日時

令和5年7月26日(水)15時00分から17時00分まで

場所

オンライン開催

出席者

座長

  • 大串正樹(デジタル副大臣)

構成員

  • 安念潤司(弁護士中央大学大学院法務研究科教授)
  • 稲谷龍彦(京都大学大学院法学研究科教授)
  • 上野山勝也(株式会社PKSHA Technology代表取締役)
  • 落合孝文(弁護士渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)

事務局(三村): 時間となりましたので、第22回「デジタル臨時行政調査会作業部会」を開会いたします。

本日の構成員の皆様のご出席状況についてですが、大串副大臣、稲谷構成員、上野山構成員におかれましては、所用により途中出席、岩村構成員、菅原構成員、増島構成員におかれましては、所用によりご欠席と伺っております。

また、本日1つ目の議題である「ベース・レジストリと制度的課題」については、有識者の皆様にも議論に参加いただきます。

早速でございますが、これより本日の議事に入らせていただきたいと存じます。以降の議事進行につきましては、安念副座長にお願いしたいと存じます。安念副座長、お願いいたします。

安念副座長: それでは、議事に入ります。

第22回の議事は、第1「ベース・レジストリと制度的課題について」、第2「『テクノロジーベースの規制改革』の進捗及び当面の進め方について」です。

1つ目の議事「ベース・レジストリと制度的課題について」は、第1に「行政機関間情報連携に係る制度について」、第2「住所・所在地に係る番号制度(アドレス・ベース・レジストリ)について」の2つのパートに分けて議論をしていただきたいと存じます。最初のパートは「行政機関間情報連携に係る制度について」ですが、こちらは個人情報委員会事務局、ひかり総合法律事務所の板倉陽一郎弁護士、東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授にもご参加いただいて議論を進めていきたいと存じます。

それでは、まず杦浦参事官からご説明をお願いいたします。

【「行政機関間情報連携に係る制度について」は、非公開】

安念副座長: それでは、続いてのパートでございます。「住所・所在地に係る番号制度(アドレス・ベース・レジストリ)について」ですが、こちらにつきましては、ヤマト運輸株式会社の伊藤佑様、それから株式会社ライナフの滝沢潔様、総務省、法務省の方々にもご参加いただいております。

それでは、まず杦浦参事官からご説明をお願いいたします。

杦浦参事官: 住所・所在地に係る番号制度につきまして、ご説明いたします。

2ページですが、本日の議論に関しましては、民間の事業者からのニーズをご発表いただきます。このアドレス・ベース・レジストリ自身は住所・所在地に係る地理識別子を一意に特定するための番号制度という形で考えておりますけれども、それをどこまでどういうふうにやっていくのかというのはまだこれから詳細を詰めていくべきところでございますので、今日のプレゼンなども踏まえながら、引き続き検討を進めたいと考えております。

3ページですが、何を目指しているのかということを大きく言葉で書きますと、真ん中の青字のところでございます。基本的にばらばらに管理されている住所・所在地・建物情報といったところを持っていることによって整備のコストやデータの互換性が担保されないといったところが現状でございます。これを将来的には社会のインフラとして統合的に管理されたものとして整備して、行政機関、民間企業等で共有することによって重複コスト削減、データ連携の促進によって新たな価値等を生んでいくということで考えております。

この地理識別子というものを次のページで簡単に図示しておりますけれども、都道府県、市区町村名、町字といったところは我々になじみの深いところで、ここまでは異存のないところかと思うのですが、それよりも細かいレベルになりますと、まずは不動産登記で使われている地番という体系が下にございます。これは左側のルートでいけば、何か建物、土地等を購入したときに地番で管理されておりますので、我々が不動産登記等の情報を取ったときにこの地番というのを目にするということでございます。

片や、住居表示のほうは、建物が建ったときに自治体のほうで住居表示を付与するというものでございますので、実は詳しく建物名を書くというところまでは行っておりませんし、必ずしも地番と連携しているというものでもございません。この辺りをどういった形で統合的に運用できるようなデータとすることができるのかという辺りは今後の課題と考えております。

5ページですが、よく言われる課題の例としては、表記揺れがあるということで、霞ヶ関で言えば送り仮名等の揺れもありますし、漢字が違うということもございます。また、そもそも表記として2-1とか、2-11の幾つと書いてあったときに、それが住居表示なのか何なのか、地番なのかといったことはすぐには分かりませんので、この辺りもデータを整備するときには課題となってくるものと承知しております。

また、地番と住所を合わせようとした場合に、必ずしもぴったりと自明ですぐ合うといったものではございませんので、これを合わせていくときに、例えば位置情報を使うという手段もあるのであろうとは考えておりますが、いずれにしろこういった課題、技術的な課題も含めて今後検討が必要と承知しております。

ひとまず事務局からの説明としては以上でございます。

安念副座長: ありがとうございました。それでは、続いてヤマト運輸の伊藤さんからご説明をお願いしたいと存じます。

ヤマト運輸(伊藤氏): ヤマト運輸の伊藤でございます。本日は弊社からベース・レジストリのどういった活用をしたいかということと、それに基づいてどのような整備を期待しているかということをご説明させていただきます。

2ページですが、ご存じのように、2024年問題というものが迫っておりまして、労働力が不足するということが物流業界で叫ばれております。これに対する対処として、自動化というのも一つあるのですけれども、それよりももう少し手前のところに業務効率を上げるというのがまず喫緊の課題として出てくると思います。下の矢印のところに弊社でお預かりした物の流れを記載しております。お客様からお預かりしたお荷物がまず町の中にある営業所に行って、そこから基幹物流施設であるベース点というところに行き、幹線輸送を経てもう一度分配していくということをしております。この荷物が実際に届いたところ、「着」と書いてあるベースは、例えば行き先の都道府県に1つあるような大きな基幹施設をイメージしていただければいいのですが、ここにいざ届いたところで、これはどこに該当するものだろうというところで配下の営業所に行けない、あるいは営業所に着いたところで、確かに大きな単位としてはうちの担当エリアなのだけれども、これは実際にどこの荷物のことなのだろうといったことが発生しております。

それから、マンションに関しては、デジタルキーによってオートロックの解除というのをさせていただいているマンションがございますけれども、これは弊社だからという通行手形のような形でさせていただいているわけではなくて、現にお荷物がそこのお宅にいっている、そこのマンションの特定の個人様に荷物が届いているということをベースにデジタルキーで解錠をするということをやっております。

この結果、例えば住所の揺れ、あるいは不備があることによって結局どこに配達したらいいのか分からないということ、あるいはデジタルキーが正常に発行されずに結局オートロック解除ができないといった不備というのが発生しております。結局出された方や受け取られる方に電話をして確認をしなければいけないという業務が発生しておりますが、この調査業務という電話をかけての調査、デジタルキーの判定エラーというものが多数発生しております。

3ページですが、今、何か標準化された住所というのはございません。郵便番号はありますけれども、住所自体が標準化されているということはございませんので、これを不動産IDに寄せてしまうことでエラーを排除していきたいと考えております。最終的にマンションの名称もそうですし、それから部屋番号まであるとベストだと考えております。

それから、現在は人間が配達しておりますけれども、最終的に先ほど申し上げたロボットやドローンによる自動化というところまで考えると、この住所がつまり緯度・経度でいくとどこになるのかというところの位置情報も付加されていると、なおこの先の自動化にシームレスに繋がっていくのではないかと期待申し上げております。

弊社からは以上です。

安念副座長: 伊藤さん、ありがとうございました。

それでは、続いて株式会社ライナフの滝沢さんからご説明をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

株式会社ライナフ(滝沢氏): よろしくお願いいたします。株式会社ライナフの滝沢と申します。

私は今、スマートロックの会社のライナフの代表をしているのですけれども、不動産テック協会の代表理事というところもしておりますので、不動産テックの背景からお話をさせていただければと思っております。

不動産テック協会自体は、不動産テックを広く不動産業界に広めるというところを目標としております。ただ、ここで不動産テックを広げるにあたって最も課題になってきているのが住所の部分です。不動産テック協会としても、今から2年ほど前から不動産オープンIDというIDの取組を始めております。理由としては、マイナンバーと同じように不動産にもIDがないと、不動産テック企業同士の連携が難しいという点でございます。

かといって、一民間企業が、例えば特定の企業のIDをみんな使いましょうと言っても反発を買ってしまうというところで、一般社団法人としてIDをつけていこうという活動を2年ほど前から開始しておりまして、現在、200社程度に使っていただいているという状況になっております。

もともとのきっかけとしては、Geolonia様の「不動産の住所の正規化に本気で取り組んでみたら大変すぎて鼻血が出た」という記事を拝見させていただき、2020年から不動産テック協会とGeolonia様で共同して不動産のIDに取り組んでおります。

不動産テックにおける課題ですけれども、先ほどのヤマト運輸様もおっしゃったとおり、各社が持っているデータベースの住所の表記揺れが発生していること、建物名の表記揺れが発生していること、IDもばらばらであるということで、これらを連携させようとなったときに、今までですと、各不動産会社が持っているIDに寄せていく形で行っておりました。例えると、A社からご相談をいただいたら、A社のIDにそろえるために2~3か月かけて全部やって、また別の不動産会社から相談いただいたら、賃貸管理ソフトの会社もデータ提供の会社も同じ会社なのですけれども、また別の開発をやってという形で、個社単位で対応するしかなかったというところです。

それに対して全部IDを振っていけばスムーズになるということで、不動産オープンIDを作っておりました。それを基に、最終的には銀行の取引であったり、建築したときの情報を仲介会社が正確に保有することであったりといった世界観を目指しております。

不動産テック協会のオープンIDに関しては、作られていく過程をオープンにしていることと、一番の特徴はオープンソースという形で、最終的にIDが生成されるアルゴリズム等も全部オープンにさせていただいております。住所の正規化システムもオープンソースで提供させていただいております。

仕組みとしては、住所から建物名を入れていただくと、一意のIDを返すAPIという形で提供させていただいております。一言で言うと住所にIDをつけたイメージです。

具体的な仕組みで言うと、住所を基にそれを緯度・経度に直して、その緯度・経度を約8メートル四方のメッシュにして、そのメッシュに対してIDをつける形で最終的にIDを付番しているという仕組みになっています。そのような仕組みでAPIとして提供させていただいています。

実際使っている事例ですけれども、マンションのオートロックを開けるための配送先の住所と建物の鍵のシステムの連携をするために使わせていただいたり、不動産の一つの流れの中で、賃貸の広告の出稿、内覧、申込みといったシステム連携のために不動産のオープンIDを使わせていただいたり、会社間の連携ではなくて、一つの会社の建物データ名寄せということでも使っていただいています。損害保険会社の例ですけれども、どうしてもデータベースは契約者ごとに持っているため、一棟のマンションの中でどのくらい犯罪率があるかなど、どのくらい盗難が起きているかということを見られない状況になっていました。それを契約者のデータベースではなくて建物単位で見られるようにするという取組に使っていただいているところでございます。

不動産オープンIDがそこまで出来上がっているのであれば、それで世の中うまくいくのかというと、まだまだ課題があり、不動産オープンIDが広がり切らないポイントになっています。課題は大きく2つです。

1つ目は、その住所が本当に存在するかということが分からない。2つ目は、同じ住所に複数建物がある場合に判別ができない。

まず、1つ目のこの住所は本当に存在しているのかという問題なのですけれども、先ほど冒頭のご説明であったように、都道府県から市区町村、町字のところまで国が把握している部分と、市区町村が把握している部分というのがあります。例えば、「東京都世田谷区」は国が把握していて、「出路樽Z丁目X-2」は市区町村が把握している部分になっています。建物に関しては、建築確認などの中で市区町村も把握はしている。ただ、出路樽Z丁目X-2はある。X-3もX-4もある。では、出路樽Z丁目X-99はあるのか、ないのかというと、把握しているのは市区町村のみになっています。

また、この市区町村の把握の方法が各市区町村によって独自でデータベースを組んでいるところもあれば、エクセル管理をしているところもある。また、住宅地図の余白にペンで書いてそれで管理しているというところも実際あり、結局その住所が本当に存在するのかというのを市区町村の担当者が地図を見ない限り分からないという状況になってしまっております。

また、同一住所、複数建物の問題に関して言うと、例えば、住居番号「30」号、「17」号の建物が複数棟存在しており、同じ住所の上に建物が複数あるケースというのが日本においてはかなりあるため、この問題を解決するために国土交通省様がやっている不動産IDに非常に期待しているところです。

不動産IDは既にご存じかと思いますけれども、登記簿謄本の番号を基につくられております。ただ、今度はここに課題が出てきており、住所から登記簿謄本を取るということの難しさにあります。これもまた一つの事例なのですが、とある住所の建物の謄本を取ろうとした場合、まずブルーマップを目視することで下の地番を確定させ、その地番を基に公図を取ります。そうすると、とある1つの建物の中にいくつ筆があるかが分かって、この筆の上のどれかに建物が登記されているというところになってきます。よって、実務の不動産会社はそれなりの時間をかけてここを調査していく。こうやって初めて不動産番号、登記簿謄本のところまで至るという流れになっているのが現状です。

では、これは住所と地番をうまく突き合わせる仕組みさえできれば、不動産IDは終わりなのではないかと思うのですが、難しいのが、住所が変わる以外にも、地番自体がよく動きます。どういうことかというと、例えば、再開発を行いたいが、借地権者の3分の2の同意を得られない。そのために、既に建っているビルの下の土地を細かく切って、縦長に複数筆に切ることで借地権を増やして再開発を行うとこういうことがあります。つまり、上にある建物自体の住所はずっと変わらず存在しているが、下にある土地の地番だけ突然複数筆に増えたということになります。

アドレス・ベース・レジストリに私が期待することですけれども、まずは住居表示住所をリアルタイムに把握してほしい。この住所は本当に存在するのということをちゃんと国のほうでも把握してほしいのが1つ目です。

2つ目に、可能であれば、住所と地番の紐づけというところです。先ほどの地番だけ複数筆に増えるような例があるのでなかなか大変ではあるのですが、不動産IDを成功させるためには必要になってきますので、ぜひ頑張っていただきたい。

3つ目に、緯度・経度情報もぜひ提供していただけると、民間のテック企業の開発が加速するというところがございます。

この3点を期待させていただいて、本日、登壇させていただきました。ご清聴いただきましてありがとうございます。

安念副座長: 杦浦参事官、ヤマト運輸の伊藤さん、株式会社ライナフの滝沢さんのご説明につきまして、ご意見、ご質問等がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

私から最初にヤマト運輸の伊藤さんに伺いたいのですが、3ページの箱の中に、「当社では配送情報を『不動産ID』へ変換することによる」という表記がありますが、ここでいう不動産IDというのは御社が独自で開発されたものを指しているのでしょうか。

ヤマト運輸(伊藤氏): 弊社独自で開発したものではなく国土交通省が整備されるものです。

安念副座長: 今のところはそれが十分に機能しているものなのですか。

ヤマト運輸(伊藤氏): これをどこまで整備するかというのが本日の趣旨と理解しております。できれば3ページの一番下「ベース・レジストリとして整備いただきたい内容」が全て整備されていれば、効率化ができると考えております。

安念副座長: 配送される立場としては、部屋レベルまで、住戸レベルまでの情報は恐らく必須でしょうね。

ヤマト運輸(伊藤氏): まさに先ほど滝沢様がご説明されていたように、その住所が存在するかしないかということは、結局その荷物が届いて行き先の営業所に行ってみないと分かりません。中には明らかに丁目が指定されている住所なのに、書かれない方がいらっしゃっても、このままで大丈夫だと言われると、何の確信も持てません。そういう意味だと、部屋まで含めてこの行き先というものが実際に存在しているものなのか、そうではなくてシステム上存在しないのでもう一回確認してくださいと荷物を出される前に言えるかというのは大きな違いになってくるかと思います。

安念副座長: ありがとうございました。稲谷構成員、お願いいたします。

稲谷構成員: ものすごく複雑な問題だというのはよく分かりました。特に、地番だけ複数筆に増えるような例などを聞いていると、すごい世界だなというのが非常によく分かりました。いただいたお話の中で1点、緯度・経度情報も提供してほしいという話があったのですが、これは意外と良いアイデアかなと思いました。部屋情報はさすがに無理なのかという気もしますけれども、緯度と経度を建物のどこで取るのかみたいなことをある程度決めてしまって、緯度・経度で全部不動産IDと結びつけるようなやり方ができると、うまくいったりするのかと思ったりもしたのですけれども、現状、緯度・経度を利用するのが難しいという理由ですが、これは安全保障とか、そういった観点から難しいということなのですか。うまくいかない理由が技術的な問題なのか、法的な問題なのか、それとも技術的にも実はあまり役に立たないのか、一体どういうところが難点なのかということをお尋ねしたいです。

安念副座長: 私の知る限り、地籍調査をやっているところでは、土地については四隅の緯度・経度がものすごく数字まで出ています。滝沢さん、お願いいたします。

株式会社ライナフ(滝沢氏): 私も知っているところの情報ですけれども、おっしゃるとおり地籍調査のものは取れていて、地籍調査をやっていないものは行政では把握していないというところです。

民間で言うと、ジオコーダーと呼ばれるサービスを有料で提供している方々は、自分たちの足や航空地図などを使って緯度・経度情報をつくり、それをサービスとして提供されていらっしゃいます。ただ、30日以上の保存は原則禁止になっているというサービス提供になっております。

今回の不動産IDについても、国土交通省様で不動産IDのモデル事業というのをやっていらっしゃるのですが、そこで緯度・経度情報は提供するけれども、今回の期限が終わったら削除してくださいと言われており、そういう意味では、緯度・経度情報というのは、各民間会社が非常に大事に提供しているような形になっています。

国でもしこれをまとめて買い上げてなのか、地籍調査を待っていると多分いつまでも終わらないので、一旦住所に対しての緯度・経度情報などを提供していただくと、先ほどの地番や住所のところの紐づけに関しても、重ね合わせてみるとか、緯度・経度情報をうまく使ってテックの力で100%の程度ではないけれども99%はいけたということができるようになってくるので、ぜひ国としても緯度・経度情報というのは提供していただけるとありがたいというところです。

安念副座長: ありがとうございました。

ただ、土地に緯度・経度情報をつけるというのと建物につけるというのはまた話が変わってくるでしょう。リアルタイムの情報となると、どちらも難しいと思います。さっき地番だけ複数筆に増えるような例えがありましたが、日本は土地の分筆というのは基本的に自由にやっていいことになっていると思います。1筆の土地というのはリアルタイムで追いかけていかないと、いつまでも1筆の土地がそのままの地番であり続けるという保証が何もないので、分筆も合筆もできてしまうから、それも結構難しいです。建物が滅びると誰だって分かるのだけれども、土地だって生まれたり滅びたりしているので、リアルタイムで追いかけていくのは実はすごく難しい話ですね。

滝沢さんにもう一つ教えていただきたいのですが、これを調べるとなるとそれこそ大変な仕事であるのをマネタイズするという前提でお作りになったのですか。

株式会社ライナフ(滝沢氏): この不動産オープンIDの正規化の仕組みを全部やっているのですけれども、全部無料で提供させていただいております。私たちの場合、不動産テック協会なので、社団法人において非営利でやっており、ここではマネタイズはしておらず、会員になっていただいている約200社の企業の年会費の中で開発費を捻出してやっているような形です。それが最終的にテック協会の目標である不動産とテクノロジーの融合を促進してテックを普及させるという活動としてやっているという形です。

安念副座長: ありがとうございました。事務局におかれましては、本日の民間事業者からのニーズや議論を踏まえて関係省庁と連携し、検討を進めていただきたいと存じます。

1つ目の議事については以上とさせていただきます。

続いて、議題の2つ目「『テクノロジーベースの規制改革』の進捗及び当面の進め方について」、須賀参事官にご説明をいただきます。

事務局(須賀): 前回2月にご報告をさせていただいてから時間が空きましたこともあり、本日、ご報告の内容が多くなっております。

4ページですが、今回ご報告したいのは5つの項目でございまして、1つ目が技術検証をやりますと申し上げていましたが、具体的に公募が始まっておりますので、その進捗状況のご報告。

それから2つ目が、テクノロジーマップの縦軸と横軸に関して、どういった設定をするとよいかということの整理がかなりできてまいりましたので、そのご報告です。

3つ目が、第1弾の技術カタログを夏に公表するということ申し上げていましたが、そこに具体的に何のカタログ項目として掲載していくのか、現時点での整理をご報告いたします。

4つ目が、一括法の中でテクノロジーマップやカタログはデジタル庁が随時インターネット等で公表するということになっていますが、ネットで公表するときに、具体的にどういったコンテンツを一緒に掲載していくことになるのかということについてのご報告です。

そして最後が、テクノロジーマップやカタログのステークホルダーが非常に多いものですから、それぞれの皆様と常時接点を持ちながら、アジャイルに作成作業を進めていくためのコンソーシアムをこれから立ち上げていきたいということのご報告になります。

まず「技術検証事業の進捗」ということで、6ページ目です。前回、技術検証が必要な条項が約1万条項のうち1,043条項あり、それを大くくり化すると14類型にまとめることができたというところまでご報告をさせていただきました。各府省庁の条項が増えたり減ったりしながら、具体的に赤枠の5類型について、既に第1弾で詳細に仕様書で書いた上で公募を行いまして、この後、事業者に具体的な検証事業を始めていただく段階に来ております。

それから、青の太枠で囲ったものが、第2弾で規制所管省庁との調整が完了して現在公募に出している規制群でございます。

7ページ、8ページが第1弾の類型の概要になっていまして、技術検証の仕様書が最も早く整った、すなわち規制の詳細な要求内容を言語化するのが早かったものがこの第1弾に入っています。具体的には、類型の3番は、建物や構造物の非破壊検査にドローンや点群データやAIの画像診断などが使えないかという技術検証です。それから、構造物ではなくて自然物、自然公園や南極の環境などを遠隔で検査をしていく類型が6番でございます。

その次の3つは、一番上が立入検査をリモートで行っていくということについての検証、そして13番が閲覧規制の検証、14番が講習規制の検証になっております。

続きまして、第2弾で現在公募中の類型ですけれども、1番は見張り・巡視を求めている規制について、監視業務を遠隔化できるかということを検証します。それから、7番は、レーザー測量などを使ってリモートで実地の調査が代替できるかという検証です。

そして、10ページですが、9番は図面等を見て完成検査などを行っているものについて、OCRやAIの画像解析などを使って代替ができるかという検証です。そして11番と12番の類型は、常駐専任義務を置いている規制をデジタル完結できないかという検証になっております。

以上が技術検証の現在までの進捗でございまして、この後、第3弾でさらに類型を追加して網羅的にやってまいりたいと思っております。

6ページのリストに戻っていただくと分かりやすいのですが、もともと技術検証は国だけを対象に考えておりましたが、ありがたいことに大分県から、県で独自でやっている規制について同じように技術検証のニーズがあると言っていただきまして、幾つかの類型に参加していただいていることが、一つのポイントとなります。こういった自治体が増えてくるとありがたいと思いまして、いろいろな自治体と会話をしているのですけれども、自治体職員さんが規制の内容を言語化して仕様書に落とし込むことが難しいようで、今の時点では大分県しか見つかっていないというところでございます。今後、広げていけたらと思っております。

11ページ以降は、テクノロジーマップについてです。13ページですけれども、テクノロジーマップの縦軸・横軸をどう賢く作っていくことができるか試行錯誤をしております。左側の図ですけれども、例えば安全であることを確認したいという規制目的があり、そのために求める機能は異常の検出を行ってほしいということであって、それを実現するために手段として人間が近接目視をすることを求める。規制というのはこういった構造になっています。現在、テクノロジーマップやカタログでは、最低限、一番下の手段について、アナログで定めているものを遠隔化できないか、デジタル完結できないかという手段の置き換えの可能性をまずは検証したいと思っていますが、我々の目論見といたしましては、できればその上の機能の段階、あるいは目的の段階まで遡ったときに、そもそもこんな規制は必要だったのだろうかというところまで最終的には戻っていけるような構造にしておきたい。そのため、テクノロジーマップは、当面は手段をマッピングしますけれども、機能や目的に紐づけて整理をするのがいいだろうというのがまず1つ目の結論でございます。

14ページ、マップの横軸に関しては大体整理の仕方が見えてきております。もともとの案は、右に行くほどより高度なテクノロジー活用でデジタル完結度が高いという思想で整理をしておりましたが、実際は横軸の分類は技術レベルや成熟度とはあまり関係がなく、また定期検査の検査周期を延長・撤廃する項目の置き場所がないので一番右に適当に置いていたというところもありまして、これを構造化し直すことにしました。テクノロジーによって高度化される機能をデータフローに沿って整理するということで、IPOモデルを採用し、インプット、プロセス、アウトプットで整理しました。「インプット」がもともとの整理ではデータ取得にあたるほか、取得したデータを伝送、伝達するというところにあたるものです。それから、「プロセス」がもともと得たデータを解析、判断、診断すると言っていたものですが、これを判断機能ということで認識と解析・予測と自律に分けました。それから、最後に「アウトプット」ということで、事態の対処を遠隔化するということで、現場に移動するという機能と、それから移動した先で対処するという2つに分けると、横軸はきれいに整理できそうだということが分かってきました。

続きまして、15ページが縦軸で、縦軸は実はまだ試行錯誤中なので、いくつかの案を出したり入れたりしながら検討している状況でございます。次のページが大変面白いと思いますのでぜひご紹介できればと思います。デジタル臨調で約1万条項を各省庁にご協力いただいて見直しの工程表として持っていますが、委託先のMRIさんに大活躍いただいてこれの全数分析をしておりまして、大体共通する規制の構造はこれに尽きるということが分かってまいりました。

まず、規制については一番上に「目的」があり、一番下に「対象事物」、すなわち検査や管理、対応の対象となるような物理的な実態物が何らかある。それに関してデータ取得主体が何らかのデータ・情報を取得し、伝達をして、伝達した先の判断主体がこれは深刻な事態なのか、放っておいていいのかといったことも含めた何らかの判断をされます。この判断をされるときに規制目的と照らし合わせながら問題ないかを判断します。そして、その結果をまた情報伝達いたしまして、直ちに介入せよということであれば、対応主体が対応に動く。ほぼ全ての規制はこの構造に単純化して落とし込むことができそうだということが分かってきています。

17ページは、若干それにあてはまらないものもあることを示しております。18ページから、約1万条項の全数分析作業を現在行っていることを書いております。19ページには、条文上に必ずしも全ての必要となるデータが記述されているわけではないということを記載しています。規制の目的や機能や手段がある中の一部だけが規制には書かれていますが、その規制をよく読みますと、きっとこういうことなのだろう、こういう機能のためにこういう手段を規定しているのだろうということが推測できる構成になっております。この中で、左側の赤などの暖色系に近いものというのが、規制の文言レベルで記載率が高い傾向がございまして、右側に行けば行くほど記載率が下がっています。横軸は先ほどご説明しましたようにIPOモデルのインプット、プロセス、アウトプットで整理しておりますけれども、対象物について何のデータを取得するのか、それを誰がどう判断するのか、そしてどう対応するのかのうち、「何のデータを取得するのか」に規制の記述は重きが置かれているということが分かってきております。

20ページと21ページは、以上の知見を踏まえてテクノロジーマップの縦軸をどう構造化したらいいかということで、試行錯誤しているものです。案1は判断や対応をするために一体何のデータを取る必要があるのか、その対象事物、という順番で分類したものになっています。案2は、逆に対象事物を先に書きまして、それについて一体何の状況のデータを取っていくのかというふうに並び替えて、技術をうまくマッピングできるか試行錯誤しているところでございます。

22ページ、テクノロジーマップに関しては、責任が取れる範囲というのも限りがありますので、しっかり規約も整理しますし、これを使っていただくステークホルダーごとにそれぞれの方向けの解説も整備していこうとしております。

23ページですが、テクノロジーベースの規制改革推進委員会で非常に多くご指摘をいただいた点でもあります。既に出ているガイドラインなどでこれは参照してほしい、この基準には準拠したほうがいいというものがいくつかありますので、そういったものにはリンクを貼って提示していこうということで整理を始めております。

24ページからが、技術カタログについてです。「カタログ項目案」というのが25ページ、26ページと続きますけれども、必須の記載項目はなるべく減らすことによって、スタートアップの企業、実績のない企業でもカタログには製品・サービスを載せていただけるように配慮したいと思っています。

他方で、ここに載せた情報というのは将来的に規制所管府省庁や規制を遵守される事業者が直接参照して調達まで繋げていただきたいという思いもありますので、それに直結するような情報については可能な範囲で参考に載せていただくという形で整理をしてまいりました。

27ページで一番大きな論点になったのは、サービス開始前の製品やサービスの情報です。実際に先行公募でお出しいただいた案件もあり、貴重な情報だけれども、カタログに載せてしまうと調達はまだできないので誤解を招く。技術カタログには直接掲載はしないけれども、こういった製品・サービス群がこの後サービス開始を予定していますという情報は、技術成熟度レベルと紐づけながら、マップには表示をしていこうと考えています。テクノロジーマップでこれから出てきそうな技術エリアのポテンシャル把握は可能なようにしていこうという結論になっております。

28ページから、次回のカタログ公募についてです。1回目のカタログの先行公募は講習と試験のデジタル完結というテーマで実施させていただきまして、第2弾は往訪閲覧と縦覧を対象に考えています。経済安保の観点からどのぐらいしっかりカタログで聞いていくかということについてご議論いただいているところで、その結論が出次第、8月中めどに公募第2弾を開始したいと思っております。

29ページからは往訪閲覧縦覧について公募をかける際の募集フォーマットのイメージを載せさせていただいています。

37ページ以降は、ポータルサイトについてです。マップとカタログについてある程度考え方が整理されてまいりましたので、それをポータルサイトに掲載していくということになります。テクノロジーベースの規制改革推進委員会では、ただマップやカタログが載っているのではなくて、いろいろと使い勝手がいいもの、そして周辺情報もリッチなものにしていきたいというご議論をいただいております。

40ページですけれども、技術解説記事というのもご用意していこうと考えておりまして、例えば技術検証を具体的に実施したときにどういったところが難しかったのか、どういったところが最終的に判断ポイントだったのかということをしっかり記録に残しながら表に出していくということも含めまして、記事にしていく予定にしております。

41ページは、利用規約を弁護士さんに入っていただいてしっかりと作り込み始めているということのご報告でございます。42ページと43ページがその利用規約のイメージなどになっております。

最後に、コンソーシアムの話でございます。45ページですが、コンソーシアムというのはそもそも技術保有機関や規制所管省庁、規制対象機関と連携して、こういったテクノロジーが最近熱いということを教えていただけるような、様々な団体が有機的につながれるコミュニティーをつくりたいということで発案させていただいたものでございます。46ページですが、技術に関する情報をご提案いただいたり、こちらからご提供したりしようと考えております。アナログ規制の見直しに伴う関係者がネットワーク化されて、我々が間に入らなくてもお互いの対話が進んでいくような関係ができたらと思っています。

最後に、関係者同士での学習の機会というのも継続的に設けていけたらと思っておりまして、47ページになりますけれども、横に様々なステークホルダーを置きまして、縦にスケジュールや我々が考えている出し物の項目を載せております。それぞれのプレーヤーが様々な形で関わっていただけるような「RegTech Day」という説明会を兼ねたイベントや、ピッチコンテスト、勉強会、ワークショップ、マッチングイベントなどをこれから順次ご用意してご提供していきたいと思っております。

以上、ご報告でございました。

安念副座長: 須賀参事官、どうもありがとうございました。今のご説明についてご意見、ご質問等がありましたら、ご自由にお願いします。上野山構成員、お願いいたします。

上野山構成員: 非常に面白いなと思っていまして、縦軸・横軸のところにコメントさせていただければなと思っています。まず、横軸は違和感なく、徐々にチューニングすればいいと思います。縦軸がまさに難しく、様々な案があるということだと思いますが、まずメッセージの1つ目は、これは縦軸を一意的に決める必要はないのではないかということで、複数いろいろ切り替えるようにしたほうがいいのではないかと非常に思います。

では、どういう軸で複数書いておくといいのかという話ですが、3案ありまして、1の中に書いていただいているスラッシュ1、2が両方位置づくのですけれども、まず一個は縦軸の目的を、MRIの方がぐるっと回るものです。目的の要はOBラインをセンシングし、一定の介入をするという行為だということが分かってきたと思いますので、これを一段具体化した目的のオントロジーをどう記述できるかという中に、今は対象物軸と人間が見たときにこういう規制の類型があるという軸で書いているというのがまず1個目の縦軸の案だと思います。

ほかには、1は、2023年時点の実現性みたいな感じの軸で書きます。何を言っているかというと、基本的には今まで人がやっていたものを技術で代替する程度の濃淡がこの縦横のマップの中に出ます。そのときに、できているものを上に上げて、できないものを下にマップして、四角が半分の三角形みたいになっているような見せ方をすると、何が自動化できてきていて、何がまだ難しいのかが一目瞭然になってくる記述の仕方というのが一つです。

もう一つは、これはユーザー目線で書くということなのですけれども、まさにマップというのは複雑なので、ぱっと見たときにどこを見ていいか分からないときに、縦軸はいろいろなステークホルダーがいる人が目線を合わせます。Aさんは2個目のブロックを見るし、ほかの団体は3個目のブロックを見るしというユーザーから逆算した縦軸を置くというのもあるかと思います。

いずれにせよこのテクノロジーマップをいろいろな人に使っていただきたいというときに、変に縦軸を1個にする必要は多分なくて、いろいろと切り替えるようにしていく。それによって巻き込みを増やしていくというのがいいのではないかなというのがメインメッセージです。

これはマップの中をクリックしていくとドリルダウンしていけるような話だと思いますし、これの完成形は一意的に書けないので、いろいろな人がここにウェブサービス的なコメントを書いて、それがどんどん動的に動いていくイメージです。それを作るのは大変そうなので言うのもはばかられますが、ウェブサービス的にぐるぐる回していけるような実装ができるとすごくいいと思います。

メインメッセージは1個目の縦軸を複線化していく、複数置いておくということが重要な気がしたというコメントでございます。

安念副座長: ありがとうございました。メインメッセージの2番目の2023年の段階で実現できているものと半分ぐらい、それから縦軸の取り方があるという話ですが、この資料の中でも既に触れられている技術的な成熟性というTRLの概念があります。それとは同じことですか、違うことですか。

上野山構成員: その軸も持っているのですね。

安念副座長: 僕が聞いたのは、必ずしも同じことではないような気がします。つまり、ある目標があって、それを現段階ではどれくらい達成できているかというものだから、目標そのものまでは変えないのだと思います。例えばこの前も、経済産業省で幾つかの民間企業から高速炉の提案があって、当然のことながらTRLを考慮して採択を決めています。その前の技術的成熟性というのは、高速炉というのはもう初めから概念が決まっていて、そこから多く出るようなものではないようです。その技術的成熟度というのもあくまでも規定された根本的な概念の枠内でどれくらい実現できているかという話だから、概念そのものを飛び抜けようという話ではないと思います。

今、上野山構成員がおっしゃったのは、そういうある枠の決まった概念の中での成熟度80%など、そういう話ではないような気がして伺ったものです。

上野山構成員: ありがとうございます。調べてみたところ、そもそも技術が成熟しているというのを何の物差しで測るか2種類あって、ソフトウエア的なものはTRLと別のユースケースに依存するのだと思いますので、やはり別のものだということなのだと思います。

安念副座長: ありがとうございます。落合構成員、お願いします。

落合構成員: ありがとうございます。かなり構造化もされていて、非常にすばらしいと思っておりました。

構造化をしていくのに当たり、既に議題になっていたような内容を構造化していっただけでも相当すごいことです。さらにほかのテーマなども出てきたりするかと思いますし、実際どういう形にするかはありますが、規制改革推進会議のスタートアップ・イノベーションでも、時代や技術の変化に応じてある程度認証や型式を柔軟化していくような議論をしておりました。意見書にまではまとめていないのですけれども、答申などに枠としてはそういうフレームをつくっていたりしました。こういう形で横転できるようなアジェンダ自体は今後増えていくと思いましたので、またそういう点も取り組んでいただければと思いました。

また、技術カタログの取組で、入力項目など、29ページである程度公共調達との連携も定めていただいており、公共調達との連携も行っていただいていると思います。これからデジタルマーケットプレイスや、公共調達の改革を随時行っていくと思いますので、ぜひこちら側での経験を公共調達の見直しや調達実務の向上にうまく繋がるといいと思います。国・地方の関係自体を見直すような議論もあるので、地方公共団体に必ず全部調達してもらうことに限らないとは思いますが、そういった調達実務の向上にうまくつなげていただければと思いました。

安念副座長: ありがとうございました。稲谷構成員、お願いします。

稲谷構成員: すごい進捗だなというのがまず第一印象です。落合先生もおっしゃられていますように、従来の規制というものが結局何をしていたのかというのが相当程度構造的に可視化されたというのは物すごい成果だと思います。しかも、きちんと把握可能な数の類型にまとめられたという点も、すごいことだと思います。

こうした方法論がうまく回っていけば、コンソーシアムの話なども紹介されていましたけれども、まさに民間が主導して、民間のアイデアがどんどん規制に反映されていくという、我々がアジャイルガバナンスと呼んでいる考え方の世界にどんどん近づいて行くのだろうなと思います。そうなることでイノベーションとリスクが適切にマネジメントされる世界を実現していただきたいと思っていますので、ぜひこのまま続けていただければと思います。

他方で、掲載の基準について、どういう技術だったら載せていいのかというところの審査の基準や、ハードルがどうなるのかというところが気になっています。責任分界のやり方であるとか、新しい企業になるべく入ってもらうということと、安全のために高い参入のハードルを課すというトレードオフをどのように解決するのかという問題とも関係してくると思うのですが、どういう形で基準を設定すると一番いいのかなというところをお伺いしながら考えていました。今の段階でこれらの点についてどのような議論があるのかについてお伺いしたいです。

もう一点は、小さな会社の方が入ってこられて、書かれている内容を信頼されて何かを使って、実際に事故が起きたということがもしあったときに、その部分の損害をその会社だけで填補できるのかという問題が結局出てきてしまう気がします。

つまり、結局一生懸命新しい会社がそれこそ真摯に技術を開発して載せていて、使ってほしいと思っていたとしても、使う側からすると、何かがもしあったときに結局これで損失を被って回収できなかったということを考えると、怖くて使えないという話が出てくるともったいないと思うのです。この問題について、例えば強制保険制度を使ってみるとか、あるいは何か公的な損失保証制度を少し準備してみるといった議論もあると、よりテクノロジーマップやカタログの整備が進んでいくというイメージを持ったのですけれども、何かこの点についてもし議論があるようであれば、ご教示いただければなと思ったところです。

安念副座長: 須賀参事官、お願いいたします。

事務局(須賀): まず、稲谷構成員の結局何が載るのだという話は本質を突いたご質問でありまして、まずカタログに関しては、落合先生にもご指摘いただきましたが、調達に直結したいというところである程度外縁が決まってくると思っています。この調達の主体に政府調達も入ってくるということが重要であり、そのために規制当局のほうで技術検証までしていただいております。規制が求めているものとの関係で十分な精度が出るということの広い意味での保証はかけていただくものの、他方で、そこで事故が起きたときにデジタル庁が全部補填してあげるわけにもいきません。導入いただくかどうかはご判断に任せるけれども、少なくとも使っていただける段階の商用化されたサービスや商品であるということは、まずカタログのレベルでは確保をしたいということです。

その手前で、技術成熟度にも関係しますけれども、まだテスト中だけれども、こんな有望な技術があって、あと2から3年以内にマーケットインする予定というような情報は、マップを見ていただくと分かるようにしたいと考えています。それによって、規制当局に対してはそれを見据えて準備をしていただきたいということですが、その技術がマーケットインする頃には規制としてもある程度手が打たれているという状態が本当は望ましいので、そういった行ったり来たりができるとありがたいなというのが総論でございます。規約のつくり方、まさにテクノロジーベースの規制改革推進委員会でも一番重く議論いただいている点です。保険というキーワードも出していただきましたが、この後、少し議論を深めていきたいなと思っている点であります。

稲谷構成員: ありがとうございました。

事務局(須賀): 落合先生にご指摘いただいた点に関連しまして、テクノロジーマップの構造案の2番目をご覧ください。規制類型という緑の項目が左から2番目にありますが、よく見てみると、私たちがデジタル臨調で取り上げてきたアナログ規制の7類型よりも多い項目が入っております。つまり、約1万条項をMRIに分析してもらったところ、我々が捉えていたキーワードは7個だったのだけれども、実はそれ以外のキーワードで捉まえられるようなカテゴリーが透けて見える、もう一回文言にとらわれずに整理するとこういう形になってくる。我々は7項目に網羅性がないということに悩んでもいたのですけれども、実は結構ほかの部分も捉まえられている可能性がありそうだということも同時に分かってきたということで、それは面白いと思っております。

上野山構成員にご指摘いただいたマップのインテリジェント化の話も、テクノロジーベースの規制改革推進委員会の委員の先生方が皆さんそういったことに非常に長けた方々でいらっしゃいます。縦と横を自分で選ぶと、それによって自動でマップが生成されるとか、あるいはいろいろな方がこの技術はどうだったといったコメントも含めて書き込んでいただけるようなものにするという大きな構想もございます。

ただ、政府調達のデジタルマーケットプレイスも同じなのですが、デジタル庁が提供できるネットのインターフェースをどこまでお金をかけて作り込めるかということとのトレードオフになってきております。デジタル庁のホームページはあえて非常にシンプルに作ってあるものですから、それとの関係でどこまでの機能拡充をいつまでにしてもらえるかということを見極めながら、初めはシンプル過ぎるようなものかもしれませんが、目標としては使いやすいインテリジェントで豊かなコンテンツとしてお出しするということを目指しながら、折り合いをつけてやっていきたいと現時点では思っております。

上野山構成員にご提案いただいた3つの縦軸は、確かに下2つの2023年なり24年の時点断面でのデジタル完結度みたいなことで整理するなど、非常に面白いアイデアをいただきましたので、事務局にて検討してみたいと思います。ありがとうございます。

安念副座長: ありがとうございました。落合構成員、お願いいたします。

落合構成員: ありがとうございます。

今、須賀参事官にご説明いただきまして、まさしくそのとおりだなと思っておりました。規約などは保証する、約束するに限らないと思っていまして、例えば銀行APIで自主規制団体のほうを私はやっておりますが、その中ですと、どういうプロセスで何を確認したのかを、例えば監査法人の合意された監査手続で行っていただいて、それを銀行ごとに確認していたものを100行分を同時に確認できるようにするという手法でやっていたりすることもあります。表明保証といった言葉も法学にありますが、必ずしも保証だけではなくて、表明するだけでもある程度信頼性が高まることは十分あると思います。保証や約束は重くなりますので限定する余地も考えつつ、稲谷構成員が指摘された保険などでカバーという点でも、逆にそこの部分の損害などの点は保険を利用できる場合にはいいと思いますので、分離して考える方法もあるかと思いました。

テクノロジーマップの類型が細分化されたことは非常にすばらしいのですが、その追加として、点検や検査という枠組みを行為に落として、行為を記述する言葉で書いてもらうと、さらに逆にデジタル規制改革のネタになるパーツが集まってくる気がします。ここまでくると、これをやられた方であれば、逆にその中身の行為を抽象化して書くことは難しくないのではないかと思います。そうしていただくとまたネタが増えるので、よりはかどるのかなと思いました。

安念副座長: ありがとうございました。それでは、最後に大串副大臣より一言お言葉を頂戴したいと存じます。

大串デジタル副大臣: 今日は構成員の皆様、ありがとうございました。私も途中からの参加で大変恐縮でございますけれども、冒頭の「ベース・レジストリと制度的課題」のうち「行政機関間情報連携に係る制度」のところでは、個人情報保護法に関するものなど、制度的な課題について皆様方のご意見をいただいたと伺っております。ご意見を踏まえて、関係機関と密に連携しながら、年末に向けてしっかりと制度の検討を進めてまいります。

その次のアドレス・ベース・レジストリのところで現状や目指す姿、課題について事務局から提示させていただいた上で、ヤマト運輸株式会社様と株式会社ライナフ様より民間事業者からのニーズをご発表いただきました。大変難しいことだと思いましたけれども、多くのご示唆をいただいたところでもございます。これらのご意見を踏まえまして、次回の作業部会において制度の具体化に係る検討を行ってまいります。

そして、テクノロジーベースの規制改革に関しましては、本日ご議論いただいた内容も踏まえながら、この夏には利便性や活用の可能性の高いテクノロジーマップ、技術カタログを策定・公表してまいります。

また、技術検証事業についても、各府省や技術を保有する事業者等と連携して実施して、その結果をテクノロジーマップに反映するなど、幅広く共有・活用することで、デジタル技術の進展を踏まえた自律的・継続的な規制の見直しや技術の効果的な活用を推進してまいりたいと思います。

本日もありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

安念副座長: 副大臣、ありがとうございました。それでは、事務局より次回の作業部会の開催についてご説明いただきます。

事務局(三村): 事務局でございます。本日はありがとうございました。

それでは、最後に次回の作業部会の開催等についてご説明いたします。次回の作業部会の詳細につきましては、事務局より追ってご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

なお、本日の議事につきまして、議事1「ベース・レジストリと制度的課題」のうち「行政機関間情報連携に係る制度について」につきましては、ご異議がないようでございましたら、非公開とさせていただき、それ以外の部分につきましては、後ほど議事録を作成し、皆様にご確認いただいた上で公開させていただきたいと存じます。

また、本日の資料の取扱いにつきましては、議事1の「行政機関間情報連携に係る制度について」に関する資料を除きまして、デジタル臨時行政調査会のホームページに公開させていただきたいと存じます。

本日はご参加いただきありがとうございました。

安念副座長: それでは、以上をもって第22回の会議を閉会したいと思います。ありがとうございました。