# 教育DXロードマップ(案) 令和7(2025)年XX月XX日 デジタル庁 総務省 文部科学省 経済産業省 # スライド1 本ロードマップの趣旨と改定のポイント ## 教育DXロードマップとは 『教育DXロードマップ』は「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」という教育DXのミッションの実現を目指し、関係省庁が連携して施策を推進するための青写真と工程表を整理したもの。2022年1月に策定した『教育データ利活用ロードマップ』を基に、この3年間の成果と課題、生成AIといった技術の進展を踏まえ、今後3〜5年間を視野に必要な取組を精緻化した。なお、引き続き、国は個人の教育データを一元的に管理せず、学習者や教師等が、各自治体等で分散管理されているデータを利活用できるよう、必要な取り組みを進めていく。 ※教育DX:教育において、 デジタルを活用した新たな価値の創造が行われること。教育データ:初等中等教育段階の公立学校における児童生徒の教育・学習に関するデータ(デジタルデータ)。 ## 改定の主なポイント - ビジョンの策定:“学ぶ人のために、あらゆるリソースを” - 教育DXを通して、教師・ツール・データというリソースを、学習者のために活かせる環境を整備 - 前提として、初等中等教育段階の教師の負担軽減に資するよう、「12のやめることリスト(デジタルに変えること)」を整理 - 技術の進展への対応:生成AIの適切かつ効果的な活用 - 近年、急速に進化を遂げている生成AIについて、学校の働き方改革や学びの充実に活用する方針や施策を明記 - デジタル公共インフラ(DPI)の整備:教育分野の認証基盤の検討・構築 - 転進学等の自治体間連携や個人起点のデータ利活用に向けた在り方の検討(教育分野の認証基盤の整理・実証等) ## 本ロードマップの実現に向けて 関係省庁では、本ロードマップを踏まえ、社会や技術の進展に柔軟に対応しながら取組を進めることとしている。教育委員会・学校におかれては、標準規格に準拠したサービスを効果的に活用し、学習者のために教育DXに向けて積極的な取組を期待したい。また、関連する民間事業者におかれては、本ロードマップも参考にしながら、相互運用性を確保したサービス開発を期待したい。教育分野の研究者におかれては、多様な教育データを活用し、より良い学びに向けた示唆が得られるような研究活動を期待したい。 # スライド2 教育DXのミッション・ビジョン ## 教育政策の総括的な基本方針 - 2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成 - 日本社会に根差したウェルビーイングの向上 ## デジタル社会の目指すビジョン - デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 - 誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化 ## 教育DXのミッション 誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会 ## 教育DXのビジョン 学ぶ人のために、あらゆるリソースを # スライド3 子供たちを取り巻く背景とデジタル化の強み@ 多様なデジタルツールの活用により、生まれた環境や生まれ持った特性等に関わらず、全ての子供たちに自分にあった学びを実現 ## 顕在化する子供たちの多様性 ### 小学校35人学級における子供の多様性 - 学習面、行動面で困難を示す子供 3.6人 - 特異な才能がある子供 0.8人 - 日本語を家であまり話さない子供 1.0人 - 家にある本の冊数が少なく学力の低い傾向が見られる子供 12.5人 - 不登校や不登校傾向の子供 4.8人 (出典)内閣府「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」をベースに更新された中央教育審議会「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)参考資料」(令和6年12月25日開催) ## 自分らしい学びの実現にはまだ課題 ### 自分にあった授業になっていないと思う ### 「前年度までに受けた授業は、自分にあった教え方、教材、学習時間になっていた」という質問に対して、「当てはまらない」「どちらかといえば、当てはまらない」と回答した児童生徒の割合(対象:小6・中3) - 小学校 15.7% - 中学校 18.5% (出典)文部科学省・国立教育政策研究所「令和6年度全国学力・学習状況調査の結果(概要)」より作成 ### 上記の各質問に「とても当てはまる」「少し当てはまる」と回答した児童生徒の割合(対象:小4から中3) - 授業の内容が難しすぎると思う 30.5% - 授業の内容が簡単すぎると思う 15.4% (出典)文部科学省「義務教育に関する意識に係る調査」 ## デジタルの活用により可能・容易になる多様な学びの例 ### 個別最適なサービス提供 - 子供の興味関心や解答状況に応じて提供する問題やその難易度等を調節 - 動画により苦手な内容を反復して学習 ### 多様なインターフェース - タイピングに加え、手書きや音声での入力が可能 - 多言語対応や白黒反転、拡大等が容易 ### 柔軟な組み合わせが可能 - 苦手な分野は動画教材を参照しながらじっくり学習 - ドリル教材で誤った箇所は教科書に遷移し、関連ページに立ち戻って復習 # スライド4 子供たちを取り巻く背景とデジタル化の強みA デジタルの活用により自分にあった学びを支援するに当たっては、習熟度に応じた問題の提供などアルゴリズムによる最適化のみに頼るのではなく、データや生成AI等の活用により、学習者が主体的に学ぶ中で最適な学びとなるよう自ら学習を調整することを支援することも重要 ## 「今後、あなたの学校が再び休校した場合、以下のことを行う自信はどれほどありますか」という質問に対し「あまり自信が無い」「全然自信が無い」と回答した日本の生徒の割合(アンケート対象:15歳) - 自分で学校の勉強をする予定を立てる自信が無い 63.3% - 自分の学習の進み具合を評価する自信が無い 65.3% - 自律的な学習に課題 (出典)文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査2022年調査(PISA2022)のポイント」より作成 ## デジタルの活用により可能・容易になる自律的な学びの例 ### 主体的な学習を支援 - 自らの学習データを踏まえ、計画や振り返りを作成 - 生成AIとの壁打ちを通じて、足りない視点を見つけ、考えを深める(※) - ※生成AIの活用については、年齢制限等に留意が必要 ### プロセス・ログを容易に蓄積・保存 - 自らの進捗や得意・苦手分野についてログをもとに参照 - 自動的に記録された成果物や学習過程をもとにしたパフォーマンス評価やポートフォリオ評価等の多様な評価 # スライド5 教師を取り巻く背景とデジタル化の強み 教師の在校等時間はここ数年で改善傾向にあるが、依然として厳しい勤務実態が存在。一人一人の子供たちの「自分らしい学び」を実現するため、まずは校務DXにより教師の業務を効率化するとともに、多様なデジタルツールやデータの利活用により業務の質を向上 ## 教師の時間外在校等時間※の割合(令和5年4月〜令和6年3月) - 「月45時間」を超える時間外在校等時間の割合が、小学校で約25%、中学校で約43%、高等学校で約28%。 ### チャート | カテゴリー | 月45時間以下 | 月45時間超〜80時間以下 | 月80時間超 | |---|---|---|---| | 小学校教諭 | 75.2 | 23.2 | 1.6 | | 中学校教諭 | 57.5 | 34.4 | 8.1 | | 高等学校教諭 | 71.8 | 22.5 | 5.7 | - ※教育職員が学校教育活動に関する業務を行っている時間として外形的に把握することができる時間。 - ※1か月の時間外在校等時間の上限時間は基本的に45時間以内(公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が 教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針) - (出典)令和6年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査 ## デジタルの活用により可能・容易になる教師の業務の例 ### 業務の効率化 - 紙の資料、プリントの印刷が不要 - 生成AIによって文書やプリントの作成を効率化 - テストの採点やアンケートの集計が容易に - 一度入力した情報が連携され再入力不要に ### 教師の見取りの充実 - 従来の机間指導のみでは困難であった、クラス全員の状況を瞬時に把握することが可能に - 学びのプロセスなどをデータを活用して把握できることで、これまで以上に充実した個々の児童生徒に対する見取りが可能に # スライド6 デジタル社会の実現に向けての理念・原則 教育DXの推進に当たっては『デジタル社会形成のための基本10原則』『構造改革のためのデジタル原則』『クラウド第一(クラウド・バイ・デフォルト)原則』等、政府として策定したデジタル社会の実現に向けた理念・原則を出発点とし、『教育データの利活用の原則』(※)等も踏まえながら、デジタルを踏まえた業務改革(BPR)を含め、取組を進めていくこととする。 ※教育データの利活用に係る論点整理(中間まとめ)(令和3年3月) ## デジタル社会形成のための基本10原則 1. オープン・透明 2. 公平・倫理 3. 安全・安心 4. 継続・安定・強靱 5. 社会課題の解決 6. 迅速・柔軟 7. 包摂・多様性 8. 浸透 9. 新たな価値の創造 10. 飛躍・国際貢献 ## 構造改革のためのデジタル原則 1. デジタル完結・自動化原則 - 書面、目視、常駐、実地参加等を義務付ける手続・業務について、デジタル処理での完結、機械での自動化を基本とし、行政内部も含めエンドツーエンドでのデジタル対応を実現すること。国・地方公共団体を挙げてデジタルシフトへの組織文化作りと具体的対応を進めること。 2. アジャイルガバナンス原則 - 一律かつ硬直的な事前規制ではなく、リスクベースで性能等を規定して達成に向けた民間の創意工夫を尊重するとともに、データに基づくEBPMを徹底し、機動的・柔軟で継続的な改善を可能とすること。データを活用して政策の点検と見直しをスピーディに繰り返す、機動的な政策形成を可能とすること。 3. 官民連携原則 - 公共サービスを提供する際に民間企業のUI/UX を活用するなど、ユーザー目線で、ベンチャーなど民間の力を最大化する新たな官民連携を可能とすること。 4. 相互運用性確保原則 - 官民で適切にデータを共有し、世界最高水準のサービスを享受できるよう、国・地方公共団体や準公共といった主体・分野間のばらつきを解消し、システム間の相互運用性を確保すること。 5. 共通基盤利用原則 - ID、公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)等は、国・地方公共団体や準公共といった主体・分野ごとの縦割りで独自仕様のシステムを構築するのではなく、官民で広くデジタル共通基盤を利用するとともに、調達仕様の標準化・共通化を進めること。 ## 教育分野における取り組みの方向性の例 - 転進学の際の手続のデジタル完結 - ダッシュボード等による進捗把握と政策改善 - 官民連携による標準化推進 - 相互運用性確保に向けた教育データ標準化の推進 - 教育分野の認証基盤の検討モデル仕様書の活用等による調達支援 # スライド7 教育DXによって実現する将来イメージ(学習者の立場から) ## 誰もが - 特性や得意、自分の好きに合わせて自己調整して学べる - 生涯にわたって、自分の学びの状況を把握できる ## いつでも - 学びたいときに学びたい内容を学べる ## どこからでも - 学校でない場所からでも学べる ## 誰とでも - 専門家とつながる - 同じ目標の仲間と学べる ## 自分らしく学べる - 自らの意思でデータを共有して適切なサポートを受けられる - 就職や留学の際に自分の学びを証明して、自己実現できる # スライド8 教育DXによって実現する将来イメージ(教職員の立場から) ## 学習指導・生徒指導 - 一人ひとりの状況が把握でき個々に応じた指導ができる - 外部機関も含めて担任以外も情報を適切に管理し共有することでチームとしての支援が可能に - データに基づいて学習者の見取り・評価や関係者への説明ができる ## 指導の計画・授業準備 - 個々の学習者に適した教材が見つかる - 異動に関係なく教員在職期間中の記録を蓄積できる ## 学級・学校経営 - 学級・学校全体の状況が把握できる取組の効果が分かる、改善できる ## 校務の負担軽減・効率化 - 自動転記・集計により、入力が一度きりとなり、事務手続・調査等を負担軽減・効率化 - 保護者との連絡が楽に - テレワークによる業務を可能に ## 情報交換のプラットフォーム - 学校・地域を超えてノウハウを共有 # スライド9 教育DXによって実現する将来イメージ(行政機関・研究機関の立場から) ## プッシュ型の支援 - 真に支援が必要な子供達のデータを個人情報の保護に配慮の上、関係機関で連携することにより、プッシュ型の支援ができる ## EBPMによる政策改善・制度設計 - 標準化されたデータに基づき分析を行い、政策の改善や新たな制度の設計に活用できる - 施策の効果を関係者に説明できる - 効率的な資源配分が実現できる ## 効果的なカリキュラムや指導法の開発 - 学習状況を多角的なデータで把握し、得られた知見をもとにカリキュラムや指導法の開発ができる ## 調達の容易化・効率化 - サービスに関する情報が一元的に入手できたり、調達自体が容易にできたりする - ベンダーロックインが解消され、調達のコスト効率が改善する ## 負担軽減 - 調査等の業務を効率化・削減できる ## 教育研究の活性化 - オープンデータ化により、研究者は全国のデータを用いて研究ができる - 行政と研究者のマッチング等により、データ分析事例が増加する ## 情報交換のプラットフォーム - 学校・地域の優良事例を横展開したり、全国の類似自治体と比較した施策改善が容易に # スライド10 教育DXによって実現する将来イメージ(民間教育産業の立場から) ## 新たな教材や教育AIの開発や、その精度を上げる取組が容易に - 匿名加工処理されたオープンデータを活用することで、短期間の開発や、サービスの質向上ができる - 標準規格等がオープンソースとして公表されることで、最低限のコストで実装できる ## EdTech産業の活性化 - 標準化によりサービスの組み合わせが容易になり、専門性の高いサービスの提供や新規参入がしやすくなる - 国際標準の実装・普及により、海外進出しやすくなる ## 良質なサービスが選ばれる - ベンダーロックインが解消され、健全な競争環境が実現する # スライド11 関係施策の相互関係と主な論点 ## 学ぶ人のためにあらゆるリソースを デジタルにより個別最適な学び・協働的な学びを一体的に充実 ### デジタル化による校務・事務負担の軽減 業務負担を軽減し、子供に向き合える環境を実現 - 次世代校務DXの推進 - 調査のオンライン化 - 高校入試事務のデジタル化 - やめることリストの実現 ### 多様な学びのための学習環境の整備 生成AI含め多様な学習ツールの導入により、自らの進度や特性等に合わせて学べる環境を実現 - 1人1台端末を活用した学びの推進 - 必要なネットワーク環境の整備 - 多様な学習ツールの導入 ### データによる学習者の自己理解・教師の見取りの充実 システム・ツールを越えてデータが連携され、学習者の自己理解・教師の見取りを支援 - 教育デジタルサービスの相互接続 - 教育データの標準化の推進 - 教育データの分析・活用の推進 ### 生涯を通じて学びのデータを活かせる環境の整備 個人起点・組織起点のデータ連携に向けた基盤を整備 - 主体・データの真正性の確保 **教育政策や実践にも資する教育データの研究目的の利用** # スライド12 関係施策の目標 ## デジタル化による 校務・事務負担の軽減 - As Is - 校務支援システムを自前サーバーに構築し、職員室に固定された端末からのアクセスを前提とした校務 - 紙ベースの業務が主流 - 2028~2029(R10~11) 校務DX・デジタルを前提にした多様な学びの進展 - 次世代校務DX環境の全国的な整備 - アカウント管理に必要な情報はシステム間でワンスオンリーで連携可能 - To be DXによる自分らしい学びの実現 - あらゆる業務のデジタル完結・情報のワンスオンリーが徹底 - →教師が子供に向き合える環境を整備 ## 多様な学びのための 学習環境の整備 - As Is - 1人1台端末は整備済だが、校内外のネットワークが不十分 - 端末の利活用状況の格差 - 2028~2029(R10~11) - GIGA第2期端末が県域で調達され、日々効果的に活用 - 必要なネットワーク環境が整備済 - 自治体が多様なツールを調達できるよう支援し、発達の段階に応じて、生成AI等も含む自分に合ったツールで学ぶことができる環境整備 - To be - 端末やネットワークといった学習環境が整備 - 多様なツールを組み合わせた自分らしい学びが全国に普及 - →多様なツールで学べる環境を実現 ## データによる学習者の自己理解・教師の見取りの充実 - As Is - 標準規格・標準化の実証は進むが、内容情報の実質化や社会実装に課題 - データ利活用の先行事例は蓄積されているが、取組状況には自治体間格差 - 2028~2029(R10~11) - 標準規格の普及やデータ標準の実装が進み、システム間のデータ連携が可能 - 名寄せ等の作業を人力で行うこと(目検等)を最小化しつつ、ダッシュボード等でデータの可視化が実現 - To be - 多様なデータを利活用し、学習者が自分の状況を理解したり、教師が学習者の状況を深く・多面的に理解できる - →データで学習者の学びを支援 ## 生涯を通じて学びのデータを活かせる環境の整備 - As Is - データ連携の取組や検討が主に自治体内の連携に限定 - 2028~2029(R10~11) - 転進学時のデータの学校間の引継ぎのデジタル完結が先行自治体より段階的に開始 - 高等教育分野における共通基盤の活用促進等、各教育段階で本人起点でのデータ活用の社会実装が段階的に開始 - To be - 本人の意思で学びの履歴を持ち運べ、学びの成果をどこでも活用し、自己実現することや必要な支援を受けることにつなげられる。 - →生涯にわたって多様なリソースを学ぶ人のために ## 主なマイルストーン KPI - 次世代校務DX環境への移行(2026-2029) - GIGA第2期(2024-2028) - GIGA第3期(2029-) - 必要なネットワーク速度確保済みの学校100%(-2025) - デジタル教科書を実践的に活用する学校100%(2028) - 全国学力・学習状況調査を順次CBT化(2025-) # スライド13 重点事項に関する工程表 *を付した項目については、「校務DXダッシュボード」においてモニタリングを実施予定 ## 次世代校務DXの推進 - 都道府県域で共同調達・帳票統一の促進(2025-2029) - 全自治体で次世代校務DX環境の導入を検討(2026) - 全自治体で次世代校務DX環境導入済み(2029) - 自治体の取組状況をモニタリング*し、次世代校務DX環境への移行に向けた支援等の必要な取組の推進(2025-2029) - 全自治体で次世代校務DX環境導入済み(2029) ## 高校入試実務のデジタル化 - 都道府県での実証(2025) - モデル仕様書の活用等により、各都道府県における調達・導入を支援(2025-2028) - 原則として、希望する各都道府県でデジタル化(2028) - 各都道府県の取組状況の調査を踏まえ、必要な取組の推進(2025-2028) - 原則として、希望する各都道府県でデジタル化(2028) ## やめることリストの実現 - 自治体の取組状況をモニタリング*し、必要な取組の推進(2025-2029) ## 1人1台端末を活用した学びの推進 - 都道府県域で1人1台端末の共同調達(2025-2028) - ※ 2026年度中に、地方公共団体における効率的な執行・活用状況について検証するとともに、次期更新に向けて、今後の支援の在り方を検討し、方向性を示す。 - 文部科学省CBTシステム(MEXCBT)の活用促進(2025-2029) ## 多様な学習ツールの導入 - 1人1台端末や生成AI等の活用に関する好事例創出・横展開(2025-2029) - 多様なサービスのカタログ化やモデル仕様書、DMPを通じた調達支援(2025-2029) ## 必要なネットワーク環境の整備 - ネットワーク改善支援(2025) - 全校で必要なネットワーク速度を確保(2025) - サービスのカタログ化(2025) - 全校で必要なネットワーク速度を確保(2025) ## 教育デジタルサービスの相互接続 - 「相互運用標準モデル(※)」の改訂・普及、標準への適合性評価に向けた検討・実施(2025-2029) - (標準への適合性をセルフチェックする仕組みをR7以降早期に運用開始、R7より第三者機関による標準への適合性確認の仕組みについて具体的に検討) ※「初等中等教育におけるシステム間連携のための相互運用標準モデル」 - モデルスケジュール等を活用した標準規格による教育データ連携の横展開(2025-2029) - 全自治体で年次更新作業が自動化(2029) ## 教育データの標準化の推進 - 学習指導要領コードと単元情報の対照表作成(2025) - 次期学習指導要領の内容情報としての活用方法について検討(2026-2028) - 原則として、自治体が希望する場合、全てのツールから標準化されたデータの出力が可能に(2028) - 活動情報等の標準化(2025) - 標準化された主体・内容・活動情報の普及・活用促進(2026-2028) - 原則として、自治体が希望する場合、全てのツールから標準化されたデータの出力が可能に(2028) ## 教育データの分析・活用の推進 - 「教育データの利活用に係る留意事項」の周知徹底、必要に応じて改訂(2025-2029) - 全自治体で個人情報の適正な取扱いを早急に徹底(2026) - 希望する全自治体が、校務系と学習系のデータを統合した教育データを可視化・利活用するためのツール(ダッシュボード等)を整備(2029) - データ利活用に取り組む自治体への伴走支援、教育データの分析・活用手法についての横展開(2025-2029) - 希望する全自治体が、校務系と学習系のデータを統合した教育データを可視化・利活用するためのツール(ダッシュボード等)を整備(2029) ## 主体・データの真正性確保 - 基盤整備に向けた調査研究(2025) - 技術実証(2026) - 技術実証を踏まえ、実証・実装支援(2027-2029) # スライド14 1 デジタル化による教職員の負担軽減 ## 【目指すべき方向性】 校務DXにより必要なすべての業務がデジタル完結し、システムの相互連携により入力はワンスオンリーとするとともに、生成AIを校務で積極的に活用することで、教職員の事務作業等の負担が大幅に軽減され、子供に向き合う環境が実現されている。 - 紙の資料がまだまだ多く残っており、校務支援システムもオンプレミス環境 - 紙資料も多く存在 - 先生はPC2台持ちで、データ連携も困難 - パブリッククラウドを前提とした次世代校務DX環境へ移行 - 高校入試事務手続きでは、調査書などの紙書類が手渡しや郵送でやりとり - 手入力や印刷・持ち込み等の負担が存在。紛失等のセキュリティのリスクも。 - 学校間・システム間でデジタル完結やデータ連携・入力のワンスオンリーが実現 ## 「やめることリスト」の実現 - 電話と書面による保護者と学校間のやり取りをやめる(デジタル化する) - 職員会議の紙での資料共有をやめる(デジタル化する) - 学校内外の日程管理を電話や書面で行わない(デジタル化する)  等 - 名簿情報の校務支援システムへのデータ連携 ## 加速すべき取り組み - 1-1 校務DXに向けた環境整備 - 次世代校務DX環境への移行 - 調査のオンライン化 - 高校入試事務のデジタル化 - 1-2 やめることリストの実現 - 汎用クラウドツールの活用 - 名簿情報のデータ連携の実現 # スライド15 1-1 校務DXに向けた環境整備 - 市区町村−学校 - @次世代校務DX環境の県域での共同調達 - 市区町村−都道府県 - A高校入試事務のデジタル完結 - 都道府県−国 - BEduSurveyの活用 ## @次世代校務DX環境への移行 - 学校の働き方改革や、教育活動の高度化、教育現場のレジリエンス確保の観点から、クラウド上での校務実施を前提とした次世代校務DXを推進する必要がある。 - 教職員の人事異動の際の負担軽減等の観点から次世代校務DXの効果を最大限に享受するため、都道府県教育委員会の主導の下で、関連システムを共同調達・共同利用しながら、都道府県域内一体となって取組を実施することが重要。 - 2029年度(R11年度)までに次世代校務DX環境へ移行 - 都道府県域での共同調達、帳票統一を進めながら、移行に向けて必要な支援を実施 - 適切なセキュリティ対策の下で次世代校務DXが進められるよう、令和7年度中に教育情報セキュリティポリシーが全自治体で作成されるよう働きかけ ## A高校入試事務のデジタル化 - 高校入試事務手続きにおいて、調査書をはじめとする各種書類について、紙での印刷・郵送や、複数回のデータ入力等の作業が行われている実態が明らかになった。 - 各都道府県の高校入試事務のデジタル化の取組状況について、令和6年度から詳細な調査を実施しており、引き続き状況を把握 - 高校入試に必要な受験前後の手続き全プロセスのデジタル完結に向けた実証を令和7年度に実施 - 令和6年度に作成したデジタル地方創生モデル仕様書について、実証成果を踏まえつつ更新を行い、各都道府県等が取り組む高校入試事務手続きのデジタル化を支援 ## B調査のオンライン化 - WEB調査システム「EduSurvey」を開発・運用し、文部科学省が実施する約150以上の調査をオンラインで実施している(R6年度時点)。 - 利用した職員の約6割が業務負担軽減を実感するなど、教職員や教育委員会事務局職員の負担軽減にも効果的である。 - EduSurveyについて、引き続き積極的に利用を促進 - 都道府県教育委員会等が自ら実施する調査への活用可能性について検討 # スライド16 12のやめることリスト(デジタルに変えること)〜教師が学習者に向き合う環境を実現するために〜 デジタル完結・ワンスオンリーの徹底により、「デジタルの良さ」を実感しながら、教職員の負担を大幅に軽減し、学習者に向き合う時間を確保することが取組の第一歩である。そのため、12のやめること(デジタルに変えること)のリストを作成した。各教育委員会・学校において、積極的なデジタル化を進めることが期待される。政府としても、「校務DXダッシュボード」等を活用しながら、校務DXの実現に向けた取組を進めていく。 - ? @ 電話等による児童生徒の欠席連絡等の受付 - ? A 紙での保護者への調査・アンケート - ? B 紙での各種調査票等の学校から保護者への配布・保護者から学校への回収 - ? C 紙での教職員への調査・アンケート - ? D 新入学児童生徒の名簿情報の校務支援システムへの不必要な手入力 - ? E 電話や書面による保護者との日程調整 - ? F 職員会議等資料の紙での共有 - ? G 紙での児童生徒への調査・アンケート - ? H 学校から保護者へ発信するお便り等の紙での配布 - ? I 教職員が作成した教材等の各自での保存 - ? J 学校徴収金の現金徴収 - ? K 紙での学校内外の行事日程や特別教室等に係る利用予約等の管理 ※なお、デジタル機器を有しない家庭への対応など、地域や学校の実情を踏まえ柔軟な対応を進めることが重要 # スライド17 12のやめることリスト(デジタルに変えること)の実現 「12のやめることリスト(デジタルに変えること)」の実現を含め、教職員の負担軽減には、汎用クラウドツールを徹底的に活用し、紙からデジタルへの転換を進めることが効果的です。さらに、システム間で標準規格を用いたデータ連携を実施することで、データ入力のワンスオンリーが実現し、名簿情報のシステムへの不必要な手入力が不要になる。 「12のやめることリスト(デジタルに変えること)」の取組含め、校務DXに向けた各自治体の取組状況は、デジタル庁が構築する「校務DXの取組に関するダッシュボード」において見える化し、進捗を踏まえ必要な取組を推進 ※システム間の名簿情報のデータ連携については、V−1参照 また、文部科学省「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン」や各教育委員会の方針に基づき、校務において教職員が生成AIを積極的に活用することで、長時間かかっていた作業の効率化や業務の高度化が可能となる。 ## 〈教職員の校務における生成AI活用の例〉 - 授業で取り扱う教材や確認テスト問題のたたき台を作成し、作成等にかかっていた時間を短縮 - 事前に作成した対話型の模擬授業プロンプトに課題を記入し、授業での発問に対して生徒同士がどのような対話を行うかのシミュレーションとして活用 - 各種お便り(学年・学級だより等)・通知文・案内文のたたき台の作成や添削に利用 - 学校行事のHP掲載文や報告記事の等のたたき台の作成等に活用し、業務負担の軽減に貢献 # スライド18 2 多様な学びのための学習環境の整備 ## 【目指すべき方向性】 それぞれに興味関心や特性、キャリアの方向性などが異なる学習者が、1人1台端末から多様な学習リソースへのアクセスが可能となっているとともに、1人1台端末を活用し、いつでも、どこからでも、誰とでも学習できる環境が整備されている。 ## 自分にとって最適な教材で学べる - GIGA端末 - 1人1台端末の活用率に自治体間・学校間格差 - ネットワーク - ネットワークの当面の推奨帯域を満たす学校は約2割 - 多様なツールの調達に当たって情報の非対称性が存在 - 学習マネジメントシステム(学習eポータル等) ## 従来の学習環境に加え、GIGA端末上で、多様なツールから自分に合った学びを実現 - CBT - 授業支援ツール - 生成AI - デジタル教科書 - AIドリル 動画教材 - プログラミング教材 - 外国語教材 - Web会議ツール ※記載のツールは一例 ## 加速すべき取り組み - 2-1 端末・ネットワーク環境等の整備 - GIGA第2期の調達支援、ネットワーク環境の整備 - 2-2 1人1台端末を活用した学びの推進 - 端末利活用の推進、MEXCBT、デジタル教科書の普及促進 - 2-3 多様な学習リソースの導入・活用 - 多様なデジタルツールの調達支援 - 発達の段階に応じた生成AIの学習での活用 # スライド19 2-1 端末・ネットワーク環境等の整備 ## 義務教育 ### 端末: 1人1台端末の着実な更新(義務教育段階) - GIGA第2期(令和6-10年)の1人1台端末を更新するための基金を都道府県に造成する経費を計上(令和5年補正) - 都道府県での共同調達を要件化し、GIGAスクール自治体ピッチ第2弾の開催(令和6年4月)等の調達支援を実施 - 引き続き、1人1台端末の着実な更新に向けて基金等を通じて教育委員会を支援 - 令和8年度中に、地方公共団体における効率的な執行・活用状況について検証 - 次期更新に向けて、今後の支援の在り方を検討し、方向性を示す ### ネットワーク: 必要なネットワーク速度の確保 - 令和6年4月時点で、ネットワークの推奨帯域を満たす学校は約2割 - ネットワークアセスメントの支援を実施 - 電気通信事業関連4団体に対し、文部科学大臣・総務大臣・デジタル大臣の連名で協力を要請(令和6年8月) - 学校ネットワーク自治体ピッチの開催(令和7年2月) - 令和7年度までに全校で必要なネットワーク速度を確保を目指し、 - 引き続き、ネットワークアセスメントの実施とその結果を踏まえた改善を促進 - 教育DXサービスマップの活用等により、調達に向けて教育委員会を支援 ## 高校 ### 端末・ICT機器: 1人1台端末の整備・DX(高校教育段階) - 1?1台端末環境が、令和6年度にほぼすべての都道府県で実現 - DXハイスクールとして、これまで約1200校を採択し、高校のDX環境整備を支援 - DXハイスクールピッチの開催(令和6年5月) - 高等学校の端末整備状況をモニタリングし、全ての自治体・高校における端末整備を促進 - 高校のDXを進め、デジタル人材育成を推進 # スライド20 2-2 1人1台端末を活用した学びの推進 一人一台のGIGA端末を積極的に活用するのみならず、この基盤を活かすことで以下のような学びを推進することが重要 - 全国学力・学習状況調査のCBT化により、負担を軽減しつつ多様な出題や解答(動画・音声の利用等)を可能に - デジタル教科書の活用により、動画・音声の活用やデジタル教材との連携が容易に - オンライン教育の活用により、不登校や病気療養中、小規模校等の児童や生徒のニーズに応じた学び・学びの保障を可能に ## 端末利活用の推進 - GIGA端末は全国の約9割強の学校で、週3回以上授業で活用 - 活用率の自治体間格差(約80%〜ほぼ100%)や授業での活用方法に学校間格差が存在 - StuDX Style等を通じ、GIGA端末の効果的な活用事例を横展開 - 令和8年度までに、以下の状態を目指す。 - 「調べる場面」で児童生徒が端末を週3回以上活用する学校 100% - 「発表・表現する場面」「教職員とやり取りする場面」「児童生徒同士でやり取りする場面」等で児童生徒が端末を週3回以上活用する学校 80% ## デジタル教科書 - 令和6年度以降、小・中学校全てに英語、一部に算数・数学のデジタル教科書を提供 - デジタル教科書の制度的位置付けについて検討を実施 - あわせて、アカウント管理等の負担軽減や、デジタル教材等との連携に向けた方策の検討を実施 ## オンライン教育 - 児童生徒のニーズ等に応じてオンライン教育を活用するため、前ロードマップ策定後、以下の制度改正を実施済 - 学校現場の創意工夫を後押しするため、遠隔教育特例校制度を見直し、文部科学大臣の指定を不要に - 不登校児童生徒について、教育支援センターにおいて、学校の授業にオンラインで参加している場合や民間のeラーニング教材を活用して学習を行っている場合等でも、学習状況を適切に把握し、学校に情報共有することなどにより、各学校の判断で、学習成果を成績に反映できることを法令上明確化 - 病気療養中等の児童生徒に対して、同時双方向型のリアルタイム授業配信を原則としつつ、事前録画動画のオンデマンド型授業配信を可能に - 引き続き周知を実施するなど、制度の効果的な活用を促進し、学びの保障を実現 ## MEXCBTの活用 - 現場の負担軽減・コスト削減や、多様な出題、解答データの蓄積等が可能になるといったCBTのメリットを踏まえ、MEXCBTの活用・必要な機能拡充等を更に推進 - 令和7年度以降の全国学力・学習状況調査のCBT化において活用 - 地方自治体が独自に行う学力調査、日々の学習等においても活用を促進 # スライド21 2-3 多様な学習ツールの導入・活用 生まれた環境や生まれ持った特性等に関わらず、全ての学習者が自分にあった学びを実現するためには、多様なデジタルツールの活用が重要である。学習者自身が、紙の教科書、デジタル教科書、インターネット(動画、ウェブサイト)、多様なデジタル教材、生成AI(※)、教師がクラウド上に共有した素材といった多様な学習ツールを活用できる環境を整えることで、各自にとって個別最適な教材や情報と出会える可能性を向上させることができると考えられる。 ※生成AIの活用については、年齢制限等に留意が必要 ## 多様なデジタル学習ツールの導入支援 - 多種多様な学習ツールについて、自治体間で得られる情報の格差が存在 - 効率的に質の高いサービスを調達できるようにするための支援が必要 - 学習者が多様な学習ツールにアクセスできるよう、学習eポータルをはじめとするハブ的機能を有するサービスが必要 - 教育DXサービスマップや「未来の教室」ポータルサイト、民間サービス等利活用促進事業ポータルサイトなど、多様な学習ツール等について、カタログサイトが作成されており、自治体・学校等における活用をより一層促進 - デジタル庁のデジタルマーケットプレイス(DMP)の活用を促進し、教育DXサービスマップによる情報収集から、実際の調達・導入までを支援 - 「授業支援システム」及び「AIドリル」のデジタル地方創生モデル仕様書を活用して、標準的なサービス実装を支援 ## 〈学習者の学習場面における生成AI活用の例〉 「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン」を策定し、生成AIのリスクを踏まえた学校現場における生成AIの適切な利活用を実現。 - 情報モラル教育の一環として、生成AIが生成する誤りを含む回答を教材として使用し、その性質や限界等に気付く(小学校段階) - 英会話の相手として活用したり、より自然な英語表現への改善や一人一人の興味関心に応じた単語リストや例文リストの作成に活用(中学校段階) - グループの考えをまとめる、アイデアを出す活動の途中段階で、一定の議論やまとめをした上で、足りない視点を見つけ議論を深める目的で活用(中学校段階) - プログラミングの授業において、児童生徒のアイディアを実現するためのプログラム制作に活用(高等学校段階) # スライド22 3 データによる学習者の自己理解・教師の見取りの充実 ## 【目指すべき方向性】 システム・ツールがセキュアな環境において標準規格によって相互に接続され、教育データが標準化されることで、ツールを越えた安全・安心なデータ利活用が可能となり、学習者の自己理解や教師による見取りを支援できる。 ## システム・ツール間のデータ連携 - データを連携するため標準規格の普及が必要(システム間のデータ移行にコスト発生) - データの意味をそろえるための標準化・その普及に課題(データクレンジングのコスト発生) - データ利活用のためのルールの徹底、自治体への支援が必要 ## ダッシュボード等による可視化 - 学力(成績・テスト結果等) - 非認知能力(質問紙の結果等) - 学習状況(スタディログ等) - 興味・関心 - キャリアの方向性 - 特性(検査・質問紙結果等) - 他の関連情報 - ダッシュボードからこども - 自己理解の充実 - ダッシュボードから教師 - 見取りの充実 - 教師から子供 - 学びを支援 ## 加速すべき取り組み - 3-1 教育デジタルサービスの相互接続 - 「相互運用標準モデル」 、標準規格の普及促進 - 3-2 教育データの標準化の推進 - 標準化の推進、実装・利活用促進 - 3-3 教育データの分析・活用の推進 - 個人情報保護の観点からの留意事項の整理・周知徹底 - ユースケース創出、自治体の伴走支援 # スライド23 3-1 教育デジタルサービスの相互接続 年次更新の際など、教職員が自治体内の各システムで名簿情報を個別に入力・更新すると大きな業務負担となることから、一例として以下のように自治体内のシステム間のデータ連携が重要となるとともに、システム間のデータ連携により識別子の受け渡しが可能となり、データ利活用も容易となる。システム間の疎結合な接続や、データ連携に向けては、開発に係る全体コストを減らすとともに、ベンダーロックインを防ぎ、自治体の選択の幅を狭めないために、標準規格を策定し、その実装・活用に向けた取組を関係省庁で進めていく。 ## 一例として【就学事務システム−校務支援システム間】 - 現状は紙やUSB等でデータが移行されており、事務負担やセキュリティリスクが存在 - システム間のcsv等による連携を促進するとともに、今後APIでのより簡易な連携に向けた検討を関係省庁・業界団体で推進 - 外字の取扱いについて方針を検討し、MJ+からJIS X 0213等への縮退の方法を含めたルールの整備を関係省庁で推進 - 就学事務システムについては、令和7年度までにガバメントクラウドへ着実に移行 ## 【校務支援システムー学習eポータル間】、【学習eポータルー学習ツール間】 - 多様なシステムの相互運用性確保に向け、「相互運用標準モデル」を策定し、その実装を支援 - OneRosterの実証/普及促進に取り組んでいるが、活用事例は僅少 - 更なる効率化に向け、APIで連携させるための検討が必要 - LTIの実証・普及促進に取り組んでおり、引き続き活用を促すことが必要 - システム間が疎結合で容易に接続でき、その接続コストを低減できるよう検討を進め、相互運用標準モデルを適宜更新 - 連携に必要な標準等を実装しているかどうかについて、見える化のファーストステップとして、令和7年度以降早期に標準等への適合性をセルフチェックする仕組みの運用開始を目指すとともに、第三者機関において標準等への適合性を確認する仕組みの実現に向け、在り方・実現方策、工程等を検討する。 - 標準規格を実装したシステムを活用したデータ連携のためのモデルスケジュールについて、周知を実施 - OneRoster REST APIの実装に向け、業界団体とも連携し、関係省庁で標準化に向け検討 ## 【学習ツールーLRS間】 - 学習ツール等とデータベースの連携に向けて、標準規格の活用に向けた検討が必要 - 学習ツールから提供が想定されているスタディログについては、P.24の通り標準化を検討しており、その状況を踏まえつつ、学習ツールとLRS(※)等のデータベースとの連携に向けた標準規格の在り方について検討が必要 ※LRS: Learning Record Storeの略。xAPIフォーマットで記述されたスタディ・ログの保管場所 これらのほか、自治体のニーズに合わせたサービスの選択や選択し直しが自由にできるよう、校務支援システム間及び学習eポータル間、それぞれについて、異なる事業者が提供する同種のシステム間でのデータポータビリティの確保に向け、業界団体等を巻き込んだ検討が必要。 # スライド24 3-2 教育データの標準化の推進 ## 教育データ標準の枠組み - データの標準化は、教育データの相互流通性の確保が目的であるため、取得できる可能性のあるあらゆるデータを対象に行うのではなく、全国の学校、児童生徒等の属性、学習内容等で共通化できるものを対象とする。 - 教育データを、@主体情報、A内容情報、B活動情報に区分する。 - @主体情報 … 児童生徒、教職員、学校等のそれぞれの属性等の基本情報を定義。 - A内容情報 … 学習内容等を定義。 - B活動情報 … 何を行ったのかを定義(狭義の学習行動のみだけではなく、関連する行動を含む) ## 主体情報 - 児童生徒、教職員、学校等のそれぞれの属性等の基本情報、転学・進学のユースケース別に必要なデータ項目について、教育データ標準として整理し、公開済 ## 内容情報 - 学習分野の共通事項である「学習指導要領コード」について、公開済 - 様々なコンテンツを学習指導要領に紐づけるAIや、紐づけられたコンテンツを検索するAPIのプロトタイプを実証・ソースコードを公開済 - しかし、学習指導要領コードの利活用は途上 - 次期学習指導要領を見据えた学習指導要領コードの在り方について検討を実施 - 学習指導要領コードの活用を促進するため、教科書の単元情報と学習指導要領コードと対照表をマシンリーダブルな形式で作成するための検討を実施 ## 活動情報 - 体力情報や健康診断情報、指導要録情報等について標準化を行っている。 - スタディログについてユースケースの創出に向けた調査研究の実証を実施 - スタディログの標準規格については、民間におけるxAPIの標準化に関する議論を注視しつつ、国としても取扱を検討。 - GIF(政府相互運用性フレームワーク)(※)や国際標準規格等の既存の標準を踏まえて策定した教育データ標準を、GIFの実装データモデルとして作成・公開を進めるなど、標準の活用・普及促進に向けた取組を推進 - ※GIF: Government Interoperability Frameworkの略称。データの利活用、連携がスムーズに行える社会を実現するための標準ガイドライン(実践ガイドブック)。このフレームワークを利用してデータを整備することで、拡張性が高く、連携が容易なデータを設計することが可能となる。 # スライド25 3-3 教育データの分析・活用の推進 教育データを適切に利活用することは学習者の自己理解や教師の見取りをはじめとする多く便益をもたらす可能性を有しており、多様な実践を支援し、その成果を横展開することが重要ですが、セキュリティや個人情報等に配慮し、安全・安心を確保することが大前提である。 ## 教育データの分析・活用の推進 - 文部科学省をはじめ関係省庁において先進的な自治体における実証や伴走支援を実施 - 今後、こうした先進事例を横展開するため、「今からはじめる?NEXT GIGA 教育データ利活用のステップ(β版)」の作成等の取組を実施するとともに、自治体間の情報共有・連携の仕組みの構築・活用促進 - 教育データ利活用を推進するため、 「今からはじめる?NEXT GIGA 教育データ利活用のステップ(β版)」の周知・改善や、自治体の伴走支援等の取組を推進 - 教育委員会におけるダッシュボードの構築を始めとした、教育データ利活用の取組について自治体間で共有する仕組みの構築や、「デジタル改革共創プラットフォーム」(※)の周知など、自治体間のノウハウや知見の共有を支援 - こうした取組を通じ、希望する全自治体が校務系と学習系のデータを統合した教育データ利活用に取り組める環境の実現を目指す ## 個人情報保護等のルールの徹底 - 「教育データの利活用に係る留意事項」を策定・改訂し、周知を実施 - 個人情報保護等の実態について教育委員会宛てに調査を実施するとともに、個人情報保護法等に基づき適切な取扱いがされるよう改めて、説明会等も実施しながら周知徹底 - 「教育データの利活用に係る留意事項」については、引き続き必要な改訂や周知徹底を行いつつ、教育委員会宛てに自己点検・実態把握調査を行うなど、早急に全教育委員会で個人情報の適正な取り扱いを徹底 - 教育情報セキュリティポリシーの策定について → 1-1 ※教育データの分析・活用に加え、校務DXや調達等、教育DXを進めるにあたって、自治体間のノウハウや知見を共有する場として「デジタル改革共創プラットフォーム」にて教育DX・GIGAスクール構想に関するチャンネルを開設。参加者は「lg.jp」または「go.jp」ドメインのメールアドレスをお持ちの地方公共団体または政府機関の職員で、教育委員会の方も多数参加。 # スライド26 4 生涯を通じて学びのデータを活かせる環境の整備 ## 【目指すべき方向性】 転校・進学・卒業等に関わらず、データが適切に管理され、連続性が担保されるとともに、データの真正性が保証されることで、学習者が自らの意思に応じて学修歴証明やデータの提供を行うことで、自己実現や必要な支援のために活用することができる。なお、こうした方向性を目指しつつ、就学前や高等教育機関においては、まずはデジタル化を徹底し、教員等の業務負担の軽減や学生・利用者の利便性向上につなげる。 本人起点によるデジタル学修歴証明等の活用により、@自律的な学習や学習者の状況に応じた学び直し、学習成果の証明の容易化(タテの連携)A公教育と家庭や塾、社会教育施設等の多様な機関・組織との連携の容易化(ヨコの連携)が可能な環境を整備し、生涯を通じて学びのデータを活かせる社会を実現する。 ### タテの連携 - 社会人 - 学び直しの支援 - 高等教育 - 学習成果の証明 - 高等学校 - 中学校 - データによる見とり・適切な支援 - 小学校 - 幼稚園 認定こども園 保育所等 ### ヨコの連携 - データによる自己理解・自己調整 - 学校外の学びの状況と即時的に連携 - 家庭、多様な機関・組織(例:塾、社会教育施設) ## 加速すべき取組 - 4-1 各機関における業務のデジタル化 - 業務のデジタル化、学修歴のデジタル化 - 4-2 組織・分野・教育段階を超えたデータ連携 - 自治体間のデータ連携、他分野とのデータ連携、識別子・認証基盤の検討 # スライド27 4-1 各機関における業務のデジタル化 就学前や高等教育機関においては、まず、多様な業務のデジタル化を徹底し、教職員等の業務負担の軽減を実現し、研究・教育・保育に向き合う時間を確保するとともに、手続きや学修歴証明等のデジタル化を通じ、学習者や保護者の利便性向上につなげる。 ## 取り組みの例 ### 就学前 - 業務のデジタル化・効率化 - 幼稚園・認定こども園・保育所等におけるICT環境整備 保護者手続きのデジタル化、効率化 - 保活ワンストップシステムの全国展開 ### 高等教育 (入学)大学入試手続きのデジタル完結による効率化・省力化 - 大学入学共通テストの出願手続のデジタル化 - 大学入試のCBT化 - 入学金・検定料のキャッシュレス化 高等教育分野における共通認証基盤の活用促進 - マイナンバーカードの学生証としての利用実証 - マイナンバーカードの活用を含めたデジタルキャンパスの推進 (卒業後)デジタル学修歴証明等の社会実装促進 - 学修歴証明等のデジタル化 - 学修歴の証明について国際間の連携(日EU) ### 学び直し 有益な情報の一元化 - 学び直しの講座や制度についてポータルサイト化 学習歴証明等のデジタル化 - オープンバッジを活用した学修歴証明等のデジタル化 - PDS(パーソナルデータストア)の実現に向けた実証 こうした取組をはじめ、各教育段階・各教育機関等におけるデジタル化を着実に推進 # スライド28 5-1 各機関における業務のデジタル化(高等教育段階) 高等教育段階のデジタル化は基本的に、各大学の取り組みに依るところが大きいが、大学入試や学修歴証明等のデジタル化については、全国で共通的に取り組むことで効果が最大化されるため、実態把握や国際連携の取組、国による標準化の検討等が必要である。 ## 大学入試手続きのデジタル完結による効率化・省力化 - 各大学で出願のオンライン化が進み、大学職員にとっては一定の入試事務の効率化が図られてきている。一方で、調査書は現状も紙で受け渡されていることが多く、デジタル化に向けた検討が必要 - 入試形態の多様化に伴って、大学側の負担だけでなく、高校側の教職員の負担増(対応機関の長期化、要項の確認、書類準備、封書)が懸念されており、ワンストップでのデジタル化が重要 - 大学入試における調査書等の電子化に向けた検討を推進 - 国立大学の入学金等のデジタル化を推進 - 令和8年度からの大学入学共通テストの出願の電子化を着実に実現 ## デジタル学修歴証明等の社会実装促進 - 学生証や卒業証明書の偽造による学割定期の不正購入、留学や就職活動での悪用等が懸念 - 諸外国の高等教育機関において学修歴証明のデジタル化が進んでおり、今後日本からの海外留学・就職の際に不利益が発生することが懸念 - 令和5年度時点で27校の大学がデジタル学修歴証明を採用しているが、デジタル学修歴証明書の信頼性、認知、理解の向上等が課題 - 学修歴証明書等のデジタル化を促進 - 日EUデジタルパートナーシップ協定を踏まえ、高等教育の学修歴証明に関する実証事業を実施 ## 高等教育分野における共通認証基盤の活用促進 - 大学間認証連携の「学認(NII事業)」が約3割の大学に普及しているが、プレゼンス向上のためのユースケース発掘が必要 - マイナンバーカードの学生証利用(学割等)に向けた検討・実証を開始 - マイナンバーカードを活用したユースケースの深堀 - 国立大学法人については、第4期の中期目標・中期計画に基づき、デジタル技術やマイナンバーカードの活用状況も確認しつつ、デジタルキャンパス推進を含めた各法人の業務の実績について、国立大学法人制度の中で評価し、運営費交付金の配分に反映 - 後述する初等中等教育分野の認証基盤整備の取組との連動を検討 # スライド29 5-2 組織・分野・教育段階を超えたデータ連携 生涯を通じて学びのデータを活かせる環境の整備に向け、転校・進学時であっても自治体・組織を超えてデータ連携を可能とし、データの連続性を担保することが重要である(タテの連携)。また、多面的に子供の状況を把握し、多様な主体が個別最適な支援を行うためには、分野を超えたデータ連携を進めることも必要である(ヨコの連携)。 ## タテの連携 ※転校・進学時の自治体・組織を越えたデータ連携 - 現状、転校・進学時に、法令に基づき学校間でやりとりがされる指導要録等の資料については、紙を郵送するなどの形で行われているのが一般的 - 学習の連続性を担保するためには、本人が希望する場合は、学習データの引継ぎを可能にすることが望ましい - 自治体・組織を越えたデータ連携のためには、データや主体の真正性の確保が不可欠であり、認証基盤の在り方についてデジタル庁の検討会において示された方針を踏まえ、GビズIDや公的個人認証という既存の認証基盤を教育分野で活用するための、調査研究や実証等を推進 - PDSを通じた生涯にわたるデータ利活用に向け、実証を進め、事業者の実装を促進 ## ヨコの連携 ※分野を越えたデータ連携 - 自らの意思・必要に応じてデータを利活用したり、真に支援が必要なこどもや家庭のニーズに応じたプッシュ型の支援を届けたりするために、教育機関と医療や福祉等の他分野とのデータ連携が必要 - 学校保健における書面前提の手続が保護者や養護教諭等の負担。また、接種記録やアレルギー等こどもの支援に必要な情報を効率的に共有困難 - 教育機関の保有しているデータと、医療や福祉系のデータ連携のため、引き続き実証を進めるとともに、その成果をガイドラインにまとめ、横展開を図る # スライド30 6 教育政策や実践にも資する教育データの研究目的の利用 ## 【目指すべき方向性】 EBPMといった教育政策の改善や日々の教育実践への示唆につながるような研究を支える基盤として、研究機関等が匿名化された教育データにアクセスできるよう環境整備を進める。 ### 自治体 - 自治体内での教育データ(行政データ等を含む)を利活用可能な状態としたで、個人を特定できないよう匿名化することで、学術研究目的で利用可能に ※システム間の相互連携について→3-1 ### 国 - 国が実施した調査や研究の結果、事例等をより広く活用できるような環境を整備 - 全国学力・学習状況調査の集計結果データの貸与等を実施 ### 大学・研究機関 教育振興基本計画に掲げる「客観的な根拠を重視した政策推進の基盤形成」や、「デジタル行財政取りまとめ2024」に示されたエビデンスに基づく効果的な対応の推進に対応する国・自治体の政策改善、学校の指導改善等に活用 ## 〈自治体の教育データを匿名加工した上で、研究者が利用している事例〉 - 兵庫県尼崎市では、市独自で実施している学力調査や、学校・保健所・福祉部局等から提供されたデータを、行政側で接続・匿名化処理をしたうえで、外部の研究者等を迎えた「尼崎市学びと育ち研究所」による分析を実施している。 # スライド31 【参考1】教育データ利活用ロードマップ(第1版)策定後の成果 ## 校務のデジタル化 - 2021-2022年 有識者会議における検討 - 2023年 実証・調査 - 2024年 帳票統一化に向けた検討 ## セキュリティの確保 - 2021年 ガイドラインの改訂 - 2022年 教育委員会への周知 - 2023年 ネットワーク統合を見据えたセキュリティに改訂 - 2024年 教育委員会に対しルール策定に向けて働きかけ ## 教職員端末 - 2023-2024年 GIGA第2期基金の補助要件に設定 ## 調査等のオンライン化 - 2021年 EduSurvey実証 - 2022年 実証利用 - 2023-2024年 本格運用 ## ガバメントクラウドの活用 - 2021-2024年 就学事務システムについて、標準仕様書を随時改定、移行支援 ## 学校のネットワーク環境 - 2021-2024年 ネットワークアセスメントの支援 - 2022年、2023年 実態把握 - 2024年 サービスカタログ等の調達支援 ## 児童生徒端末の将来 - 2021-2022年 GIGA第2期に向けた検討 - 2023-2024年 GIGA第2期基金として予算確保、広域での共同調達の推進 ## デジタル教科書 - 2021-2023年 実証等の実施、ガイドラインの周知、中央教育審議会における検討 - 2024年 全小中学校の対象者に英語のデジタル教科書を提供 ## 利活用ガイドライン等 - 2021年 ガイドラインの通知 - 2022-2024年 ガイドラインの周知とともに、効果的な実践事例の創出・横展開、伴走支援等を実施 ## 学習eポータル - 2021-2023年 標準モデルのアップデート、普及促進、標準規格の実装支援等によるコンテンツ連携の促進 - 2024年 費用負担の在り方等について有識者会議において検討 ## MEXCBT - 2021年 運用開始 - 2022年 全国学調のCBT化検証 - 2023年 全国学調英語「話すこと」・地方学調で活用 - 2024年 全国学調・地方学調の更なる活用に向けた対応 ## 学外デジタル教育プラットフォーム - 2021年 実証 - 2022年 参照文書作成 - 2023-2024年 参照文書を公開し、事業者における活用促進 ## STEAMライブラリー - 2021 2024年 STEAMライブラリーの充実や活用事例の普及、自走に向けた検討 - 統合型校務支援システムの導入率 73.5パーセント(令和3年3月)から91.4パーセント(令和6年3月)へ - 調査等のオンライン化について、令和6年度にEduSurveyで約150の業務調査を実施 - ICT機器をほぼ毎日活用する学校について、小学校は58.4パーセントから69.1パーセント、中学校は55.5パーセントから67.7パーセントへ(いずれも令和4年と令和6年の比較) - デジタル教科書の整備状況について、小学校は6.4パーセントから99.8パーセント、中学校は5.8パーセントから99.8パーセントへ(いずれも令和3年3月と令和6年3月の比較) - 教育DXサービスマップ掲載サービス数164(令和7年3月時点) # スライド32 【参考1】教育データ利活用ロードマップ(第1版)策定後の成果 ## 教育データの標準化 - 主体情報 - 2021年 標準2.0の公表 - 2022年 GIFに準拠 - 2023年 転学・進学に必要な情報整理 - 内容情報 - 2021-2024年 学習指導要領コードのメンテナンス等を実施 - 活動情報 - 2021年 検討 - 2022年 体力情報追加 - 2023年 転学・進学に必要な情報追加 ## 教育デジタルコンテンツ利活用環境の整備 - 2022-2023年 AIを活用したコンテンツへの学習指導要領コードの紐づけの実証 - 2024年(R6)成果物公表による活用促進 ## 学習eポータル【再掲】 - 2021-2023年 標準モデルのアップデート、普及促進、標準規格の実装支援等によるコンテンツ連携の促進 - 2024年 費用負担の在り方等について有識者会議において検討 ## 個人情報の保護 - 2022年 留意事項の公表 - 2023年 留意事項の改訂 - 2024年 周知、実態調査、留意事項改訂 ## 学習者の識別子 - 2021-2023年 検討 - 2024年 調査研究の実施 ## 教員の識別子 - 2022-2024年 教員免許管理、研修受講履歴記録に関するシステム構築・運用 ## PDS・情報銀行 - 2022-2023年 【情報銀行】調査・実証の実施 - 2023-2024年 【PDS】調査・実証の実施 ## こどもデータ連携 - 2022-2024年 自治体での実証、ガイドラインの作成・改定 ## 学びの成果の可視化 - 2023-2024年 生涯学習における学習履歴証明や大学等の学修歴証明書のデジタル化について調査研究の実施 ## 公教育データプラットフォーム - 2021-2022年 試行版の設計・開発 - 2023年 運用開始 - 2024年 コンテンツや機能拡充 - 文部科学省教育データ標準5.0を公表(R6) - 教育デジタルコンテンツ利活用環境の整備について、標準規格( OneRoster, LTI, xAPI )についてのべ43社に対して実装支援 - デジタル学修歴証明について、27校の大学がデジタル学修歴証明を採用(R5) - 公教育データプラットフォームデータカタログに126点、研究成果・事例検索システムに269点の資料が掲載(R6) # スライド33 【参考2】研究から得られる示唆 ## 海外で行われた一人一台端末政策(One Laptop per Child Program)に関するレビュー - ICT機器などのハードウェアの提供、インターネットへのアクセス等の整備がKPIとしておかれた政策の多くは児童・生徒の学力を向上させる効果が見られなかった。 - コンピューター支援学習(Computer Assisted Learning:CAL)が学力向上にもたらすプラスの効果は大きい。先進国におけるCALプログラムの効果検証は全てランダム化比較試験で行われており、31報ある。このうち21報が統計的に有意なプラスの効果を報告。 21件中16件は算数・数学の成果の改善。先進国よりも途上国のほうが学力を高める明確な効果が報告されている。CALが学力を向上させるメカニズムとしては、アダプティブ・ラーニングが個別最適化学習(Teaching at the Right Level: TaRLと呼ばれる)の実現に適しているためだと考えられている。 - 遠隔教育、オンライン授業、映像授業が学力にプラスの効果を与えることを報告した研究も多い。また、情報提供、リマインダー、ナッジなどが行動や非認知能力に与える効果を調べた研究もあり、これらにもポジティブな効果があることが確認されている。 - ICTを用いた教育についてのメタアナリシスを見ると、ICTを用いた教育に関する効果量(Hedge’s g)の最頻値は0.25となっている。探究学習や理科での効果が大きく、学齢が小さい児童に対して学力を高める効果が大きい。 ### 元にした文献: 実験または準実験的な手法を用いて行われた研究をまとめた総説やメタアナリシスを中心にまとめた。2020年以前の研究については、以下を参考にした(2020年以降はImpact Factorの高い国際学術雑誌を中心にレビュー)。 - Escueta, M., Nickow, A. J., Oreopoulos, P., & Quan, V. (2020). Upgrading education with technology: Insights from experimental research. Journal of Economic Literature,58(4), 897-996. - Muralidharan, K., Singh, A., & Ganimian, A. J. (2019). Disrupting education? Experimental evidence on technology-aided instruction in India. American Economic Review,109(4), 1426-60. - Sung, Y. T., Chang, K. E., & Liu, T. C. (2016). The effects of integrating mobile devices with teaching and learning on students’ learning performance: A meta-analysis andresearch synthesis. Computers & Education, 94, 252-275. - Bulman, G., & Fairlie, R. W. (2016). Technology and education: Computers, software, and the internet. In Handbook of the Economics of Education (Vol. 5, pp. 239-280). Elsevie - (注) - 介入の対象となる処置群と、ならない対照群をランダムに分けて比較する方法。信頼性の高い強いエビデンスであると考えられている。 - メタアナリシス:複数の研究を統合したもっとも信頼性の高いエビデンス。 # スライド34 【CALで求められる「教員の役割」】 - CALの1つであるカーネギーラーニング社によるCognitive Tutor Program(PCを使う授業を40%、授業を60%。授業計画や教材、教師のためのトレーニング、詳細なガイドラインなどがセットになった数学コース全体のカリキュラムを提供)のプログラムのインパクト評価は区々で、このプログラムを導入後、成績が下がったケースも報告されている(-0.19sd〜+0.233SD)。特に教員は、カリキュラムで要求されている内容をこなすことが出来ず、生徒が自分のペースで進めるモジュールでの作業を、授業で教えられている内容と結びつけることができないことが多かった。(Pane et al,2014)。 - Cognitive Tutor Programは1年目のコホートでは効果がゼロだったが、2年目に効果が見られたことを示す研究がある(Pane et al, 2014)。2年目のコホートにおける改善は、実施率の向上とは関係なく、プログラムのガイドラインで要求されている60%の授業時間でPCを使う時間を減らしたことと関連。つまり、教員の役割が重要と考えられる。 - Bianchi et al. (2022)は、インターネットにアクセスできるパソコン教室を新設し、修士号以上の学歴を持ち、授業経験が豊富な教員による授業動画を提供した。質の高い教育を受ける機会が限られている中国の農村部の学校を対象に、約111億元(約2400億円)の公費を投入して行われた政策。農村部の教員は、動画の視聴中に生徒の注意が散漫にならないように監督し、動画を見た後の生徒の質問に答え、デジタル教材を利用して、動画に関連する宿題を出し、それをチェックするなど、積極的に役割を果たした。動画を視聴した中学生は数学で0.18SD、国語で0.23SDの学力上昇。学歴も高くなり、大学を卒業する確率が5.3ポイントも上昇。中学校卒業後もインターネットやコンピュータを使用する頻度が高く、10年後には知識や技術を必要とされる高度な仕事に就き、卒業から10年後の賃金も22%近く上昇した。農村部で行われたこの政策は、都市部との所得格差の38%を縮小。動画、デジタル教材と現場の教員が相互に補完的な関係であったことが、この政策が成功した最も大きな要因であったと解釈されている。 - パキスタンでも、動画とデジタル教材の効果を検証するために2つの実験が行われた(Beg et al., 2022)。1つは、中国と同様に、通常の授業の中で教員が主導して動画とデジタル教材を用いることの効果を検証する実験。もう1つは、生徒に動画やデジタル教材が含まれるタブレットを渡し、休み時間や家庭での自習に利用することの効果を検証する実験。前者の実験では生徒の学力は0.30SD上昇したが、後者の実験では逆に0.43SD低下した。動画やデジタル教材は、適切なガイダンスなしに、ただ単に子どもたちに与えるだけでは害をなす可能性。 ## 元にした文献: - Pane, J. F., Griffin, B. A., McCaffrey, D. F., & Karam, R. (2014). Effectiveness of cognitive tutor algebra I at scale. Educational Evaluation and Policy Analysis, 36(2),127-144. - Bianchi, N., Lu, Y., & Song, H. (2022). The effect of computer-assisted learning on students’ long-term development. Journal of Development Economics, 158, 102919. - Beg, S., Halim, W., Lucas, A. M., & Saif, U. (2022). Engaging teachers with technology increased achievement, bypassing teachers did not. American EconomicJournal: Economic Policy, 14(2), 61-90.